漢方外来 火(AM), 木(AM) 内科外来において
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西元慶治
みなさまは漢方と聞くと、どういう第一印象を持たれるでしょうか。
「副作用が少ない」「結構、効くらしい」「ワラにもすがる気持ちで」など、肯定的な感想や期待を持ってお見えになる方も多い反面、「怪しげである」「古臭い」「効いているのかどうか分らない」などの懐疑的な感想をお持ちの方も少なくありません。(ちなみに、「ワラにもすがる」と言われると、「じゃあ、わたしはワラ程度の頼りないものに過ぎないのでしょうか」という理屈になり、敬語法としてはおかしいことになりはすまいかと思うことがありますが…。)わたし自身がかつては後者の立場でした。ところが今となってはすっかり漢方のとりこになりその積極的な唱導者となろうとしています。言わば、キリスト教でいえば改心したパウロということでしょうか。残念ながら現在のところ、漢方をきちんとしたカリキュラムに基づいて教育している医科大学まだごく少数です。しかしその一方でなんらかの漢方薬を処方したことのある医師は全体の8割にものぼっています。ただ、漢方薬がその本来の効能を発揮するには、漢方医学に独特の診断体系を知ったうえで処方した方が効果的であると考えられます。というのは漢方薬の処方は、個々人の体質や病状の勢いといったものを勘案して、いわば服を仕立てるかのように見つくろうのが常道であって、西洋医学上の診断名によって投薬や治療方法が決まってしまう、既製服を買うようなやり方とは若干の違いがあるからです。ただ、後者のようなやり方でもそれなりに良く効く漢方薬もあり、たとえば「こむらがえり」には芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう)がだれにでもよく効きますし、過敏性腸症候群には桂枝加芍薬湯(けいしかしゃくやくとう)、片頭痛には桂枝人参湯(けいしにんじんとう)、咳には麦門冬湯(ばくもんどうとう)といった具合です。
しかし、多くの慢性疾患や体質的な問題で病気というべきかどうか分らないような体調不良や病気については、1.詳細な問診 2.現在の病歴 3.舌の状態 4.脈の状態 5.お腹の状態といったことを総合的に考えながら対処方法を診断することになります。その時、漢方的な診断としては「気」「血」「水」というもののアンバランスを見出し、体質の実証(がっしりした人)か、虚証(竹久夢二の絵にでてきそうな弱々しい人)か、また熱証かそれとも冷え証かというようなことを考えます。一般に漢方が劇的に効いた場合には、1.自律神経の不安定性が関与した病態 2.免疫機構が関与したもの 3.ホルモン(内分泌)の関与したもののいずれかであることが多いと言えましょう。
その一方、漢方の弱点としては 1.循環器系の疾患 2.手術を要する状態 3.細菌感染症 といったものが上げられ、こうした病気があることがはっきりしているときは漢方にこだわる必要はなく、西洋医学的アプローチが大切になります。 また、現在は10mlの血液検査であらゆる種類の疾患の謎が解き明かされる時代です。漢方医といえども、こうした良き西洋医学的な検査も充分に利用して正しい治療法の一助にすべきであります。
こうした言わば西洋医学と伝統医学の良い点を組み合わせたやり方が今後の漢方医学の新しい生き方となるでありましょう。そうしたものを「モダン漢方」というふうに呼んでおります。難病、奇病、珍病すべてを治せるとは豪語すべきではありませんが、もしなかなか既存のやり方では一向にはかばかしくない方はぜひ一度この「モダン漢方」をお試しになってみて下さい。