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PJ: 田中 大也

児童ポルノだけではなくアダルトメールそのものを規制する「わいせつメール配信」規制
2011年02月24日 06:31 JST

【PJニュース 2011年2月24日】コンピューター「ウィルス」の作成、取得、保管に罰則が生じ、保全要請によって、個人のコンピューターでの通信記録等々が監視下に置かれると見られている一連の「コンピューター監視法案」だが、コンピューターウィルスとは全く関係のないものの配信、送信まで、罰則付きの規制対象となっている。

■「わいせつ」画像付きメール送信は規制対象 「迷惑メール」でなくてもアウトの可能性も
その対象は、「わいせつ」な画像が添付された電子メールなどである。現在でも、問題性のある画像が添付されたメール等に関しては、児童ポルノ禁止法などの法律を適用して、取り締まりに当たっている状況にあるが、児童ポルノに限らず、「わいせつ」な、つまり、普通の成人向け画像の送信を規制しようとしているのだ。既に児童ポルノの送信が摘発対象になっていることからも、十八歳以上の男女が被写体となった、性的な画像等々を集中的に取り締まるための法律だということが分かる。

報道では、「わいせつな迷惑メールを取り締まる」ための規定だと説明されているが、以前(第159回国会)に提出された「犯罪の国際化及び組織化並びに情報処理の高度化に対処するための刑法等の一部を改正する法律(案)」の中に存在するメール規制の条文には、「電気通信の送信によりわいせつな電磁的記録その他の記録を頒布した者」とあり、メールの送信等によって、相手に迷惑を与えてしまったかどうかに関わらず取り締まりの対象にすることが可能な規定となっていた。「迷惑メール」ではない、許諾後送信されるメールマガジンのような形態でも、摘発の対象になってしまい得る条文になっていたのだ。

まだ正式に国会に提出されたわけではなく、どのような条文になってくるのかは不明な状況だが、単なる迷惑メール規制にとどまらない、より広範な規制案になってくる危険性は大いにあると言えるだろう。

■成人向け漫画やアニメコンテンツの送信も「規制対象」に!?
このメール規制は、既に存在する「わいせつ物」規制の条文を改め、電子メール送信にまで、規制対象を広げる形での法改正として、前回は提示されたが、もし今回もそうなれば、実写だけでなく、「わいせつ」な漫画やアニメ等々の「二次元メディア」のやり取りも、規制の対象となる。無修正、あるいは「消し」が甘いと当局に「判断」されれば、法的処罰の対象になるというわけだ。

成人向け漫画が「わいせつ物」規制に抵触したと判断され、摘発された(通称「松文館事件」)事例も過去に存在しているだけに、漫画やアニメといったジャンルの「わいせつ」な画像などの送信も、法に抵触すると考えるのが妥当な状況があるのだ。いわゆる都条例問題など、近年のアニメや漫画、ゲーム等に対するバッシング、規制の動きは強力なものがあるが、この「わいせつ」メール規制に関しても、公開される条文の内容によっては、「対岸の火事」で済まない危険性が高いと考えられるのだ。

■見出すことのできない規制の妥当性
今回の規制案は、「わいせつ」な画像などの送信を規制しようとしている、その姿勢そのものに問題があると言える。「わいせつ」な画像には、それ単体での実害性はない。

十八歳未満の男女の画像や映像が児童ポルノとして規制対象になるのも、そうしたものの送信が、「児童の人権を侵害する」とされているからであって、同じような規制を、十八歳以上の男女の画像や映像、あるいはアニメや漫画に対して設ける妥当性は見出すことはできない。

仮に、迷惑なメールを規制するのだとすれば、無許諾で広告などを送信することを規制せねばならないはずで、「わいせつ」な画像が添付されているかどうかを判断材料にするのは、筋が通っている話とは言えないだろう。

古くから、「わいせつ物」関連罪は、被害者のいない犯罪の代表格であり、表現の自由を規制するものとして多くの批判を受けてきた。とりわけ、海外の「無修正」画像や映像を比較的容易に見ることができる現在においては、妥当性や必要性は感じられなくなってきている。

メールを介して「無修正」画像のやり取りがなされたとしても、緊急的に対処すべき事態が発生するなどということはない。既に児童ポルノ禁止法での取り締まりがなされているところに、「わいせつ物」の定義を拡大し、メールのやり取りの規制対象を拡大する今回の規制案に関しては、果たして一体どんな意味があるのか、妥当性があるのか、非常に疑問が残るところである。筆者としては、問題性の大きさからしても、全く意味のない規制案ではないのかと思わざるを得ない。【了】

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PJ 記者