MV-22オスプレイの危険性とは何か、その"危険"の当事者とは誰なのか
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なんだかメディアで「オスプレイは危険、反対」と大騒ぎしていたので、どれほど危険なのかと思っていたら、実際の事故率は海兵隊の平均以下でしかなく、いったい何を騒いでいるのかよくわからなくなってきました。
沖縄タイムスなどに掲載された数値で見ると、オスプレイは10万時間飛んで1.93回事故が起きる程度。10万時間に1.11回のCH-46シーナイトに比べるとやや高いが、海兵隊全体の10万時間あたり2.45回よりは低い。
| 機種 | 事故率 |
| MV-22B オスプレイⅡ | 1.93 |
| CH-46 シーナイト | 1.11 |
| CH-53D シースタリオン | 4.51 |
| CH-53E スーパースタリオン | 2.35 |
| AV-8B ハリアーⅡ | 6.76 |
| 海兵隊全体 | 2.45 |
沖縄で墜落したこともあるCH-53シースタリオンの方が危険では?
オスプレイよりも事故率の高い機種があるにもかかわらず、そちらが危険視されていないのが不思議です。オスプレイが欠陥機なら、それより事故率の高い他の機体もすべて欠陥機ということになる。
た とえば、2004年に沖縄国際大学に米軍のヘリが墜落する事故がありました。この時に落ちたのが普天間基地にいたCH-53Dシースタリオン。上の事故率 表で見てもCH53Dの事故率はオスプレイの2倍以上、10万時間あたり4.51回と高い。しかも目の前で落ちているわけですから、その衝撃も相当なもの だったはず。
現在では改良型のCH-53Eスーパースタリオンが多く配備されているようです。CH-53EはCH-53Dに比べれば事故率は低いですが、それでもオスプレイよりは高くなっていて、10万時間あたり2.35回。
事故率からすれば、CH53もあちこちで事故が起きているはずですが、いちいちニュースで取り上げられることはありません。その一方でオスプレイの事故だけを逐一報道されれば、「オスプレイは危険なんだな」というイメージをもってしまうのも仕方のないことでしょう。
オスプレイばかり報道するわりに、より事故率の高いほかの機種について問題視する声が聞こえてこない、というのも不思議なところ。「とにかく空飛ぶ乗り物なんてすべて危険なのだから、すべての基地と空港を撤去しろ」と主張する方が、まだ理屈としてはわかります。
空軍仕様のCV-22Bの事故率が高いから、海兵隊のMV-22Bも同じくらい危険?
空軍で特殊作戦に使用されるオスプレイCV-22Bだと、10万飛行時間あたり13.47回の事故率と高めになっています。
ただ10万時間あたりの事故率といっても、実際にはCV-22Bの飛行時間はまだ少なく、合計でも2万時間ほどしかないようです。
(海兵隊のMV-22Bはすでに飛行時間10万時間を越えている)
そのため、単純に誤差で大きな事故率になっている可能性もありますが、とりあえずこの数字が実態に近い数値だという仮定にしておきます。
さ て、もし一部で主張されるように、運用方法ではなくオスプレイ(あるいはティルトローター機)そのものに欠陥があるのだとすれば、海兵隊のMV-22Bも 空 軍のCV-22Bも、同じくらいの事故率になっているはずです。事故率に1ケタの差が出るのであれば、その原因は機種そのものではなくて、CV-22と MV-22で何らかの違いのある部分が原因、と考えるのが自然です。
たとえば空軍のオスプレイだけ事故率が高い原因については、運用方法 の違いが考えられます。空軍仕様のCV-22Bは特殊なレーダーを追加して、超低空を高速で飛ぶような、わりと危険度の高い運用をしているようです。その ために事故率が高くなっている可能性は考えられます。
もちろん軍用機ですから、安全第一で飛んでいるわけにもいかないですし、多少危険度の高い訓練なんかもやっているでしょう。危険度の高い飛び方をしていれば、どんな機体だって事故がおきやすくなるのは仕方の無いことです。
垂直離着陸機V22オスプレイ 写真特集
CV22はV22オスプレイの空軍型で、 機体の基本スペックは海兵隊のMV22と変わらないが、地形追随機能がある高性能の航法レーダーを装備し、超低空を高速で飛行できる能力を持っている。航 法レーダーのアンテナは機首左側に突き出しているため、外見からMV22と区別できる。
