EMグループの活動事例

2011年11月29日(火)

【福島県】
放射能汚染対策プロジェクト

カテゴリ : 災害支援

福島県内の実証圃場と散布車

【報告者】株式会社EM研究機構 取締役(研究・開発)新谷正樹、研究部部長 奥本秀一

2011年3月11日に発生した東日本大震災によって生じた、東京電力福島第一原子力発電所事故は、チェルノブイリ原子力発電所事故に次ぐ史上最大規模の深刻な原子力事故となりました。
本原発事故では炉心溶融(メルトダウン)及び水素爆発が発生し、人的要因も重なって、国際原子力事象評価尺度のレベル7(深刻な事故)に相当する多量の放射性物質が外部環境に放出されました。放出された放射性物質の量は77万テラベクレルであり、現在でも、福島第一原発から半径20km圏内が警戒区域に、半径20km圏外でも年間積算線量が20mSv(シーベルト)を超えると推定される葛尾村、浪江町、飯舘村等の区域が「計画的避難区域」に指定され、約11万人の住民が避難を強いられています。

放射性セシウム137による農地汚染の深刻さ

今回の原発事故では、空気中に飛散した放射性物質により広大な面積が汚染されました。中でも水田、畑、果樹園、牧場など農地の放射性セシウム137(Cs137)による汚染が深刻な問題となっています。Cs137は半減期が30年と長く、土に含まれる粘土や有機物と強く結びつくため土壌表面から5cm以内に長く留まる性質があることから、チェルノブイリでは事故から25年経過した現在でもCs137による土壌汚染の減少は進んでいません。

汚染された農地の除染方法について検証試験を続けてきた農林水産省は9月14日、表土の剥ぎ取りが最も効果的だとする結果を発表しました。しかし、専門家の試算によると、放射性物質の除染対象となる可能性のある土地面積は、最大で福島県全体の7分の1に当たる約2000km2に及び、除染土壌の体積は東京ドーム80杯分に相当する1億m3にもなるとしています。表土を剥ぎ取る労力や費用負担、剥ぎ取った表土の処理方法を考えると、学校の校庭ならいざ知らず、福島の大部分を占める農地、山林でこの方法が実現可能かどうかは大きな課題となっています。また、ヒマワリ等の植物を利用した除染も検討されていましたが、除染効果は小さく、現場への普及段階にないと農林水産省より報告されました。

微生物による除染の可能性

一方、少数ではありますが、複数の研究者により、光合成細菌や糸状菌などの微生物を用いた汚染土壌の除染も検討されています。有用微生物群(EM)の開発者である比嘉照夫教授は、これまでの農業、畜産、水産、環境保全、河川浄化におけるEMの実績、さらにはチェルノブイリの現地でEMを用いた経験から、放射性物質による土壌や水の汚染に対してもEMが有効な解決手段となると述べています。

今回の原発事故のような緊急事態においては、安全性が既に確認できている技術であれば、議論に時間を費やすのではなく、現場で実際に試し、有効で実用的なものを選抜してゆくことが重要です。EMによる除染は①ヒトや家畜に安全であり、環境や生態系に対し積極的保全効果がある、②取扱い、散布が容易、③拡大培養方法が公開されているので、利用者にとって経済性、費用対効果が高い、④汚染度や状況に応じて、物理、化学的除染方法と組合せが可能であるなどの利点が多いため、実用的で効果的な除染手段になりうると考えられます。

福島県飯館村における実証試験

実証圃場でのEM活性液散布

福島県の被災地域を4月中旬に視察した際、知り合った飯館村の果樹農家の理解と協力を得られることになり、比嘉教授の指導の下、5月10日に現地圃場でのEMによる環境修復試験を開始しました。今回は、飯館村の圃場試験において5月から7月中旬までの約2ヶ月間で得られた結果について報告します。

