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(22時間7分前に更新) |
厚生労働省の審議会が、本年度の最低賃金の引き上げ額を、時間あたり平均7円とする目安を示した。この通り上がると、時給で換算される最低賃金の全国平均は744円になる。
1けたのアップは、東日本大震災の影響を受けた前年度並みの、低い水準。2020年までに千円に引き上げるとした民主党政権の目標からみても、働く人の暮らしを支えるのには心もとない額だ。
最低賃金の目安は、都道府県の経済状況に応じ四つのランクに分けられる。最も悪いDランクに属する沖縄の引き上げ額は4円。今でも645円と全国最下位にあり、目安通り引き上げられても650円に届かない。フルタイムで働いて、ひと月約12万円という給与では、家族を養い生活することは困難だ。
最低賃金をめぐっては生活保護との「逆転現象」が問題になっている。
最低賃金で働いた場合の手取り収入が生活保護の支給額に達しない都道府県は現在11。審議会はこの地域に特別に高い額を設定し解消を目指すが、それでも北海道と宮城県では「逆転」が残る。
額に汗して働く労働者から「おかしい」という声が上がるのは当然だ。生活保護の方がいいとなると、働く意欲がしぼんでしまう。
最低賃金と生活保護の整合性についての議論は重要だ。ただし、この問題は生活保護をバッシングするだけでは解決しない。逆転がなくなったとしても、最低賃金ぎりぎりの給与では生活の安定は望めないからだ。
人気お笑い芸人の母親の生活保護をめぐる騒動以降、受給者へのまなざしが厳しくなっている。
「生活保護を受けることを恥とも思わない」「もらわないと損という感覚が広がっている」など偏見をあおるような報道も続く。
果たしてそうだろうか。
年収200万円以下の労働者が1千万人を超え、生活保護受給者は210万人を超えるなど、貧困問題は深刻化している。
厚労省のデータによれば、収入が生活保護水準以下の世帯のうち、実際に保護を受けている世帯の割合は3割にすぎない。これは生活保護から漏れる貧困層が相当数いることを物語っている。生活保護水準と大して変わらない所得で生活するボーダーライン層も増加している。
何らかの手当てがなされなければ、生活保護の受給率はさらに押し上げられる。
最低賃金というと学生のアルバイトや主婦のパートをイメージしがちだが、今や働く人の3人に一人、県内では半数近くが非正規雇用である。
問題解決のためには、社会保障制度全体にメスを入れ、制度を再設計する必要がある。
生活保護から抜け出すための「自立支援プログラム」を充実させると当時に、政府は雇用戦略対話で打ち出した「最低賃金800円」の実現に向け確かな道筋を示してほしい。その際、中小・零細企業の負担を緩和するための施策も同時に実施すべきだ。