えーっと、はじめに断っておきますが、この作品は某匿名巨大掲示板のエ□パ□板に自分が匿名で投下したものとまったく同じです。
このサイトに載せるにあたって手直しした部分とかは一切ありません。
間違っても盗作だったりは絶対にしないのでそのつもりでお願いします。
また、この作品は自分の書いてきた作品(と言っても全然少ないですが)とは少し趣が異なる「正統派の」エロ文章です。
男×男の描写、陵辱などは一切無いのでよろしくお願いします。
例によって元になった作品を知っていないと一切わからない文章なので、ゲーム「真・三国無双」シリーズ、「戦国無双」シリーズ、「無双OROCHI」に対する予備知識を
Wikipediaなどで入手してから読んでもらえるとわかりやすいかもしれません。
では、久しぶりの新作、お楽しみください。
「―――はぁ」
突如として発生した大事件によって歪められた時空の中。
未だ魔王・遠呂智の支配から抜け出せないでいる曹魏の陣中に、浮かない表情の巨漢が一人。
魏軍一の大食漢にして「虎痴」の異名をとる猛将・許楮である。
普段ならその全体が食べ物か飲み物に占められているはずの彼の頭脳は今、それ以外のあることに縛られていた。
(あの子、なんて名前なんだろなぁ・・・?)
夏侯惇、そして夏侯淵と戦った夷稜の地で、許楮はその少女に出会った。
戦場に似合わない華奢な体つき。身に纏った蒼い衣が、殺伐とした戦場でひらひらと舞う姿。
背中に背負った弓を振るい、敵兵をなぎ倒す猛将ぶりとそれに似合わぬなだらかな女性の体の線。
そして女性が本来持つ華やかさを押さえた慎ましやかな表情が愛らしく、戦いの場にいるにも拘らず見とれてしまうほどだった。
名前も知らぬ異界の少女。両刃の付いた弓を使っていたと言うこと以外、許楮にはわかることがない。
だが、そんな少女に、許楮は確実に惹かれていた。
・・・いや、厳密に言えば「恋」など一度もしたことがない許楮に、自分が少女に惹かれているということ自体わかっていなかったのだが。
魏軍の陣に建てられた物見やぐらは夕陽に照らされ、紅く光っている。
その紅の中で許楮は手すりにもたれ、ひとりたそがれていた。
「――はぁぁぁ・・・」
先ほどよりも深いため息をついた。どんなに紛らわそうとしてみても、胸の中には少女への恋しさが募るばかりだ。
(おいら・・・どうしちゃったんだろ?こんなに悲しいの、生まれて初めてだぁ・・・)
心の呟きも、恋心の激流にかき消されていく。許楮の目には、勝手に差し込んでくる陽光と、麗しい彼女の面影以外何も見えなくなっていた。
「なぁ〜に考え込んでんだよ、許楮ぉ!」
「わわぁっ!?」
突如何者かに後ろから押され、許楮は空中に大きくつんのめる。
落ちそうになって両手をぐるぐる回し、どうにか重心を後ろに戻して落ちずに済んだ。
「な、何するだよぉ夏侯淵?今のは本当に危なかっただよ」
「ははっ、冗談冗談。落ちなかったんだから良かったじゃねえか、なぁ!」
「良くないだぁ!」
許楮に人生最大の危機を味わわせたのは、先の夷陵の戦いで遠呂智に降った夏侯淵であった。
一目で猛将とわかる立派な髭面には、常に笑顔を湛えている。
「それにしてもどうした?ボケ〜っとしてんのはいつものことだから気にしてねえけどよ、そんな暗い顔でボケっとしてるなんてさ。お前らしくねえぞ」
ニコニコと笑顔を見せながら問いかける夏侯淵に、許楮はまた憂いの表情を見せる。
「何でも・・・ないだよ」
「ホントかぁ?」
そう言いながら許楮の顔に自分の顔を威圧感たっぷりに近づける。その顔が、意地悪く歪む。
「――本当・・・だよぉ」
「お前、何か悩んでんだろ?」
「うっ・・・」
図星を突かれた許楮の顔に、「悩んでます」と表示が出たのを夏侯淵は見逃さなかった。
「見てりゃわかんだよ――まったく、解かりやすい奴だなぁお前は。内緒にしといてやるから、言ってみろよ?」
心の問題をすっぱ抜かれた許楮がほのかに赤面する。
「――本当だか?」
「ああ本当だ。本当だとも!」
腕組みをした夏侯淵が胸を張り、誇らしげに答える。
「――おいら、今・・・変なんだ」
「・・・・・・お前はいつだって変だろう。飯は常に三人分だし、デブだし」
「そういうことじゃないだよ!――おいら、今・・・ある人の事ばっかり考えちゃってるだよ」
うつむき加減の許楮が恥ずかしげに答える。その頬が、さっきよりもっと夕陽色に染まる。
その表情から夏侯淵は推測する。
(ある人ぉ?・・・許楮の野郎、さては・・・恋でもしたか?)
