ライフ【正論】京都大学大学院教授・藤井聡 原発が止まる「地獄」こそ直視を+(3/3ページ)(2012.8.2 03:36

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【正論】
京都大学大学院教授・藤井聡 原発が止まる「地獄」こそ直視を

2012.8.2 03:36 (3/3ページ)正論

 第二に、電力料金の値上げは電力会社への激しい批判を巻き起こすだろう。その結果、会社側は様々な改革を強いられ、揚げ句に電力供給システムが劣化し、「世界一の停電低頻度」は維持できず、停電で医療機器が動かなくなり、信号機停止で交通事故が増え、それらを通して命を落とす国民の増加に繋がりかねないだろう。

 第三に、石油・ガス輸入代金がさらに3兆円もかさめば、最低で年間3兆円、乗数効果も勘案すれば、その2~3倍分も国内総生産(GDP)が縮む。日本の燃料需要増大に伴い原油などの価格が高騰すれば年間10兆円を超す経済的な損害を与え、その結果、多くの国民の自殺にすら直結している不況を著しく悪化させるだろう。

 ≪幸福と安寧へ冷静な意見を≫

 いかがだろうか--。以上が、筆者がリアルに想像する「原発が止まり続けたときの地獄」である。つまり、原発未稼働による不況の深刻化と、散発的に発生する停電を通して、遺憾ながらも、結果的に多くの国民が死に追いやられかねないのである。それは、長期で累計すれば、数万、最悪の場合には数十万という水準に達するのではないか、と筆者は本気で案じている。

 そうした事態を防ぐことは可能かもしれない。しかし、防げないという悪夢が現実化する確率は、科学的データに基づいて推計される大飯原発事故の発生確率に比べれば、はるかに巨大だといわざるを得ないのではないだろうか。

 いずれにしても、我々は既に、そして誠に遺憾なことながら、原発をめぐる「究極の選択」からは逃れられない運命にあるのだ。

 だからこそ、筆者は、一人でも多くの国民が、その現実を真摯(しんし)に受け止めて、少しでも多くの国民が幸福と安寧のうちに暮らすことができるような未来を導く、「冷静な意見」を持たれんことを、心から祈念したいのである。(ふじい さとし)

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