全電源喪失:「考慮不要」作文、安全委が電力側に指示
毎日新聞 2012年06月04日 21時33分(最終更新 06月05日 03時22分)
内閣府原子力安全委員会の作業部会が92年、福島第1原発事故の要因になった長時間の全交流電源喪失について、国の安全設計審査指針の改定作業で考慮しなくてもよい理由を電力会社側に作文するよう指示し、報告書に反映させていたことが分かった。その結果、国の指針改定が見送られた。安全委が4日、国会の事故調査委員会から請求されて提出した内部文書を公表した。
作業部会は、専門委員と電力会社員ら計9人で構成。米国で外部電源と非常用電源が失われる全交流電源喪失が起きたのを受け、91〜93年に「長時間の喪失は考慮しなくてよい」としていた当時の国の指針の改定が必要かを検討した。
安全委によると、電力会社側は当時、指針改定について「電力会社の今後の取り組みに期待するという結論にするのが妥当」「リスクは相当低く、指針への反映は行き過ぎ」などと反発。これを受け、作業部会の事務局だった科学技術庁原子力安全調査室は、電力会社側に「中長時間の全電源喪失を考えなくてよい理由を作文してください」と文書で指示した。東電から「適切な操作がされれば十分な安全が確保される」などと回答があり、報告書にほぼそのまま反映させたという。