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将来原発比率 福島で意見聴取
8月1日 19時13分

将来原発比率 福島で意見聴取
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東京電力福島第一原発の事故を受けて政府が進めるエネルギー政策の見直しに向けて、原発に依存する割合を将来どうすべきか市民から意見を聞く聴取会が、原発事故で大きな被害を受けた福島県で開かれました。

政府は、原発事故を受けて将来のエネルギー政策の見直しを進めていて、18年後の2030年時点の国内の発電量に占める原発の比率を、「ゼロ」か、「15%」、「20%から25%」とする3つの選択肢をまとめ、政策決定に幅広い意見を取り入れようと全国11か所で市民の意見を聞く聴取会を開いています。
9か所目となる1日は、原発事故で大きな被害を受けた福島県で開かれ、「原発事故の影響が続いており県民の意見を幅広く聞く必要がある」として、発言する人は県外に避難する人を含めた福島県民に限定し、人数もこれまでの会場に比べておよそ20人多い、30人が意見を述べました。
このうち、福島第二原発が立地し、警戒区域に指定されている富岡町から避難している男性は「あすにでも帰れるだろうと思い避難したが、いまだにいつ帰れるか分からないまま生活している。事故が起こったら原状を回復するのは不可能で、まず原発をゼロにしてから議論を始めるべきだ」と訴えました。
一方で、福島市の男性は「原発がゼロだとエネルギーが確保できないので、条件付きで認めるべきではないか」と述べました。
1日は、発言した30人のうち28人が、原発の比率を「ゼロ」にするよう求めたり、全国の原発をすぐに廃炉するよう発言したりしていました。
政府によりますと、これまで行われた8回の聴取会では、発言を希望した1253人のうち、▽「ゼロ」が70%を占めたほか(874人)、▽「15%」の比率が11%(139人)、▽「20%~25%」の比率が17%(210人)でした。
政府は、今月4日にも高松と福岡で聴取会を開くほか、インターネットなどを通じて広く意見を聞いたうえで、新たなエネルギー政策を決定する方針を示しています。

生産者として、母親としての思い

聴取会で発言した福島県須賀川市の有馬克子さん(53)は、食の生産者と母親という2つの立場から原発に対する思いを述べました。
有馬さんは14年前から、自分の畑でとれた野菜や米、それに野草を使った創作料理を提供するレストランを営んでいました。
有馬さんの店舗は原発からは60キロ以上離れ、避難区域には指定されず、農作物の出荷制限もかかっていませんが、原発事故の影響で、一時、営業を取りやめていました。
有馬さんは、去年7月に店を再開しましたが、「福島県産のすべての食品には不安がある」という風評被害で客は減少し、売り上げも原発事故前の半分程度にまで落ち込んでいます。
有馬さんは、地元の安全な食品を提供することを売り物にしてきたため、自主的に野菜などの放射性物質の値を測定し安全を確認してから提供しています。
しかし、測定された値が国が示している基準値を大きく下回っていても、不安を口にする客も少なくないため、今も野草など一部の食材は提供できずにいます。
さらに有馬さんは、放射性物質が子どもの健康に与える影響も心配しています。
5人の子どもの母親でもある有馬さんは、自分たちが生活する須賀川市は健康には問題ないのない地域だと国から言われても、子どもたちに本当に影響がないのか不安だといいます。
このため、ことしの夏は、5人のうちいちばん下の中学1年生の娘を、夏休みの間、知人を頼って北海道で過ごさせています。
聴取会で、有馬さんは「原発はいつかどこかで大きな事故を起こすと心配していましたが、まさかこんなに近くで起こってしまうとは思いもしませんでした」と話しました。
そして「ひとりの母親として、ひとりの人間として、原発そのものを即刻やめるように心から求めます」と述べ、原発からの脱却を強く訴えました。
聴取会のあと、有馬さんは「きょうの議論をもとに、今後、政府が原発からの脱却に向けて動いていくのか、その方向性を見届けなければならない。政府には、もっと被災地の声を聞く場を設けてほしい」と話していました。

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