「――で、ある人、ってえのは誰なんだ?おい」
尚も恥ずかしがる許楮の丸く出っ張った腹を、夏侯淵が肘で軽く、くい、っと小突く。
「それが・・・わかんないだよ」
「はぁ?」
返事をした途端、夏侯淵の顔が急激に険しくなる。その勢いに押されて、許楮は小声で続けた。
「・・・名前が」
「あぁ何だ名前がか・・・びっくりしたなぁもう」
「その子は、でっかい弓を背負ってて、夏侯淵みたいに弓使いが上手くて、えーっと、おいらが知らない・・・異世界から来た子で・・・」
「異世界から来た女弓使い?・・・あぁ、稲姫のことか」
「稲姫!?そ――その子、稲姫って言うだか!?」
許楮がいきなり凄まじい剣幕で夏侯淵の肩を掴む。鬼気迫る表情に、今度は夏侯淵が押されている。
「あ、あぁ・・・俺も詳しいことは知らねえが、この前夷陵でやりあった女だろ?知ってるぜ」
そう言うそばから、許楮の顔がとろけ始める。
「稲、姫・・・かぁ・・・♪」
言うが早いか、許楮は夕焼けの空に、再び少女の思い出を映写し始める。
(・・・相当初心だな、こいつぁ)
今にも完璧に溶けて液体になってしまいそうな勢いで妄想を続ける許楮の姿に、夏侯淵はそんなことを思った。
「あ、そうだ・・・夏侯淵は稲姫についてどれくらい知ってるだぁ?知ってること全部教えてほしいだよ、なぁ!」
「お――俺もあんまり知らねえんだが、聞いた所によると、確か本多忠勝とか言う強ぇえ武将の娘で、
えーっと誰だっけな・・・あ、そうだ徳川、い――家康の部下。今は孫呉に付いて遠呂智軍で戦ってるらしいぜ」
「・・・」
返事はない。許楮はただ、沈んでいく夕陽を恍惚の表情で見つめるばかり。
「―――おい許楮ぉ、聞いてんのかよぉ!」
思わず大声を出す。・・・・・・反応なし。
「ったく・・・どうしようもねえな・・・」
半分以上沈んだ夕陽を何かに取り憑かれたように見つめる許楮の背中を横目で眺める。
(――放っておけねえよなぁ・・・よし!俺が一肌脱いでやるか)
あーだこーだと様々に思案しつつ、夏侯淵はまた腕組みをしながらやぐらを降りていった。
夜は明けて、次の日。
(・・・気になる)
総大将・孫堅他名だたる猛将を人質に取られ、仕方なく遠呂智軍に降った呉の陣中。
今、この瞬間も誰かに想われていると言うことに一切気付いていない稲姫が、そこにいた。
(・・・どうしてあんなにも明るかったのだろう、あの人は)
彼女が気にしているのは、夷陵の戦いで共に戦った魏の将のうちの一人のことである。
彼を見た稲姫の抱いた第一印象は「謎」であった。
信じられないほど太ましいその体躯も、おおよそ常人では扱えそうにない鉄球の付いた砕棒も、そして戦いに挑むものの持つ雰囲気とは無縁の明るさも。
すべてが彼女にとって謎だった。むしろ謎過ぎた。
そして何より彼女が理解しがたかったのは、夏侯惇、そして夏侯淵を前にした際の彼の態度だった。
その後味方になったとはいえ、敵となっていたかつての仲間に会うのが「楽しみ」と言い切れる彼の心の内が、彼女にはわからないでいた。
(・・・気になる・・・許楮様のことが)
「気になる」と言うより、彼女はその言葉の裏に隠された真意を知りたかった。
自分が今まで出会ったどの人間にも似ていない彼のことを、なぜかもっと深く知りたかった。
「稲姫様」
思慮に耽る稲姫の部屋に、侍女が入ってきた。
「お客様がおいでになっておりますが・・・」
突然の来客。一体誰だろう、と稲姫の心は弾む。
「どなたですか?」
「えー・・・魏軍の夏侯淵様です」
「――夏侯淵様が?」
夏侯淵、と言えば、先の夷陵での合戦において戦った武将の一人だ。
自分と同じく弓を得意とする武将ということから、稲姫はその特徴を鮮明に覚えていた。
「わかりました。ここにお連れしてください」
夏侯淵がわざわざ訪ねてくる用事とは一体何なのか。途端に、それを確かめたい衝動に駆られる。
「かしこまりました――」
去っていく侍女の背中を見送りながら、稲姫は身の回りを整え、来客に備え始めた。
「よう、稲姫!夷陵で戦して以来か、会うのは」
陽気な態度で夏侯淵が部屋に入ってくる。そのくだけた口調は本来なら稲姫が忌み嫌う無礼のはずだが、不思議と嫌ではない。
「そうですね・・・再びお会いできて光栄です、夏侯淵様」
かといってこちらも友達相手のような喋り方では話にならない。当然ながら、礼節を全身から漲らせるようにして相手に接する。
巧みに織り込まれた尊敬の言葉が、夏侯淵の顔に笑顔を呼び込む。
「それで・・・本日は私に何か用事があって来られたのでは?」
稲姫は、余り長く話をするのが好きではない。本題には手早く入るのが、彼女の信条のようなものだ。
「ああそうそう・・・実はな―――お前に頼みがあるんだ」
「頼み?――何ですか?私に出来ることならば・・・」
「お前にしか出来ないことなんだ」
「私にしか・・・出来ないこと?」
「実はな・・・」
「嫌です」
稲姫はきっぱりと言い切り、そっぽを向いた。
「なぁ、そこを何とかしてくれねぇか?頼むっ!このとぉ―――りだっ!!」
夏侯淵はなおも顔の前で手を合わせ、誇り高き武将とは思えないような態度で頭を下げ、懇願している。
「い、や、で、す、そんなこと―――」
尚も稲姫は拒み続ける。その言葉の裏には、少なからず軽蔑が込められている。
「そういうことは誠に愛し合っている男女がすることです!ただの行きずりでそんなこと・・・不埒です!」
「不埒」は彼女の常套句である。そして、彼女が最も嫌う言葉でもある。
「不埒」と言う言葉は、その言葉を浴びせられている者を稲姫が相当軽蔑していることを示す。
すなわち、この時点で夏侯淵は相当嫌われている。彼女の見てきた人間の中で最低の部類に入れられてしまっているのだ。
「頼む!一度だけでいい、あいつに、夢を見せてやってくんねえか?甘ぁ〜い、とろけちまうような夢をさ」
「回数は関係ありません!そのこと自体が不埒です!!」
稲姫は怒っている。戦場でもこれほど怒った稲姫はなかなか見られない。
触ろうものなら一瞬にして灰にされてしまいそうなほどの怒りの炎が、稲姫の体から立ち上っている―――ように夏侯淵には見えた。
だが。
ここで退くわけにはいかない。
純粋で愚直な許楮の、生涯初めての恋。それを叶わないままに終わらせるのは、何故か胸が痛い。
何故か、応援したい衝動に駆られた。ひょっとしたら、自分ももう一度、恋やら愛やらなどという夢を信じてみたいのかもしれない。
だからこそ、ここで終わりにするのは、自分でも悔しい。
もう一度言う。ここで退くわけにはいかない。余計なおせっかいと笑わば笑え。
せめてもう一度―――最後まで食い下がる!
