社説
東日本大震災 ボランティア/被災地の需要は尽きない
岩手、宮城、福島の3県で活動する災害ボランティア(月間)が、ピーク時に比べ10分の1程度に落ち込んでいる。災害ボランティアセンターが関わった分だけの人数とはいえ、関心が遠のき始めている印象だ。 東日本大震災の発生から500日。山と積まれたがれきの多くが撤去され、域外での報道の減少もあり、ボランティアの需要が一段落したと受け止められているのかもしれない。 もちろん、現実はそうではない。ボランティアに対する被災地の期待感は依然として高く、募集を継続している。 被災地のニーズは変化してきている。 初期の段階は、施設・家屋のがれき除去や清掃、泥だし、支援物資の仕分け、避難所の環境改善など、「緊急時の力仕事」が大半だった。 その後、仮設住宅などの環境整備や孤立防止といった生活全般の支援や地域活性化に向けたイベント実施など「心を通わせる交流」が軸となっている。 「復旧」のためのハードな作業から、「復興」に向けたソフトな活動へ、求められる支援の中心は移ってはいるものの、ボランティアの必要性が低下しているわけではない。 被災者に寄り添う息の長い継続的な支援が重みを増し、その真価が問われる局面だ。 新たな役割は効果を確認しにくい上、人間関係の構築がより大事になるため、初心者らの参加には難しい面もあるようだ。ただ、参加を促す工夫で乗り越えられるはずだ。 大阪市立大などが東京、大阪、新潟在住のボランティア参加者と、加わる意識のある未経験者を対象に実施した調査によると、参加者の7割が継続意向を示す一方、実際は5割が1回の参加にとどまっている。 阻害の要因として「距離」「費用」「仕事」を挙げており、行政・企業などによる支援強化が必要なことを示す。 未経験者に参加を促すためには「敷居の低さ」と、「仲間の存在」「周囲の後押し」が鍵と指摘。気軽に参加できるボランティアの設定と、不安の軽減を図る現地のきめ細かい情報提供が重要だと強調する。 取り組む方向は見えている。「被災地の状況を知りたい」といった動機も素直に受け止め、観光や買い物を織り込んだボランティアツアーもあえて歓迎したい。被災地は参加のハードルを下げて、興味をそそるメッセージをより積極的に全国に発信するべきだ。 農水省の助成を生かした「東北ふれあいボランティア」をはじめ、NPOや旅行会社なども多様な企画を用意している。 企業は社員研修に組み込むほか、社会貢献の一環として休暇を被災地で過ごすよう促してはどうか。大学もあらためて学生に参加を勧めてほしい。 支援が新たな段階を迎えている震災2年目の夏−。当初の思いを呼び起こし、風化の懸念を吹き飛ばして、本格的なボランティア社会への扉を開こう。
2012年07月31日火曜日
|
|