試験は約20aのブルーベリー園内に無処理区、EM処理区、EM+有機物処理区を設定し行っています。EM処理区には、光合成細菌(EM3号)を20%添加し強化したEM活性液を、週に2回、10a当たり100リットル散布しました。EM+有機物処理区にはEM活性液散布に加えて有機物(米ヌカ)を1回散布しました。土壌中の放射性セシウムの計測は、採取した土壌を㈱同位体研究所に送付し、ゲルマニウム半導体検出器による測定を依頼しました。試験圃場の土壌の放射性セシウムの測定は、実験開始から約1ヶ月毎に行いました。試料とする土壌の採取は、文部科学省の環境試料採取法および農林水産省の通知に従い、深さ15㎝までの土壌を採取しています。

EM+有機物(米ヌカ)処理区の様子

放射性セシウム濃度は実験の開始直後は、土壌1kg当たり2万Bq以上ありましたが、すべての処理区で放射性セシウムが1ヶ月目には40%減少し、2ヶ月目には75%減の5000Bq/kgまで減少していました。

すなわち、試験圃場では約2ヶ月間で放射性セシウムが1万5000Bq/kgも減少していることが認められました。

当初、この放射性セシウムの大幅な減少は、降雨等により土壌深く浸透・流出したのではないか考えました。そこで実際に15~30㎝深さの土壌も採集し分析を行いましたが、放射性セシウム濃度は300Bq/kg以下と低く、降雨による放射線セシウムの土壌深くへの浸透・流出は認められませんでした。この結果は、放射性セシウムは、土壌中の粘土粒子等と強く結合していることから容易に水に溶出せず、耕起していない農地の場合は表面から2.5㎝の深さに95%が存在しているとする農林水産省の試験報告と一致するものです。

一方で、土壌表面に堆積していた放射性セシウムが、2ヶ月で自然に1万5000Bq/kgも消滅することはあり得ません。試験圃場の放射性セシウムは何らかの要因により減少したと考えられます。

私たちは放射性セシウムが土壌中のEMすなわち有用微生物の働きにより低減化された可能性があると考え、試験圃場の放射性セシウム濃度が今後どのように推移するのかを確認すると同時に、圃場内の場所によるセシウム濃度のバラツキを考慮して、圃場でのデータ採取を継続して行っています。さらに、出来る限り外的要因を制限したポット試験も開始しています。

EMを活用した福島県内の農家圃場における調査

本宮市 キュウリ

福島県内には、伊達市を中心に15年以上も前からEMを活用している農家が多数あります。その中でも、EMと高品質EM発酵堆肥を活用したEMオーガアグリシステムという生産技術を普及されているマクタアメニティ株式会社の幕田社長の協力を得て、同システムの契約農家を定期的に訪問し、土壌や収穫物の放射性セシウム濃度の調査を行っています。

土壌汚染の比較的低い地域で栽培された農産物であっても、放射性セシウムが検出される場合があるのですが、EMと高品質EM発酵堆肥を積極的に活用している契約農家の圃場においては、現在まで収穫物から放射性セシウムの検出は認められていません(表1参照)。


■表1 EMを活用している農家の土壌及び作物中の放射性セシウム濃度


農園名所在地栽培作物土壌中のセシウム濃度(Bq/kg)葉・果実中のセシウム濃度(Bq/kg)
A氏農園伊達市小松菜2,781検出せず
B氏農園福島市2,338検出せず
C氏農園本宮市キュウリ678(天地返し後)検出せず
D氏農園本宮市キュウリ6,083検出せず
E氏農園須賀川市キュウリ2,476検出せず


測定機関:(株) 同位体研究所
測定方法:厚生労働省「緊急時における食品の放射線測定マニュアル」に従い、ゲルマニウム半導体γ線スペクトロメトリーによる核種検査
検出限界:1 Bq/kg

伊達市 小松菜

この結果は比較的低い放射性セシウムを含む農地で農業を行う場合、EMやEM発酵堆肥を活用し、良い土壌環境、微生物環境を維持することが、安全で高品質な野菜や果実の生産に繋がることを示唆しています。また、EMの継続的な利用により土壌の放射性セシウム汚染が低減する可能性もあることから、今後も調査を継続し、EMの有効性を言及できるだけのデータを現地調査で蓄積してゆく計画です。

(「健康生活宣言VOL.12」より)

【関連事例】
▼EMフォーラム2011(後編)
第2部パネルディスカッション 「EM技術による放射能汚染対策」
▼災害支援一覧



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