「あいつ――あの歳で恋の一度もしたことねぇみてぇなんだ」
夏侯淵はついに、最後の手段―――「泣き落とし」を繰り出した。
「そりゃ、あいつはいっつも食ってばっかだし、なに考えてるかいまいちわかんねぇし、俺が胸張って言い切れるほど馬鹿だけどよ・・・」
必死で語る夏侯淵をよそに、稲姫は尚も顔を背け続ける。
「でも・・・あいつは誰よりも純粋で、優しくて・・・いい奴なんだ。そんな奴が恋煩いしてるところなんて、俺もうこれ以上見ていられねぇんだ・・・」
便宜上最後の手段と言ってはいるが、これは本音だ。これで心動かされないようなら、諦めるほかない。
「頼む。あいつのために・・・ヤってくれねぇか?」
最後にもう一押し。どうなるかはもう自分にもわからない。
無駄かもしれないと薄々感じつつも、夏侯淵は神にもすがる気持ちで頭を下げ続けた。
頭を垂れ続ける夏侯淵をよそに、稲姫が顔を上げる。
「―――それでも嫌です。でも・・・」
「でも?」
稲姫は一瞬逡巡の表情を浮かべてから言葉を続けた。
「―――許楮様がどんな方なのか、それには興味があります。会うだけなら・・・」
稲姫は確かめたかった。一人の猛将を動かすほどの許楮の想いを。
優しく、純粋だというその想いに、稲姫は触れたくなった。
深刻ぶっていた夏侯淵の顔が途端に彼本来の明るい笑顔に変わる。
「――うっし、分かった!じゃあ計画通りに頼む!」
勢い良く立ち上がり勝手に去っていこうとする夏侯淵に、稲姫は一つだけ付け加えた。
「不埒なことは一切いたしませんから・・・そのつもりでお願いします」
「わぁってるわあってる!じゃあな、頼んだぜ!」
夏侯淵は背中から分かるほど嬉しそうに部屋を出て行く。その背中を、稲姫は期待とも不安とも取れない目で見つめていた。
「釣り・・・だか?」
「そう。釣り。行って来てくれよ」
許楮の恋煩いが三日目に突入した矢先、その依頼はいきなり突きつけられた。
「最近俺たちの食糧事情ってぇのも深刻なもんでさ、このまんまじゃ全員美味い飯にありつけないわけよ。だから釣り」
夏侯淵の説明は割としっかりしているようで実はしっかりしていない。
魚は長期保存には向かないし、本当は食糧は十分すぎるほど貯蔵してあるのだ。
無理やり感が溢れ出ているが、許楮はまったく気付かない。
「え・・・でもおいら釣りなんて全然・・・」
「なぁ〜に言ってんだよ!釣りなんて釣り糸の先っちょに餌つけてそこらの池に垂らしてりゃ余裕だろ?大漁大漁!ってな」
強引な語り口に圧倒されて、大きな許楮の体はどんどん縮んでいく。
「じゃ・・・じゃあ、行って来るだよ」
怪しいとは思っていた許楮だったが、ついに勢いに押されて了承してしまった。
「うっし!わかった!あっちの山の中腹くらいに池があったような気がするから、そっちで釣ってきてくれ」
「――わかっただ」
その体格に似合わない細っちい釣竿を背負い、許楮はのそのそと山に向かって歩いていった。
(さぁ〜て・・・後はおめぇ次第だ・・・頑張れよ、許楮)
どこかいつもより小さく見えるその背中に、夏侯淵はそっと心の声をかけた。
(・・・本当にここでいいのかしら)
許楮が夏侯淵の思惑通りに動き始めた頃、稲姫は魏の陣地に程近い山中、池のほとりににいた。
確かに夏侯淵はここにいれば許楮が来ると言った。
しかし、朝早くからここで待ち続けている稲姫の前に、それらしい人影はまったく現れない。
父譲りの厳格な性格の持ち主である彼女にとって、時間を守らないと言う行為はかなりの「不埒」である。
それと相まって稲姫を苛立たせているのは、今日の異様なまでの暑さだ。
遠呂智が作り出した異空間の中にあるこの世界は、気候の変動の仕方も稲姫が元いた世界とはまったく違う。
晴れ渡った空に霹靂が乱れ飛び、大嵐が一日で止む。雪が降った翌日に蝉が鳴く―――そんなことが当たり前の世界だ。
どのような法則や兆候を伴って変化するのかはまったくわからないが、今日は暑い。何故か、暑い。
稲姫の推測した現在の暑さは夏に匹敵する。じりじりと照りつける太陽が、稲姫の背中を容赦なく焼く。
火照った体から、じっとりとした汗が滲み出る。
(まだ許楮様が来ないのなら・・・少しだけ――)
濡れて体に纏わりつく衣を、苦戦しながらも脱いで、きれいな四角形に畳む。
小ぶりで美しい胸の双丘や、臀部のぷにっ、という擬音語が似合いそうな丸み、そして下腹部の控えめな茂みとその奥の秘裂が、誰もいない緑に囲まれた空間にあらわになる。
そして、滑らかな線を描く脚をそっと池に浸す。
じっとりと体にべた付いていた汗が水に流され、その冷たさが爽やかに稲姫の体を洗う。
(―――気持ちいい――)
稲姫の体は、そのまま吸い込まれるように池の中へと入っていった。
「―――はぁら減っただよぉ・・・」
