読めないQRコードとその対策-始めに
世の中にあふれる携帯用の2次元バーコードQRコード。 しかしこいつ、意外と読めないQRコードが多いって知っていましたか?
私はまだQRコードなんてほとんど誰も知らない、携帯電話での読み取りも対応していなかった時期にこれを見つけ、2002年の6月には同人誌の奥付と裏表紙に載せるようになったのだけど、元印刷業界にいたこともあり、バーコードという物が何であるかを知っていて、そして画像を扱う技術もあったために一度も自分自身ではトラブルを起こしたことがないのだけど、困ったことに一度QRコードを読む側に回ってみると、これが意外と読めないQRコードが多いのだ。
ついさっき、母が雑誌に掲載されたプレゼント企画のQRコードを携帯で読む方法を教えて欲しい、と言ってきたので、「おやすいごようさ!」とばかりに行ったのだけど、これが読めない。
なんだこりゃあ、と思って目を懲らすと…
……!
理由判明! なんと、このQRコード、どうやら生成後にどこかの行程で変な縮小がされたようで、あのQRコードのつぶつぶというか黒と白のマトリックス部分が、肉眼でも解るほど「正方形ではなかった」のである。
読めないQRコードは困る! でもちょっと理解できれば、事故は起こらないんですよ
では、何故そのようなバーコードが作られてしまうのか、考えてみたい。
これは単純に印刷の知識があってもダメ、バーコードがなんたるかということだけ知っててもダメ、画像処理に長けていてもダメ、なのである、それぞれの所をきっちりと解ってないといけないのだ。逆にその3つを簡単で良いから押さえてしまえばいいのだ。
そうすれば、そのことを含めてその後の作業をするデザイナー、DTPオペレータ、印刷業者などに申し送りしていれば、その後の人的なミスも避けられるだろう。
QRコードに結構凝っている人間は多いはずだ、DoCoMoでもSoftbankでもauでも読めるように、とかブックマークできるように、と考えて作る人は多いだろう。
だが、そんな苦労を掛けたQRコードも、あなたが作った時点では良くても、あとのデザイナーやDTPオペレーター、もしくは印刷業者が台無しにしてくれる可能性があることを忘れてはならない。
QRコードはサイトのアドレスたるURLを手打ちするのが面倒な携帯メディアにとっては必須な「そのサイト、あなたの会社サイト、企画サイト」などにとって重要な入り口であり、また衆目に晒されるのである、そんな大事な物が台無しになっては、機会損失云々の話ではないだろう。
また、印刷業者などでは印刷事故による賠償金など日常茶飯事だと思うが、今後は「クライアントの用意したQRコードが読み取れない物になっていた」と言うことで係争に発展する例も出てくると思う。
ではいよいよ読めるQRコード作りのために失敗例見てみよう
それではお待ちかね、確実に読み取れるようにするQRコードの作り方である。
解ってしまえば簡単なのだが、それがわかってない人間が多すぎるのである。
では、まずはダメになった(読み取れない)QRコードのいくつかの代表例を挙げてみよう。
- QRコード中のマトリックスが(黒と白のコントラストはきっちりと出ているが)正方形ではない
- QRコード中のマトリックスが角やエッジがぼやけている、つまりこれも完全な正方形ではない
- QRコード中のマトリックスが白地に黒以外で印刷されていて、良く読み取れない
- QRコードとしては上記のような間違いは犯していないのに、携帯の接写モードだと、大きすぎて、あるいは小さすぎて撮れない
大体こんな所だろうか。
あとは、QRコードに傷が付いた汚れが付いた、などは論外なので含めないことにするが、これに関しても多少軽減するテクニックはあるので披露しよう。
QRコードの活用テクニック、なんてのは他人に譲る、問題はその大事で頑張って作ったQRコードをいかに台無しにせず届けるか、である。
この辺、意外と言及されていないと思うので。
QRコードで重要なのは、マトリックス一つ一つがきちんと正方形になっていること
さて、まずQRコードで重要なことは何か?
それはまず何よりも「読み取れること」である。
今更だが、読めないQRコードや読み取りにくいQRコードなんてのが世の中には多すぎるのだ。
その回避テクニックのための基本的な心得として重要なこと、それは。
心得その1 QRコードが印刷後や画面への表示後、確実に黒と白のマトリックス構造が「正方形」になっていることが重要なのだ。
これ、当たり前じゃんか!
と思われるが意外とそうじゃない、読み取れないバーコードのうち、先に述べた1と2の条件、場合によっては3の条件も含まれるのだが、つまりは読み取れないバーコードのほとんどはそのプロセスこそ違いはあれ結果的にはほとんどこれが原因なのである。
2年ほど前だが、私はQRコードのマトリックスが「■ではなくほとんど●に近くなるまでぼやけている」というのを数例見てのけぞったことすらある。
ではどの辺でそう言うことが起きるのか?
