読売新聞の記事より
■【記者同乗ルポ】大学生ら 夜の街を青パト巡回中 神奈川(11年06月)
青色回転灯を点灯させて、地域の防犯活動に取り組むパトロールカー「青パト」。自治会などの活動に使われることが多いが、今年1月、神奈川県内では初めて大学生らによって結成された青パト隊、「神奈川防犯シーガル隊青パト隊」のパトロールに同行した。午後6時15分。横浜市中区の神奈川県警本部前で、隊長の神奈川大2年、岡部功さん(20)が車内のスイッチを押すと、車両上部の青色回転灯がともった。
岡部さんが父親から借りた乗用車にはパトロールを録画するための小型ビデオカメラも積み込まれている。この日初めてパトロールに参加する芝浦工業大2年、岩佐貴博さん(18)と、会社員城戸諒一さん(20)も同乗した。「今日は整備不良の車を注意して見回ろう」。打ち合わせを終えると、岡部さんはハンドルを握り、夕暮れの街に繰り出した。
出発してすぐに中華街に差しかかった。観光客の目が青パトに集まり、交差点で交通整理をしていた警察官も敬礼する。「目立つので走っているだけでも防犯効果を感じます」と岡部さん。
神奈川防犯シーガル隊は、警察庁の「若い世代の参加促進を図るための防犯ボランティア支援事業」に伴い、昨年8月に発足した。メンバーは女性5人を含む約40人で、大半が大学生。警察署の年末年始の特別警戒キャンペーンなどに参加している。
その中に「青パト隊」を発足させたのが岡部さんで、「徒歩でのパトロールなら誰でもできる。本格的にパトロールをしてみたかった」と説明する。
ネオンが輝き始めた午後7時、青パトは港南区の住宅街へ。街灯の少ない住宅街ではひったくりが増えているため、地元の警察署から重点的なパトロールを要請されている地域だ。
住宅街の路地を縫うように走りながら、岡部さんはふと車を止めた。「放置車両1台。右のサイドガラスが両方割られています。後部座席には……」。岩佐さんたちがペンライトで照らす車内の様子を確認しながら、岡部さんは携帯電話で警察署に報告。通りかかった男性から「ご苦労さまです」と、ねぎらいの声をかけられた。
時には車内で学生らしく授業や趣味の話で盛り上がることもある。それでもナンバー灯の切れた車両を見つけると、緊張感を取り戻し、信号待ちの間などに近寄って声をかける。
「少しでも犯罪抑止や事故の減少につながれば満足です」。中区から南、港南、戸塚、栄の各区を巡回し、中区へ戻る約50キロの4時間コースのパトロールを終え、岡部さんの顔に防犯活動を支える自負がのぞいた。
<青パト>
自治体や防犯ボランティアが自主防犯パトロール用に、青色回転灯を点灯させて地域をパトロールする「青色回転灯装備車」。警察本部への申請など一定の手続きと使用条件がある。県警によると、県内の登録台数は5月末現在、1545台(413団体)で、2005年12月末の197台(80団体)から急増した。交通安全協会や町内会、警備会社などによる昼間の活動が中心で、夜間のパトロールは手薄。高齢化も課題になっている。
【写真は放置車両を見つけ警察に連絡する岡部さん(横浜市栄区で)】
(2011年6月25日読売新聞朝刊から抜粋)
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