人気のない山の中、許楮は大きな声で呟いた。
どこに池があるのかぐらいは知ってはいたが、実際にそこに向かうまでの道は過酷だった。
しかも今日はすべての肥満体にとっての人生最悪の日・・・すなわち気温が高い日である。
この歳で未だに脂肪の成長著しい許楮の無尽蔵の胃は、ほぼ一瞬で腹の中の養分を消化しきって収縮しだした。
よって、今彼の腹は物凄い減っている。めちゃくちゃ空いている。
そんな満身創痍の体で山中を彷徨っているのだから、いくら温厚な許楮でも愚痴りたくなるというものだ。
「池・・・後どれだけ歩けばいいだよぉ・・・?もう嫌だぁぁ・・・」
そんな時。
「ん?」
突如、鼻をつくいい香りがした。とともに、許楮の顔色が急激に変わる。
「くんか、くんか・・・んん?」
更に良く嗅いでみる。許楮が今まで嗅いだことのない香り。
戦場で時々拾える桃も、骨付きの肉も、もちろん、この世界では拾えないけれど許楮が大好きな肉まんだってこんないい香りはしない。
その香りが、許楮の五臓六腑に染み渡り、疲れきった彼の体に新しい力を与える。
その香りが何なのか、確かめたい。そんな想いが、許楮を動かす新しい原動力になる。
「はぁぁぁぁぁ・・・♪―――行ってみよう・・・」
うっとりとした様子のまま、許楮は森の更に深い奥へと向かっていった。その先にあるものが何なのか、彼はまだ知らない。
「こっちだなぁ・・・いや、こっちかなぁ・・・ん?」
鼻を某家畜のように鳴らしつつ、森の中を進んだ許楮の前に、意外な光景が開けた。
そこは池だった。夏侯淵から頼まれた釣りの目的地の、池。
池の周辺には特に高い木も生えておらず、森の中の鬱蒼としていた空気は一気に晴れ渡っている。
池の水は透き通り、空から降り注ぐ太陽の恵みを乱反射して眩しく照り輝いている。
詩歌の心得がある者なら、ここで一句読めそうな美しい情景がそこにはあった。
しかし、許楮の意識を水溜りの美しさから引き剥がすものもまた、その池にあった。
動くものの何もない水面上に、肌色の人影が躍っている。
涼しげな池の清水をその身に纏い、―――覆い隠すもののない清らかな裸体を晒した―――女。
大きすぎず小さすぎず、正に許楮の理想を投影したかのような形の、胸に実った二つの果実。
滑らかな曲線を描きどこまでも美しい身体。
その流れを汲む臀部は限りなく柔らかそうで、張りがありそうに見える。
そして下腹部には――今まで許楮が見たことのない一本の線と、その周りを守るようにまばらに生えた縮れた毛。
どこからどう見ても完璧な身体。今まで許楮が一度も見たことのない身体。
そして―――許楮が最も見たかった、いや表に出さないで心の中でこっそり見たいと望んでいた身体。
それが、目の前にあった。
「―――稲・・・姫・・・?」
許楮は無意識に呟いていた。
そう。許楮の目の前の艶やかな身体の持ち主は、彼が一人恋焦がれていた異世界の弓使い・稲姫であった。
今日は、何故かとても暑い。許楮の身体はすでに汗でびしょ濡れになっているのだから、その暑さの程度がわかる。
その暑さゆえ彼女はこんな所で水浴びをしているのだろう。
だが、許楮にとってそんなことはどうでも良かった。
目の前に全裸の稲姫がいて、今まで一回も見たことがないおなごの裸があって、今まで見えなかったものが全部見えて逆に見えすぎて困るというかなんというか
ああもうなんだか身体が熱い、太陽のせいじゃなくても身体が熱い、なんだかとっても気持ちがいい、できるならこのまま一生眺めていたい、
と、とにかく処理不可能なほどたくさんの感情が許楮の頭の中に流れ込み、何故稲姫が水浴びをしているか考える暇などまったくなかった。
とりあえず許楮は眺めた。目を皿にして、今目の前にある夢のような光景を眺めた。
いつまで眺めていられるのかわからなかったが、それでも眺め続けた。
「―――!?」
突如、稲姫は左から突き刺さるような視線を感じた。
自分の体を嘗め回すようないやらしい視線が、自分の体を這いずり回っていることに、稲姫は恐怖した。
どこかに隠れて、自分ばかりいい思いをしようという根性が稲姫は気に入らない。
すかさず胸を隠し、片手で弓を取った。
「―――不埒です・・・!成敗します!!」
裸のまま矢をつがえ、弦を怒りに任せて引き絞る。
弦が胸に当たって少しだけ痛いがそんなことは気にならない。
今はただ―――自分の水浴びを不埒にも覗いた誰かをこの矢で成敗したい、その気持ちで一杯だった。
だが。
稲姫が矢を向けた相手は、稲姫が矢を放つ前に倒れていた。
「―――え?」
予想だにしなかった展開に、稲姫は驚愕し、しばらく水面に立ち尽くす。
(まだ・・・何もしてないのに?)
念のため弓の刃を構え、茂みの中に倒れた人影に一歩、また一歩と裸のまま接近していく。
(一体・・・何が起きたのかしら?)
