内側の静水域で養殖漁業を行う
どうして、このSCF風力発電が抜群の効率を確保できるのか?
まず建設コスト。1kW当たりで試算する。現在世界で推進されている洋上タイプは着底式。遠浅の海上でないと建設不能だ。日本でも北電、東電、東大などが取り組んでいる。構造の補強材は鋼製。陸にケーブル送電を行い建設費は陸上の2倍、約40万円かかる(kW単価)。この着底方式は、地震やメンテナンス、さらに漁業補償などの難点も抱えている。
さて、太田教授らの浮上式SCF風力発電基地の建設費は、なんと10万円という安さ。「素材SCFが軽量、頑丈、耐久と3メリットあるからです。さらに六角形の中抜き構造なので、波浪、台風にも安定性があります」と教授の声も明るい。
「さらに…」と驚くべきアイデアも教えてくれた。「径600mくらいの六角構造の内側は静水域。ここを養殖池として使う。コンクリート浮体の底に丸窓を開けて、そこから発光ダイオードで光を当て、餌になる有用プランクトンを増殖させるのです」。
風力発電装置が漁業養殖装置を兼用する。一方は漁業補償。こちらは漁業振興。ダブルメリットの面からも九大プロジェクトに軍配が上がる。
ここでは九大農学部(水産業)の研究者が実力を発揮した。発光ダイオードの特定の波長は赤潮プランクトンなど有害微生物の発生は抑制する、という細かい芸当まで行う。「30人近い、各分野の先生たちが集まってくれたおかげです」と太田教授。
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