日本の地熱発電のポテンシャルは原発119基分に相当する?

[2012年07月31日]


現在の日本の地熱発電は、エネルギーのポテンシャルの約1%しか生かせていないという

福島第一原発の事故以降、にわかに脚光を浴びる再生可能エネルギー(再エネ)。連日のようにメガソーラーや風力発電など再エネを利用した発電計画が報じられ、7月1日にスタートした固定価格買取制度も、普及への弾みをつけるものとして期待されている。

再エネにはさまざまなものがあるが、弘前大学・北日本新エネルギー研究所の村岡洋文教授は、こう断言する。

「太陽光、風力、バイオマス……再生可能エネルギーの中で、いま日本が最も開発を急ぐべきなのは、間違いなく地熱発電です」

しかし、地熱発電という言葉自体、国民にはなじみが薄い代物。そもそもどのような仕組みで発電するものか、村岡教授に解説してもらう。

「地熱発電にもいくつか方式がありますが、一般的なのは、地下2~3kmにある熱水たまりに向けて地上から井戸を通し、その井戸から出てくる蒸気の力でタービンを回し発電するものです。火力発電は石油や石炭を燃やして蒸気を起こしますが、その代わりに天然の蒸気を使うと考えればわかりやすい」

初めて営業を開始した岩手県の松川地熱発電所(1966年~)をはじめ、日本では現在、13ヵ所の事業用地熱発電所が稼働中だ。

固定価格買取制度で1kWh当たり27.3~42円(1kWh当たり42円の太陽光とほぼ同額)で電力会社が買い取ることが定められたのを受け、新規事業も立ち上がっている。出光興産など9社は、2020年代初めの開業を目指し福島県の磐梯朝日国立公園内に国内最大の地熱発電所を建設すると発表した。福島県の土湯温泉では、地元住民主導の地熱発電が早ければ来年秋に稼働予定だ。

順調に普及に向けて動き出したかに見える地熱発電だが、村岡教授によると、「現在の地熱発電の総量は54万kW。これは日本の地熱エネルギーのポテンシャルからすれば、約1%しか生かせていない」という。

「実は日本は、アメリカ、インドネシアに次ぐ世界第3位の地熱大国なんです。地熱資源は国によって大きな違いがありますが、100を超える活火山を抱える日本は、発電に利用する蒸気のもととなる熱水が地下に多く存在する。そのポテンシャルを電力に換算すると4240万kW。これは原発42基分に相当するんです」(村岡教授)

さらに、この発電量は飛躍的に伸びる可能性があるという。

「現在、再生可能エネルギーとしての地熱の可能性に気づいた世界各国はEGSという新技術の開発にしのぎを削っているのですが、この技術が実用化されれば、日本の地熱発電ポテンシャルは1億1940万kW。これは原発119基分にも上るのです」

それが本当なら、現在、日本にある原発54基の2倍以上の発電量が、この地熱発電で稼げるわけだ。

「EGSというのは、従来の地熱開発より深い地下5kmくらいまで掘り進み、岩盤の間に隙間を空けて水を注入する。そして人工的に熱水たまりを作り、そこから立ち上る蒸気で発電しようというものです。深く掘れば掘るほど地中の温度は上昇する。この方法なら、日本ほど地下に豊富な熱水がない国でも地熱発電が可能になります。この技術は今後5~10年で実用化されるとみられています」(村岡教授)

EGSが実用化されれば、ポスト原発を担う再エネを模索する日本において、地熱発電の存在感はますます高まるに違いない。

(取材・文/戎小次郎)

■週刊プレイボーイ33号「日本がいま『地熱発電』を進めるべき5つの理由」より

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