そして―――稲姫は茂みの中に一気に顔を突っ込んだ。
紅い。
視界の中にある人の顔は、血で染められたように紅い。
というか、本当に血で染められている。
血は顔の全体に飛び散っているが、特に鼻の辺りに多く付着している。
さらに丸い。全体的に丸い。
そして、その顔は稲姫がどこかで見たことのある―――酷く人懐っこい顔だった。
「きょ―――許楮様っ!?」
そう。茂みの中で凄まじい量の鼻血を噴出して倒れていたのは、彼女が待っていた男―――許楮だったのだ。
「―――むにゃむにゃ・・・おっきい肉まんがぁ・・・二つぅ・・・並んでるぅ―――」
許楮の朦朧とした意識の中で、何故かぐるぐる回る二つの肉まん。
揺れたりなびいたり、震えたり回ったり。その様子を眺めているだけで、なんだかとっても気分がいいのは何故だろう。
閉じた瞼の裏に流れる星を散りばめた桃色の背景の中で、妄想が行ったりきたりしている。
そんな幻想的(?)な風景の中に、自分を呼ぶ声が一つ。目覚めよ、と呼ぶ声が一つ。
その声に導かれるように、許楮はそっと桃色に染まった瞼を開けた。
「・・・あれ?おいら、今までどうしてただぁ・・・?」
朦朧とした意識の中から上半身を起こして、今自分がいる状況を確かめる。
いい香りに導かれるようにして夢中でやってきた池でさっき見た衝撃的な裸体は、許楮の見渡す限りにはもうない。
どうやら随分と長い間眠ってしまったらしい。
生臭い臭いを感じると、いきなり服が血塗れなことに気付く。
顔もなんだか湿っぽい。まるで、誰かに拭ってもらったかのような感触。
「―――お目覚めになられたのですか?許楮様」
耳に入ってくる美しい声にふと左を向くと、そこには首を可愛らしく傾げて微笑む稲姫の姿があった。
「い・・・!稲、姫・・・」
許楮はいきなり視界に入ってきたその顔からばっ、と顔を神速で背ける。
稲姫の可憐な顔が目の前にあると言う夢のような状態に対処できない混乱と胸の奥底に湧き上がってくる罪悪感とで、許楮は思わず口ごもってしまう。
「え――私の名前、ご存知だったのですか?」
突然の問いかけに、許楮の混乱は更にどん底まで転落していく。
「あ、ああ・・・―――かっ・・・、夏侯淵から聞いただよ。―――えーっと、そのぉ・・・さ、さっきは、ご、ごめんなぁ?」
「――もう、過ぎたことですから。気になさらないでください」
「あ、あぁ」
隣にある美しい顔を直視できないまま、不器用な会話はそこで一旦途切れてしまった。
なんとなく気まずい雰囲気が、二人の間に流れる。
三分ほど続いた不穏な静寂を打ち破ったのは、稲姫の問いかけだった。
「―――あの・・・許楮様はここに何をしにいらしたのですか?」
相変わらず稲姫の顔を見ないまま、許楮は答えた。
「つっ、釣りしにきただよ。ちょっと頼まれ事で、な―――稲姫こそ、何しにきただぁ?」
予測もつかない反撃に稲姫も焦りだす。
「え、えっ・・・私は・・・こ、この暑さですから、ちょっと涼みに・・・ふふっ」
夏侯淵様に許楮様に会うように頼まれた、などとは口が裂けても言えない。
愛想笑いでどうにかごまかそうとするが、許楮は怪訝そうな顔をしている。
「・・・う〜ん・・・」
首を傾げて唸る許楮を前にして、稲姫は更に動揺しながら次の言葉を発した。
「そっ、それより・・・こんな所でお会いできるなんて、奇遇です。私、ずっと許楮様にお尋ねしたいことがあって・・・」
「おっ―――おいらに・・・聞きたいこと、だかぁ?」
少し顔を赤らめて許楮が言う。照れ具合が横顔からでもわかる。
「ええ・・・夷陵での戦で、私に許楮様がおっしゃったことについて」
そして、稲姫は自分が最も聞きたかったこと―――許楮の人格について聞き始めた。
「あの日―――夏侯惇様や夏侯淵様と戦っていた時、許楮様は私に『夏侯惇や夏侯淵に会うのが楽しみ』とおっしゃいました」
「あ、あぁ・・・確かに、そんなこと言っただなぁ」
「あの時、あのお二人は許楮様にとって敵だった・・・その二人に会うのが楽しみ、と言うのは・・・」
少し稲姫のほうを見るようになってきた許楮は、意表を突かれたような表情で稲姫の問いをじっくりと真剣に聞いている。
「私でしたら、悲しみのほうが先行してしまうような時に、何故あんなことを?」
稲姫が今までずっと気になっていた言葉の真意。それを問われ、許楮はまた首を捻って考え込む。
「・・・うーん・・・稲姫は、何でそんなこと聞くだぁ?」
「え・・・?」
さっきから質問返しで翻弄され続けている稲姫が頭をひねる。
「だって、仲間に会うのが楽しみなのは当たり前だよぉ?何でそんなこと聞くだぁ?」
「『仲間』・・・」
仲間。自分がいた戦国の世で共に戦っていた仲間。そしてこの捻じ曲げられた世界で巡り会った呉の武将達。
その単語を聞いた時、稲姫の頭の中には真っ先に彼らのことが思い出された。
「そう。仲間だぁ―――敵でも味方でも、あの二人はおいらの大切な仲間だよ」
そう語る許楮の表情が、だんだん明るい、彼本来の輝きを取り戻していく。
