「仕事を選り好む」「堪え性がない」という若者批判の矛盾(2)
WEDGE 7月31日(火)12時17分配信
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| (図2)大卒者の就職率の推移 |
■より大きなマイナスの影響を被る新卒世代
それにもかかわらず、社会保障等の分野において、旧来の人口、経済が右肩上がりだった時代に適した制度がそのまま維持されているため、世界でも稀に見る世代間格差が発生している。
実はわが国の雇用慣行も例外ではない。以前と比べれば幾分明るい兆しが見えつつある新卒者の就職戦線の現状であるが、それでもいわゆるリーマン・ショックの直前と比較すると低いままとなっている(図2)。
また、戦後の日本経済史を概観して見ると、日本経済にネガティブなインパクトを与えるイベントが発生した時期には若年者の失業率が高まっていることが確認できる。
例えば、第一次オイルショック時には、全世代の平均失業率が1.9%のときに、新規高卒者を含む15-19歳は3.6%、新規大卒者を含む20-24歳2.9%、第二次オイルショック時には、同じく順に2.2%、5.5%、3.6%、プラザ合意後の円高不況時は、2.8%、7.3%、4.6%、東アジア金融危機・消費税率引き上げ時には4.7%、12.5%、8.4%、ITバブル崩壊時は5.4%、12.8%、9.3%、そしてリーマン・ショック時は5.1%、9.8%、9.1%と、新卒世代の失業率が他の世代よりも大幅に高くなっている。
■「景気が悪い時期の就活で運が悪かった」ではすまされない
このように経済が停滞すると、その後数年間失業率が高い期間が継続するが、より大きなマイナスの影響を被るのは、その時期に就職を迎える新卒者である。
しかし、「就職活動の時期がたまたま景気の悪い時期と重なって運が悪かった」という簡単な話ではない。なぜなら、これまでのわが国の場合、新卒で正社員として採用されなかった場合、その後も非正規の仕事しか得られない可能性が非常に高くなる。いわゆる新卒一括採用主義の弊害であるが、この点については、次回詳しく触れる。
■アンフェアな若者批判
また、例えば、仕事が見つからず困っている学生に対して、社会、大半は企業や組織でそれなりの地位にあったりすでに退職している世代から「会社の規模や、仕事を選びさえしなければ仕事はたくさんある。最近の若者は仕事の選り好みしているだけだ。」という批判が浴びせられることがある。実際に、世代間格差について取り上げたあるテレビ番組に出演した時に、ある中央省庁の政務三役を務める政治家から発せられた言葉でもある。しかし、こうした発言は実は幾つかの点でフェアとは言えない。
まず、最近の学生は会社や仕事を選り好みするということに対しては、そもそも自分の好みや学歴に見合った就職先を選ぶのは悪いことだろうか。そういう発言をする者だって就職の時点で自分の希望を優先したはずだ。現在のわが国の雇用慣行では、首尾よく正社員として就職できた者は、よっぽどのことがない限り解雇される恐れがないという意味で、安定した「身分」が保証される。
つまり、一旦正社員になりさえすれば、内部はともかく外部との競争にさらされることのない立場である。自らが「選り好んだ」ポストは離さず、他人に選り好みするなというのは傲慢のそしりを免れないであろう。そのような批判をするのであれば、いつでも失職し、就職活動をしなければならなくなる可能性がある同じ土俵に立ってから行うべきだ。イス取りゲームでイスに座ったまま他人にイスを探せというのがルール違反であるのと同じ理屈だ。
※つづく⇒じつは昔からあった「753問題」
著者:島澤 諭(総合研究開発機構主任研究員)
最終更新:7月31日(火)12時17分
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