その説明と対策を。
QRコードの拡大と縮小に気をつけて
まず、画面表示で言うと、最近は液晶ディスプレイが普及してきた、液晶ディスプレイは表面がフラットというか平面的であり、構造上もちゃんと四角い画素を表示してくれる、つまり「これほどQRコードにとって良い表示環境はない」、わかりやすいので、液晶モニタベースで話を進めてみよう。
たとえば、作ったQRコードがある、こいつが1ドットに1マトリックスに対応していたとしよう。
こいつが画面上では縦横の20ピクセル、でもそれじゃあ読みにくいなぁ、と思って、「じゃあ30ピクセルくらいにしよー」と思って1.5倍にするわけですよ。
サイトとか作って画像とか扱っていると、「非常にあり得そうなシチュエーション」ですよね。
でも、20ピクセルのQRコードを30ピクセルにした、と言うと聞こえは良いですが、1ピクセルの世界で言うと、1ピクセルを1.5ドットにするわけで……あれれ? 数字の上では1.5ピクセルの正方形と言えば納得できそうですが、それって液晶画面ではどう表示されるのでしょうか?
その場合、「あるところでは1ピクセル、あるところでは2ピクセルという感じでゆがんだり、グレースケール的な処理をしたなら、50%の黒(つまり灰色)のピクセルを生成して、「見た目で出来るだけもと画像に似たイメージの画像」を作ることでしょう。
つまり、その時点で白と黒のマトリックス構造はゆがんでしまうのです。
写真やイラストではこのようなことは、品質さえ気にしなければいくらでもやって構いません、しかし、このような白と黒の画像(2値画像と言います)の世界ではゆがまず綺麗な結果を得るためには「拡大するときは整数倍」で拡大、ないしは黒と白のマトリックスが正方形のQRコードの場合は、「そのマトリックスを構成する画素数の約数の整数倍」にしなくてはならないのです。
しかし、2値画像でも絵とかの線画とかなら、まだわずかにゆがんでも見られる物でしょう、しかし、それ以外の数値というか率で拡大や縮小をしたQRコードは、ほぼ間違いなく読み取れなくなります。
「縮小するときは1つの黒や白のマトリックスを構成する画素数の約数になる率での縮小」しかできません。
実はこれは、印刷でも似たようなことが起きるので、印刷の場合もそうしてください、QRコードはキズや汚れなどのデータの欠損には強いのですが、全体的にわずかでもゆがむような「ゆがみ」に関しては非常に弱いのです。
と言うところで、余りにも長文になってきたのでこの辺で今日のまとめをしましょう。
今日のまとめ
読めないQRコードのほとんどが、生成後、何らかの縮小や拡大などで失敗して読めないQRコードになっているからです。
まず縮小や拡大をする場合は、確実に拡大する場合は整数倍での拡大、(2倍とか3倍とか)、あるいは、マトリックスを構成する黒や白の1つの縦横の幅がいくつかのピクセルによって構成されている場合、その数の約数の整数倍、それ以外でのシチュエーションでの拡大は絶対厳禁です。(レタッチソフト上でのマウス操作での拡大縮小なんてのも絶対にしないで下さい、結局正確な拡大と縮小にならないのでゆがみます、数値指定してください)
あと、縦横で違う拡大率とか縮小率は絶対にやめましょう。
では、次回は「にじむQRコードと、その対策」です。 これは、たとえ今日のことが解っていたとしても、起きてしまう可能性がありますので、次回もきっちり勉強しましょう。
ドンQ URL 2006年11月19日(日)03時15分 編集・削除
TBを頂いておりましたドンQです。
いやぁQRコードの作成についての実に詳細なエントリーですねー(^-^)
QRコードっていうのはコストもかからずに、ツールがあれば誰もが簡単に作成できてしまうものであるために、これほどに普及したんでしょうけど、その反面として安易に作成されたQRコードが読取れないっていうことは多々ありますよね。
ただ、個人商店なんかが自分で作成・印刷してしまったものではなく、広く露出する雑誌等において読取りが出来ないようなQRコードについては、原稿作成・試し刷りの時点でそれらに関わる業者の側で読取りテストをするなどして、なんとかプロとしてその品質を保ってもらいたいんですけどね。(私も以前に痛い目に会った経験者ですので)
QRコードファンの私としては、矢野様のこのようなエントリーによって、製作現場でのQRコードへの理解が深まることを期待しております(^-^)