米空軍はCV22を特殊作戦コマンドに配属し、長距離侵攻作戦や戦闘地域での救難活動などに使用する[米国防総省提供]
(2011年02月01日) 【時事通信社】
もしCV-22Bと同じように危険度の高い運用をしている機体と比較した上で、オスプレイは危険だ安全だ、と主張するなら、それは正しい推測です。
しかし海兵隊で輸送任務に使われるCH-46やCH-53と、空軍で特殊作戦に使われるCV-22Bなど、運用方法の全く違うものと事故率を比較してみても、機体そのものが危険か安全かなんて分かるはずがありません。他の要因の影響が出てしまうからです。
それはそれとして、海兵隊でも危険度の高い訓練が行われる可能性はもちろんあります。訓練の際に周囲の安全に配慮するなど、運用方法に注文をつける、ということは考える必要があるでしょう。
もちろん、これは全ての機種に対して主張すべきことであって、ことさらにオスプレイだけを危険視する理由にはなりませんが。
集計期間を長めに取るとCH-46もけっこう危険
沖縄タイムスなどで引用されている数値では、事故率の低くなっていたCH-46シーナイト。しかし1964年以降の全てのデータで計算すると、CH-46の事故率も10万時間あたり5.74回と高くなっているようです。
→オスプレイのモロッコとフロリダの事故 : 週刊オブイェクト
オスプレイの方も海兵隊MV-22Bと空軍CV-22Bをあわせて事故率を算出すると、10万時間あたり3.65回と高めに出るようですが、CH-46の事故率はさらにその上をいっています。
| V-22オスプレイ (MV-22 + CV-22) | 3.65 |
| CH-46* | 5.74 |
| CH-53D | 7.76 |
| CH-53E | 2.40 |
| AV-8B | 10.29 |
先に見た沖縄タイムスの数値とは開きがありますが、沖縄タイムスの方は海兵隊で運用されている機体だけの数値ということで、期間もごく最近のものに限って集計してるのかもしれません。どういう範囲で集計したものか示されていないので、詳細は不明。
さらに注目するところとしては、CH-46の飛行時間が年々減少しているところでしょうか。80年代は年間10万時間程度だった飛行時間が、2010年には年間3万時間を割るところまで減少。
CH-46は配備されはじめてすでに50年が経過していて、老朽化しているものが多い、ということのようです。そのため、古いものはどんどん退役して使われなくなっているようです。
オスプレイに反対して配備を遅らせるとなると、CH-46をこのまま使い続けることになります。そうすると古い機体を飛ばし続けることになり、それはそれで大変危険な気がします。安全性を理由に反対しているはずですが、その方がいいのでしょうか。
なんだか普天間移設反対論と同じ顛末になってしまいそうな予感がします。普天間は危険だ、と言いながら辺野古沖への移設に反対したり、「最低でも県外!」と理想論を主張して移設が遅れ、その結果として危険な普天間がそのまま使われ続ける、という本末転倒なことに。
オスプレイ「騒音も安全性もいける」 下地氏が米で試乗
国民新党の下地幹郎幹事長は19日、米カリフォルニア州のミラマー航空基地を訪れ、米軍普天間飛行場に配備予定の新型輸送機MV22オスプレイに試乗し た。その後ロサンゼルスで記者会見し、「騒音も安全性もイメージと違い、十二分にいけると思った。古いCH46ヘリの使用を容認する方が問題がある」と、 配備に前向きな姿勢を示した。
ヘリと飛行機の長所をあわせ持ったオスプレイ
ざっと見ただけですが、オスプレイだけが危険なのだと主張するには根拠がない。データ集計の仕方によっては危険だと言えなくもないですが、少し集計範囲を変えるだけで逆に安全にも見える。明らかにオスプレイより危険なんじゃないかと思える機種も他にありますが、そちらはあまり話題にならない。
では何を大騒ぎしているのかということになりますが、オスプレイの最大の特徴、他の機種との違いは、ヘリと飛行機の特性を合わせ持った機体だという点にあります。
まず飛行速度が2倍、航続距離が8倍、往復できる距離なら4倍という性能の差。
→【特集】垂直離着陸機オスプレイ 時事ドットコム
