PJ: 田中 大也
児童ポルノ禁止法改正案民主党案公開、国会提出(1)表現の自由や冤罪に最大限配慮した条文構成
2011年08月10日 15:57 JST
民主党の策定した児童ポルノ禁止法改正案がこのほど、国会に提出された。今後、各党との修正協議や審議を経て、正式な法律として策定されていくものと見られる。ただ、今回民主党が提示した案は、自民党などが推している改正案とはかなりの違いが見られるもので、「表現の自由」や「冤罪」などの懸案事項に配慮した、今までの改正案とはかなりおもむきの違ったものになっている。今回から数回にわたって、民主党案の特徴的な変更点、懸念点、そして今後の法案審議のポイントについて見ていこうと思う。
● 表現の自由に最大限配慮し、児童ポルノには、漫画やアニメ、ゲーム等が含まれないとする条文が盛り込まれる
今回の改正案では「第三条 適用上の注意」として、「この法律の適用に当たっては、学術研究、文化芸術活動、報道等に関する国民の権利及び自由を不当に侵害しないこと」や、「本来の、児童に対する性的搾取や虐待から児童を保護する目的を逸脱しないこと」などの注意点が盛り込まれ、さらに、この法律のいかなる規定も、架空のものを対象にした漫画やアニメ、ゲーム等を対象にすると解釈してはならないとする規定が盛り込まれた。
これは、事実上の、いわゆる「二次元系創作物」は、「児童ポルノ」の枠内に入れて規制しないという宣言とも言える条文であり、単純所持や取得罪規制の「後」に、例えば、「準児童ポルノ」等といった枠組みの中で、漫画やアニメ等が規制される懸念に、完全に釘を刺してみせた形と言えるものだ。
「将来に対する懸念」が払しょくされたことに関しての、法案を問題視している側からの評価は極めて高く、もし仮にこのままの形で法改正がなされれば、実在のモデルがいるかどうかというもっとも重要な部分が軽視され、全くの架空であっても、「『ロリ的』」だから児童ポルノの枠に入れて規制してしまいましょう」といった危機は回避できることになる。
● 実在児童に対する保護等の役割を強化
第十七条には、児童ポルノの相手方等になったことによって、心身に有害な影響を受けた児童に対してのケアを盛り込んでもいる。これは、もともと児童ポルノ禁止法が、児童の保護を名目にしながら、現実的には画像や映像にかかわった者を逮捕するのみで、いわば「わいせつ物」規制法のような運用がなされていたことに対するフォローとも言えるものだ。この変更によって、児童ポルノ禁止法の枠内での児童保護が、より手厚く行われることも期待できるようになった。
● 単純所持、無償取得罪は回避、「反復して購入」に取得処罰は限定、「事故」に対しての配慮もあり
「児童ポルノ」に関わる、どのような行為にまで法的処罰範囲に加えるかという部分については、民主党案では、単純所持処罰化や無償取得への罰則化は行われず、「反復して購入」等、繰り返しての有償取得をした場合への罰則のみが、現行法の範囲から付け足される形となった。
これによって、何十年も前に合法的に手に入れたはずの出版物を所持していただけで逮捕される(単純所持)、ネットで、被写体が何歳かも分からないような画像や映像を見ていただけで逮捕される(無償取得)といった深刻な危険は回避された形になった。
さらに、購入罪についても「反復して購入」に限定しているため、例えば、合法な(成人向け)AVだと思って購入したはずが、実は被写体が十八歳未満で、図らずも「児童ポルノ」を買ってしまったというような「事故」に対しても配慮がなされていると言える。
制作側のミスで年齢確認が不十分だった、あるいは、被写体の「児童」自身が、年齢を偽ってAV等に出演してしまうという「事故」の可能性は、非常に少ないながら常に存在しているものと言えるのだが、今回の民主党案の規定によって、リスクはかなり軽減されたと言えるだろう。
また、「児童の年齢を知らなかったとしても、それを理由に罪を免れない」としている、「免責不可能」規定には、第七条第一項に記されている「反復購入罪」は含まれていなかった。となれば、「事故」で購入してしまった場合に処罰される危険性はさらに薄くなると考えられるわけで、少なくとも、合法に発売されている(成人向けの)書籍やAVを購入している限り、「児童ポルノ購入罪」に問われるリスクは、ほとんど解消されると言えるかも知れない。安心安全という意味では、非常に優れた条文構成になっていると考えられる。【つづく】
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