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最終更新:2012年7月31日(火) 19時14分

「虐待ではない」両親が児童相談所を提訴

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 子どもの保護はやり過ぎだったのか。児童虐待に対する児童相談所の対応の難しさが浮き彫りとなる問題が今、起きています。「虐待ではないのに子どもを保護されたため、子どもと家族が長期間離ればなれになった」として、ある家族が児童相談所を相手取り損害賠償を求める訴えを東京地裁に起こしました。

 一家8人の大家族。ともに再婚同士の夫婦にとって、この2歳の男の子が初めての子供でした。しかし去年5月、思いもよらない出来事が起きました。

 「(保育園に)急いで迎えに行ったら靴がなくて、何にも事前に連絡がなくて、本当にびっくりしてしまって」(母親)

 突然、男の子が児童相談所に保護されたのです。原因は「やけど」でした。この9日前、男の子は母親が使っていたヘアアイロンに腕をはさんでしまい、重いやけどを負$C$F$$$?$N$G$9!#;yF8AjCL=j$O!"!V;yF85TBT$N5?$$$,$"$k!W$H$7$FCK$N;R$rJ]8n$7$^$7$?!#

 「(やけどは)本当に悪いことしちゃったなと 心が痛くて、とにかく『虐待ではないです』って言ったけど『お返しできませんから』しか言われなくて」(母親)
 「誘拐みたいにされたと思った」(父親)

 夫婦は「虐待ではない」と訴えましたが、児童相談所は過去にたばこを誤飲したことなどを理由に引渡しを拒否、施設に入れるよう家庭裁判所に申し立てました。当時、兄弟が描いた似顔絵。男の子にはほとんど会えませんでした。

 「妹もまだ小さいし、絵を見て弟の顔を見てほしかったから」(小学生の姉)

 審理の中で家庭裁判所が指摘したのは、児童相談所のずさんとも言える調査内容でした。やけどを鑑定した医師は「アイロンを押し付けられた可能性がある」としていましたが、児童相談所は医師に不鮮明な写真のコピーしか渡していませんでした。

 また、保育園への聞き取りもなく、当日、病院にいったことも見落とされていました。家庭裁判所は「調査は不十分だった」とした上で、「両親の配慮がかけていたものの虐待とはいえない」と判断、男の子を家に戻すよう決定を出しました。保護から10か月が過ぎていました。

 「完全に忘れてました。私たちのことは。一時保護されたことはしかたないと思っています。(子どもにけがをさせたことは)私たちの反省する点でもあるし」(母親)
 「1年会えなかった。何もやらなかった児童相談所に対しては本当に許せない」(父親)

 児童相談所はなぜ、1年近く帰さなかったのか。そこには、ここ数年相次いだ「介入後、家に戻った子供が虐待を受け死亡したケース」への教訓があるといいます。

 「保護者の言い分を聞いて子どもを返したら、亡くなったということの方が、対立を恐れてはできない」(東京都福祉保健局・上川光治児童福祉相談専門課長)

 そして31日。夫婦は東京都を相手取り、損害賠償を求める訴えを起こしました。

 「児童相談所の態勢も、今後、変えていってもらえたらという思いが強い」(母親)

 しかし、現場経験がある元児童福祉司は判断の難しさをこう話します。

 「人間だからすべてお見通しではない。今、分かっている中で、どういう理由で(家庭に)介入するか決めなくてはいけない。それが一番ストレス」(児童福祉司として33年勤務した山本恒雄さん)

 男の子が戻って3か月。両親には「また誤解されたら」という不安が常にあるといいます。

 「何か困ったことがあったとしても、こわくて言えない。どういうふうにとられるか、どういうふうになっちゃうかもわからないし・・・」(母親)

 子供の命を守るために、親と行政がともにできることは何か。そのあり方が問われています。(31日16:55)

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