「それに、おいら信じてただよ。あの二人ならきっと、曹丕さまのことわかってくれるって。曹丕さまが遠呂智の仲間になったことにも、深いわけがあるってこと」
稲姫はその表情を見つめながら、夏侯淵が言っていた彼の純粋な優しさの意味に気付き始める。
「きっと、曹丕さまは時を待ってるだ―――おいらたちが立ち上がる時を。遠呂智をやっつけて、腹いっぱいの世を作る時を」
「腹いっぱいの世?」
「そうだぁ。おいら、み〜んながうまいもの食えて、そんで、みんなが幸せな世の中にしたいだよ」
今まで稲姫が見てきたものとは違う、自分の立身出世や欲望のためではない戦の理由。
その透き通った真っ直ぐさを、稲姫は美しいと思った。
「そうだ!稲姫もおいらたちと一緒に来ればいいだよ」
「え・・・?」
突然の提案に、稲姫はたじろぐ。美しく澄んだ真っ直ぐな瞳が、稲姫の顔を捉える。
「おいらたちと一緒に、みんなが腹いっぱいの世を作るだよ。幸せな世を作っ・・・」
子供のようにはしゃぎながらそう言いかけた許楮の顔が、途端に悲しみに沈む。
無邪気だった双眸が、悲哀の淀みに染まっていく。
「許楮様・・・」
「そうだよなぁ・・・稲姫は、おいら達の世界の人じゃないもんなぁ・・・」
緑に囲まれた池のほとりで、許楮は稲姫から視線を外し、明後日の方向を見上げる。
その姿を、稲姫は見ていることしか出来ない。
「そもそも、こうやっておいらたち二人がめぐり会えたことが、きっと夢みたいなものだっただな。
遠呂智を倒して腹いっぱいの世を作っても、おいらはもう―――二度と―――稲姫に・・・会えない・・・だぁ・・・」
許楮が紡いだ言の葉の最後は、頬を伝う涙に彩られながらそっと池に滴り落ちた。
大きな身体を震わせ、泣きじゃくる姿は切なく、どうしようもなく真っ直ぐに稲姫の心に突き刺さった。
「許楮様・・・・・・」
稲姫は小刻みに震えるその身体をそっと抱きしめていた。
暑さの中でも不思議なくらいに不快感を覚えない温かさを身体全体に感じながら、稲姫は瞳を閉じ、許楮を慰めた。
「うっ・・・ううっ・・・だってぇ・・・っ・・・おいら・・・初めて会ったとき・・・っ・・・からっ・・・稲姫の・・・ことぉっ・・・」
許楮は震える声を絞り出すようにして、心の内に秘めていた想いをすべて放出する。
躊躇もせず、一気に。叫ぶように。
「・・・好き・・・だっただよぉっ!!」
「―――存じておりました」
「・・・ぇ・・・?」
抱き合ったまま、稲姫はついに口止めされていた秘密を暴露した。
「・・・夏侯淵様が私に教えてくださいました。許楮様が私を心密かに想っていらっしゃる事を」
「夏侯淵が・・・?」
喉をしゃくり上げながらも、許楮は驚きの色を隠せない。
「私がここに来たのも、許楮様と会うようにと夏侯淵様から頼まれたからなのです・・・黙っていて申し訳ございませんでした・・・」
そう言いながら、稲姫はそっと許楮の肩に手を回す。
涙でボロボロになった許楮の顔と、侘しさと淡い想いをその内に感じさせる稲姫の顔が、至近距離で見つめ合う。
「夏侯淵様から聞いた通りでした・・・許楮様は優しく、真っ直ぐな人だと、私は想います」
見つめ合う二人の距離が、どちらから、というわけでもなく近付きあう。
「時が限られているのなら・・・その時間の中で、私は許楮様のことを・・・貴方のことを・・・」
触れ合いそうで触れ合わない瀬戸際の距離に、高鳴る鼓動。紅潮する頬。
未体験の体験への不適応が生むその生理現象の総てが、二人の脳を支配していく。
「もっと・・・知りたい」
唇に流れ込む、互いの体温。
誰かとしたこともないのに、稲姫は接吻の何たるかをすでに知っていた。
ひょっとしたら、こんな日が来るのを心のどこかで楽しみにしていたのかもしれない。
相手の唇を自分が出しうる最大の力で吸い上げ、その唾液を自分の口内へ導く。
這入りこんでくる相手の熱い液体が、稲姫のどこかに燃え立つような劣情の炎を点ける。
それは無論、夏侯淵にさえ「初心」と言われた許楮とて、例外ではなかった。
全力で吸われる自分の唇。身を任せれば心地よく、抗えばまた気持ち良い。
互いの唇を吸って、吸われて。そうして、幾分かの時が流れた。
「ほんとに・・・いいだか?」
汗に濡れた衣服をがさつに脱ぎ捨てながら、許楮は稲姫に尋ねる。
「はい・・・許楮様となら、私・・・」
頬を染めながら答える稲姫もまた、服をゆっくりと脱ぎ捨てていく。
誰も見るもののいない池のほとりで、肌を晒した二人は緑の芝に寝転び、やがて抱き合った。
「おいら―――こんなに近くでおなごの肌見るの、初めてだ・・・」
そう言いながら許楮は、張りのある稲姫の白く美しい肌を無意識下で視姦する。
自分の体の下にある、自分が最も愛する女の裸。
小ぶりで上向きの双丘の上の桃色の乳首を見つめながら、許楮はみっともなく鼻の下を伸ばしそうになりかける。
が、そこは気合で自分なりに凛々しい顔に戻す。だが、心まではそう凛々しく堪えられるものではない。
許楮の心臓は飛び出しそうなほど高鳴り、その鼓動は確実に、下の稲姫にも伝わっている。
そして股間の象徴は益々硬さを増し、すぐにでも暴れ出しそうなほどに猛り狂っていた。