| MV22オスプレイ | CH46シーナイト | |
| 最大速力 | 509 km/h | 265 km/h |
| 航続距離 | 3334 km | 426 km |
| 作戦行動半径 | 600 km | 150 km |
そしてヘリと同じように垂直離着陸が可能であるという点。滑走路がなくても離着陸が可能でありながら、普通の飛行機に近い速度と燃費が達成されている。
新機軸の機体ということで、未知のものに対して警戒心が働いて不 安を覚える、というのは人間の心理としては自然なことではあります。人類で最初に飛行機やヘリに乗った人は不安を感じていたでしょうし。そのうち慣れてくるとは思 いますが。
あるいは、周 りがキケンだキケンだと大騒ぎしているので「よくわからないけど危険なのか」、と思い込まされている人もいるでしょう。というか、大部分の人はこのタイプのはず。
オスプレイは中国や北朝鮮にとって”危険”なもの
そういう無垢な一般人とは別に、確信犯的に問題を大きくしようとしている人たちも多分いるでしょう。アメリカと敵対する可能性のある国(あるいはアメリカの同盟国と敵対する国)にとって、オスプレイの性能は脅威で”危険”だと感じるでしょうから。
CH-46Eがオスプレイに置き換えられると、アメリカ海兵隊の行動可能半径が一気に広がることになります。たとえば沖縄県の普天間基地に配備されると、中国や台湾まで届く。山口県の岩国基地からなら、北朝鮮まで届く、というように。
そして、なにかと話題の尖閣諸島にも十分に届きます。最近も、尖閣諸島が日米安全保障条約の対象である、ということがあらためて確認されています。
→尖閣は安保条約適用対象 米政府高官、中国けん制
中国の国営放送ではオスプレイ配備について、ずばり「尖閣防衛が目的」という報道をしているようです。最大の目的?かどうかは知りませんが、日本の安全保障にも影響があることは確かです。
→「日本にオスプレイを配備する最大の目的は、尖閣防衛支援」by中国メディア
中国が尖閣諸島を狙おうとした時、すぐさま反撃が来るとなるとうかつには手が出せなくなる。中国にとっては、オスプレイの配備が強力な抑止力として働く、と感じているのでしょう。さらには中国と台湾の関係、北朝鮮と韓国の関係にも影響してくる問題で、東アジア全体の安全保障にもかかわることになります。
北朝鮮が日本に届くミサイルを配備すると、ミサイルを向けられた日本人にとっては”危険だ”と感じるのと同じようなものです。オスプレイが”危険”だというのも、周りの国から見た”危険”のことなのかもしれません。
中国や北朝鮮の息のかかった活動家が騒ぎ始めて、マスコミが取り上げる。そして事情をよく知らない一般人がそれに乗せられるという、よくある扇動パターンです。
一体どこの誰の安全を守りたいのだろう
少なくともアメリカ側は安全性に問題はないと判断しているようで、最近も大統領随行スタッフの乗るCH-46ヘリをオスプレイに置き換えることが決まっています。2008年には、現アメリカ大統領のオバマ氏がイラク訪問した際にオスプレイに乗ったこともありました。
→オスプレイ、米大統領スタッフらの移動に活用へ ホワイトハウス上空で運用
そして騒音の影響に関しては、オスプレイの方がCH46よりも静かだということです。オスプレイに置き換えられれば、基地周辺の騒音被害も少しは低減できるかもしれません。オスプレイに反対して現状の機種を使い続ける、ということは、今のレベルの騒音で我慢しろ、と言っていることになります。
→MV-22オスプレイ環境アセスメント米西海岸基地の騒音評価
もしオスプレイ反対を叫んでいる人が本当に「住民の安全を守りたい」と考えているのであれば、オスプレイより事故率の高い機種の反対運動をした方がいいのではないかと思います。
あるいは、そもそも普天間基地の存在が危険なんだと主張して、辺野古沖への移設を実行しろと訴えるのもいいでしょう。もしも「フクアンがある!」のなら、「最低でも県外! 国外!」と主張し続けてもいいと思います。腹案といっても思いつきではなく、アメリカ側が受け入れるような現実的な案でなければ交渉にもなりませんが。
その場合は安全保障に影響が出ることになるので、どうやって日本の領土と周辺国の安定を守るのかも考えて欲しいところではありますが。せめて理屈の通る反対をしてもらいたいところです。