東日本大震災:福島第1原発事故 事故の過失、立件困難 東電幹部ら告発 検察、法律の壁多く
毎日新聞 2012年08月03日 東京朝刊
東京電力福島第1原発事故を巡り、住民らが提出していた複数の告訴・告発を検察当局が1日に正式受理したことで、東電幹部や政府関係者の刑事責任の有無を問う捜査が本格的に始まる。東京、福島両地検が中心になって業務上過失致死傷罪などの成立を検討するとみられるが、法律上の壁がいくつもあり、立件は極めて困難との見方が大勢だ。
「捜査は尽くすが、現状では起訴できない可能性が高い」。告訴や告発を受理する一方、検察幹部は厳しい見通しを示唆した。ハードルになるのは事故原因の特定だ。業務上過失致死傷罪を問うには「結果が予想でき、かつ不注意により結果を回避しなかった過失」を立証する必要があり、事故に至ったメカニズムの解明は不可欠。検察当局が告訴・告発の受理を保留し、政府や国会など四つの事故調査委員会の結論を待ったのは、そのためでもあった。
だが、4事故調は事故原因について異なる分析結果を導き出し、検察内部からは「もっと絞り込まれると思っていた」と困惑する声が漏れた。
告訴・告発状を出した弁護士の一人は「真相や責任が明らかになるよう期待する」というが、別の検察幹部は「大前提となる被ばくと健康被害の疫学的評価さえ定まっていない。強引な起訴は無罪になるだけだ」と話す。