「・・・なんか・・・ドキドキするだぁ・・・」
「・・・私もです。初めてですから・・・」
稲姫は許楮の片手を掴み、自分の左胸に持って行き、ぷにっ、と触らせる。
「のわぁっ!?」
許楮が大きく驚きの声を上げる。どぎまぎするその手に、稲姫の鼓動が伝わってくる。
「ほんとだぁ・・・稲姫も、ドキドキしてる・・・」
誰かに肌を触られると言うこと自体が稲姫には初めてであった。それ故に、許楮に胸を触らせること自体が彼女をより興奮させた。
「・・・じゃ・・・いくだよ」
左胸を触っている手を、そっと丸みに沿わせ動かし始める。
「ん・・・っ」
内側から溢れ出す淫らな声を堪え、稲姫が喘ぐ。
そっと右胸にも手を沿え、動かすと、その声はさらに増大し、森の中にだんだん響き始めた。
優しく、傷付けないように慎重に、許楮は双丘をひたすらそわそわと撫で回す。
(・・・肉まんみたいだぁ)
そんなことを思いつつ、許楮はならば割ってみようと手に力を入れた。
許楮の指が動き、稲姫の乳にめり込むと、むにっ、と音を立て、柔らかな肉が柔軟にへこむ。
「あ・・・っ・・・!」
未開発の性感帯を押され、稲姫が今までより一段階高い声を出す。
その声が、許楮の中に燃えている火を更に強くする。
初めはそっと、続いてだんだんと強く、許楮は稲姫の胸を揉み解す。
二つの丸みをぶつけてみたり、離してみたり、指をめり込ませてぐりぐりしてみたり。
次第に愉しくなってきた。総てを包み込めるような大きな掌で、許楮はしばらく稲姫の乳を玩び続けた。
稲姫は、矢継ぎ早に与えられる新しい感覚に痺れ始めた。
薄い陰毛の下の秘裂は愛液で潤い始め、嬌声は甘い媚薬となり、許楮の情熱を更に燃やす。
そして桃色の突起は上向きに勃ち上がり、許楮の目につくようになる。
可愛らしく勃った二つの突起に吸い寄せられるように、許楮は指を伸ばした。
「んぁっ!」
稲姫が甘く叫ぶ。
「稲姫・・・ここが・・・いいだか?」
そう問いながらも許楮は両手の指で乳首をつまみ、転がし、引っ張り、あらゆる手を尽くして玩ぶ。
「はい・・・っ―――・・・もっと・・・そう・・・舐めて・・・っ」
普段の厳格な彼女の人格からは信じられないほど淫乱な言葉が飛び出す。
清楚な彼女のその落差に魅了されながらも、許楮はその言葉に従う。
「舐めれば・・・いいだか?」
大きな口で、小さな突起を咥える。
「んぁぁ・・・っ!」
美味しいものには目がない舌で、目の前にある美味しい桃色の突起を味わいつくす。
舌の先に唾液をまぶし乳首に塗りつけると、稲姫は小さく喘いだ。
その声に応える様に、許楮は右胸の突起をしゃぶりながら余った両手で左側にも刺激を与える。
不慣れそうな手つきで、荒々しく胸をもみしだく許楮もまた、初めての体験の喜びに打ち震えていた。
「・・・っ・・・んっ・・・んん・・・っ・・・っぁ・・・あっ」
夏のような陽気の蒸し暑さとは別の熱さで汗ばむ許楮の身体の下で、稲姫は自らの体に与えられる仕打ちに嬌声を上げ続ける。
その股の間の秘裂から、溢れた愛汁が滴り落ちる。
無邪気に胸に指を突き刺し続ける許楮の太ましい股に、その汁が沁みつく。
「ん?・・・稲姫のここ、濡れてるだぁ・・・」
その事実に気付いた許楮が、両手を胸から離し、そのまま下へと這わす。
許楮の手から開放された二つの乳がぷるんっ、と震えながら元の形に戻る。
「だ・・・駄目・・・です・・・っ・・・そこ・・・は・・・」
残された理性が、その手の軌道を阻止しようと手を伸ばす。
だが、初の異性交遊にやる気全開の許楮の勢いと、自分の中にあるもう一つの感情は理性には止められなかった。
そして、濡れた陰毛が女の秘所に侵入してきた許楮の手に纏わりつく。
「・・・ん?ここ、割れ目になってるだか?―――じゃあ、ここにおいらのこれを入れるだな・・・なるほどぉ」
「ちっ・・・違い、ます・・・それはまだ・・・先のことで・・・」
「え?じゃあどうするだ?」
「その・・・まずは・・・そこを少し・・・な・・・なで・・・な・・・」
そもそも快感で呂律が回らなくなっているのに、恥ずかしさまでもがそこに加わって、稲姫はもう何を言っているのかわからない。
「な・・・な・・・なんだぁ?・・・そうだぁ!また舐めればいいだな!」
「ちっ・・・違っ・・・ああっ!?」
本来なら「撫でる」と理解してほしかったところを「舐める」と誤解されてしまった稲姫は、予想外の刺激に叫ぶ。
顔を股間に近づけ、舌を出し、懸命に割れ目を舐め回す許楮の顔は真剣そのもの。
だが、舐められている稲姫のほうはどうにもむず痒い。
今まで何物も触れたことの無い稲姫の聖域が、いくら優しく心許せる許楮とはいえ、男の舌によって犯されているのだ。
それは確かに恥辱だった。だが、同時に背徳感を伴う快感でもあった。
そうこうしている間に内側の筋にまで這入った舌が、全力でのたうちまわる。
「あ・・・っ・・・!んぁ・・・ぁ・・・ぁんっ・・・あっ・・・あぁん」
愛液で湿った膣内に、更に許楮の熱い唾液が流れ込み、まるで沼のようにぬめぬめとした水溜りが膣内に広がる。
「んぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・い・・・入れて・・・」
嬌声の合間に、消え入りそうな声で稲姫が叫ぶ。
「んむっ・・・わかっただ・・・」
その声に呼応して許楮が膣から口を離す。唾液と愛液の混ざり合った液体が、許楮の口に糸を引いて粘り付く。
そして大きな腰を浮かせ、巨体の股間にぶら下がった自らの肉棒を両手で掴む。
稲姫の濡れそぼった膣口を前にして許楮の肉棒もまた、自らの鈴口から流れ出た先走りでぬめり、光っている。
両手で掴んだその肉棒を膣口にそっとあてがい、入り口の感触を確かめる。
「―――入れるだよ・・・?」
「・・・はい・・・」
ゆっくりと、そして慎重に、許楮は膣口に肉棒を突き入れた。
「うっ・・・痛っ・・・」
未だ男を受け入れたことのない膣は、凄まじい力をもって許楮の比較的短いが、通常よりは太い肉棒を押しつぶそうとする。
その抵抗を押しのけ、肉棒は奥へと侵入していく。
止め処なく溢れ出る愛液と、許楮の唾液が潤滑油の役割を果たし、初めての痛みを少しだけ軽減する。
しかし処女喪失の禊は、それでも稲姫を苦しめるには十分なほどの痛さだった。
「・・・稲姫の中・・・すごい・・・あったかいだよ・・・」
稲姫の足を自らの肩に乗せ、股間を稲姫の股間に押し付けながら許楮が呟く。
「あぁ・・・許楮――様・・・熱い・・・」
痛み、そしてその中に隠された快感に必死で耐えながら、稲姫もその声に応える。
やがて、稲姫の中奥深くへと挿し込まれた許楮の肉棒が、稲姫の底を突いた。
「くっ・・・!」
稲姫の秘所を守っていた処女膜が破れ、ついに稲姫の純潔は無くなった。
その証のように、赤黒い血が膣から溢れ、地面に染み込んでいく。
「!・・・痛い・・・だか?」
それを見て驚く許楮に、稲姫は息も絶え絶えに応えた。
「だい・・・じょうぶ・・・です・・・許楮・・・様・・・」
「稲姫、・・・おいら・・・もう我慢できないだ・・・一気に・・・いくだよ・・・!」
「・・・はい・・・!」
そのやり取りを合図にして、怒涛のような突きが稲姫の股間に襲い掛かった。
「あぁっ!あっ!んっ・・・んぁぁっ!ん・・・はっ・・・あ・・・あ・・・あああっ!」
稲姫の奥深くまで届くように、許楮はひたすらに腰を動かし続ける。
遅い。だが、一発一発が重い。正に戦場での彼の戦いぶりを表したかのような抜き挿しが、二人をどこまでも高く導く。
「稲姫っ・・・好きだぁ・・・大好きだぁっ!!」
稲姫も、無意識の内に快感を求めて腰を振る。時に挿入の瞬間に合わせて、また時に契機をずらして。
森の静寂を破るように響く、濡れた膣口と猛り狂った肉棒が擦れ合うぴちゃぴちゃ、という淫猥な水音。その音ももう二人の耳には届かない。
やがて、未体験の電撃が二人の脊椎をほとんど同時に奔り抜ける。
「稲姫・・・おいら・・・もう・・・」
「はぁっ・・・はぁっ・・・許楮・・・様っ・・・あぁ・・・駄目っ・・・!」
「うっ・・・うわあっ!!!」
「あ・・・あぁ―――――――――っ!!!」
二人は獣のような雄たけびを上げながら、ほとんど同時に果てた。
発熱した結合部から、白濁液と愛液が混ざった粘液が溢れ出す。
それと共に、許楮は稲姫の上に繋がったまま覆いかぶさり、二回目の、いや最後の接吻を交わした。
「結局・・・一匹も釣れなかっただな・・・」
空っぽの籠と釣竿を持って許楮が魏の陣に帰ってきたのは、夕暮れのことであった。
実際は稲姫と情事を交わしたせいで、釣りなどしているヒマは一瞬も無かったのだが、妙に律儀で生真面目な所がある彼は妙に沈んでいた。
「お!おぉーい!許楮ぉ―――!」
天地を震わすような大きな声にふと見ると、向こうから夏侯淵が駆けて来る。
「どうだ?釣れたか?」
「・・・いんやぁ。一匹も。やっぱりおいら農民だし」
「なぁんだ・・・っておいお前、何で釣れなかったのにそんなに嬉しそうなんだ?さてはまたなんかあっただろ」
「ふふっ・・・べぇつに?何にも無いだよぉ?」
おちょくるように返す。
「ホントかぁ?内緒にしといてやるから、言ってみろよ!」
そう言って夏侯淵は自分の耳に手を当てる。その掌の中に、許楮は小さく呟いた。
「――ありがとな、夏侯淵・・・」
「―――へ?」
「じゃあな、夏侯淵!また明日!」
許楮はごまかして夕陽の方向へ走っていく。
「お、おいちょっと!待てよ!?―――――ま、いいか」
夕陽の中に映し出される、許楮の黒い影を、夏侯淵はいつまでも優しく見送っていた。
(稲姫・・・おいら・・・今日のこと、ずうっと忘れないだよ・・・)
もう二度と会えぬ麗しい少女に思いを馳せながら、許楮は少しにじんだ夕陽の中を、どこへというわけでもなく走り抜けた。
デブキャラ萌えとはちょっとずれてるけどせっかく書いたのでここにUPしてみました。
ほのぼのしてるけどちょっと切ない感じが出ていたら大成功です。
でも仲人に夏侯淵を使っちゃったばっかりに夏侯淵→許楮みたいな感じになっちゃったりしてもいます。
これは夏侯淵×許楮やるしかないか・・・?