<引用開始>
本訴訟の弁護団の団長を務める河合弘之弁護士は、事故の背景には東京電力の「集団無責任体制という体質がある」と、史上最高額となる株主代表訴訟に踏み切った経緯を説明。河合氏ら弁護団が今回提出した訴状の中には、昨年の3月11日までに、原発の地震・津波リスクについてどれだけの警告が発せられていたのか、またどのような提案が株主総会で行われていたのかなどが克明に記されている。東電の経営陣がそのうちの一つにでも真摯に対応をしていれば、仮に事故そのものは防げなかったとしても、ここまで被害が大きくなることはなかった。だから東電経営陣には明らかに責任があるのだと主張している。
<中略>
東電経営陣が負うべき責任とは
斎藤: 続いて、電力会社の責任について、訴状から大きなものを抜き出しました。「1・抜本的な義務違反」「2・津波対策の不備」「3・シビアアクシデント対策の不備」「4・外部電源確保の不備」です。
<引用終了>
http://seiji.yahoo.co.jp/column/article/detail/20120731-03-0901.html
国会や政府の最終報告書が出る前の提訴ですから、事故の原因に斬り込んだものと思っていましたが、残念ながらこの訴状の内容では原告は負け、東電は高笑いするだけでしょう。紀藤正樹弁護士が関わられているだけに残念でなりません。
決定的に「負ける」と言えるのは以下の切り口への言及がないことです。
「東電だけですか。北海道から九州までの電力会社の原発は原告が言う「1・抜本的な義務違反」「2・津波対策の不備」「3・シビアアクシデント対策の不備」「4・外部電源確保の不備」は無かったのですか」
東京ディズニーランドがオープンしてしばらくして、「空飛ぶダンボ」に小さなスイングドアが取り付けられました。その理由は「他のレジャー施設の回転遊具に落下防止用のスイングドアがついている場合、東京ディズニーランドのアトラクションについていないと業務上の瑕疵(法律上の欠陥)と認められるからです。
反対に考えれば、乱暴な言い方ですが「他がやっていないこと」であれば、やる必要もないということです。
次に「護送船団方式」を理解してください。
ウィキペディアより
<引用開始>
軍事戦術として用いられた「護送船団」が船団の中で最も速度の遅い船に速度を合わせて、全体が統制を確保しつつ進んでいくことになぞらえて、日本の特定の業界において経営体力・競争力に最も欠ける事業者(企業)が落伍することなく存続していけるよう、行政官庁がその許認可権限などを駆使して業界全体をコントロールしていくこと。
<中略>
その他金融業界以外の分野における「護送船団方式」
日本では金融業界に限らず、様々な業界で行政官庁の強力な行政指導が存在したことから、「国が実質的に地方経済を経営していた」と見る論者もいる。この行政指導による「護送船団方式」が、しばしば外資やエコノミストによってなされる「日本は、世界で最も(もしくは、世界で唯一)成功した社会主義国家だ」等という揶揄を生む大きな理由の1つとなっている。
<引用終了>
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%AD%B7%E9%80%81%E8%88%B9%E5%9B%A3%E6%96%B9%E5%BC%8F
全国の電力会社は、見事にこの「護送船団方式」に取り込まれています。1999年9月の東海村の臨界事故直後につくられた「原子力災害対策特別措置法(原災法)」で官僚は焼け太り、すべての原子力発電所に「専門官」を常駐させてきたのです。
私は、2007年5月の福島第二原子力発電所での講演で「東京ディズニーランドが成功したのは護送船団に入らなかったため」と申し上げました。当時の高橋明男所長は、唸っていました。
四国電力伊方原子力発電所の幹部は「国の役人が箸の上げ下ろしまでチェックしている」と話されました。
何を意味するのでしょう。「箸の上げ下ろし」はチェックできても、最も重要な安全管理には全く役立ってこなかったということを意味しているのです。
もうお分かりでしょう。東京電力が言いたくても言えない一言が。それは「国の行政指導に基づいてきた、悪いのは国だ」です
東京電力以外の電力会社の原子力発電所が「1・抜本的な義務違反」「2・津波対策の不備」「3・シビアアクシデント対策の不備」「4・外部電源確保の不備」が無く、津波による全電力喪失に対する安全対策が万全なら東京電力を責めることも可能です。反対に全電力会社が東京電力同様に「国の行政指導に忠実」つまり護送船団に取り込まれているとするなら、矛先は変わってきます。そうです。最大の「悪者」は国ということになります。
「護送船団方式」とは、一番弱いものを基準に行政が進められることです。最も旧型で最も危険性の高い原子力発電所の原子炉GEのマーク1に合わせて全国の原子力発電所の安全基準が決められたと考えると、東京電力だけが責められるというのは筋違いであると私は考えます。
全国の原子力発電所で真面目に働く多くの人々のためにも、なんとしてでもこの「声」を届けたいと思います。