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◆ロンドン五輪柔道▽男子73キロ級(30日・エクセル)格闘技好きの母にささげるメダルだ―。中矢の母・由里枝さん(50)は看護師をしながら、三男の力を育てた。プロレスファンで、長州力にあやかって「力」と名付けた。力が高2の時に夫と離婚。それでも明るく元気に力を支え、メダリストへと押し上げた。
由里枝さんはスタンドで「水神」と書かれた日の丸を掲げて声援を送った。由里枝さんの父で力の祖父・太田重馬さん(故人=今年が十三回忌)は井戸掘り名人で「水神」と呼ばれていたという。
力の名前の由来について、由里枝さんは力を込めて言う。「リキ・ラリアットの長州力さんからいただきました」。力が高校2年の時に離婚した元夫の哲郎さん(51)もプロレス好きで、藤波辰巳(現辰爾)にあやかって「辰巳」と名付けるつもりだったというが「どこで聞いても、中矢の名字と合わせた字数が悪くて。中矢力の11画は良いと言われました」。
五輪の活躍で、長州力との対談を期待している母だが「世代が違うので、力はあまり長州力さんのことは知らないと思います。小さいときは友達から『消臭力』とか言われていました」と由里枝さんは大笑いした。
3420グラムで生まれた力。「上の2人が男だから、3人目は女の子だろうと思って手作りのワンピースとかジャンパーとか作っていたが、全部パ~ッ。友達にあげました。力は甘えん坊で天真らんまんかな。兄に譲るところは譲り、要領がいい」
両親から「男は泣くな」と育てられた力少年は、泣いていた近所の赤ん坊(男児)に「男は泣くな」って馬乗りになっていたというエピソードも。
5歳から柔道を始め、次兄・翔祐さんに続いて三津浜柔道会に入門。「伊予柔道会にいた浅見八瑠奈ちゃんと試合したりしたこともありました」。伊予柔道会の練習熱心さを見て小3のとき、兄弟で伊予柔道会へ。女子48キロ級で五輪切符を逃した浅見が、力の原点にいたことになる。
母が感じた最大の挫折は、10年ロッテルダムグランプリの5位。試合内容に納得いかず、泣いて国際電話をかけてきた。「最低最悪の試合だった。俺の柔道生命、もう終わったかもしれん」と。そこで母は「大丈夫。講道館杯で優勝しなさい。そうすれば、また世界の舞台で戦える。来年は力の年になる」と言って励ました。それを実行し、五輪の舞台に立った。
長男・聡史さんは妻帯者で、次男・翔祐には婚約者がいるというが「三男の力はまだまだ子供。好きな食べ物は明太子で、パスタや卵焼きに入れてあげています。ロンドンが終わったらまた食べさせてあげたい」。「きっと勝つ」にかけて「キットカット」を渡したことも。由里枝さんにとって、力は恋人のようでもある。
(2012年7月31日10時06分 スポーツ報知)