未来の地球の担い手を育成
アース大学は1990年に中米のコスタリカに設立された創立20年の大学で、「湿潤熱帯農業大学」(スペイン語でEscuela de Agricultutura delaRegionTropicalHumeda)を意味し、その頭文字をとって「E・A・R・T・H・大学」と呼ばれています。
この大学の設立趣旨は「次世代の農業リーダーを育てる」こと。私立の非営利な国際大学として、農業技術と天然資源活用の分野で経営的側面を重視した教育を行い、経済的に自立し、社会に大きく貢献できる人材育成を目的としています。
学生たちは、コスタリカはもとより、中南米の各地域から教授たちの面接により直接選抜され、卒業後は指導者として、各々の国での農業改革と発展の担い手となることが求められています。また、学生の80%以上は奨学金を受けており、経済的に恵まれない若者たちにも積極的に教育の機会を提供しています。
アース大学EM導入の経緯
パンフィロ先生は、1994年にシンガポールで開催された比嘉教授の講演会に参加し、EM技術に様々な問題解決の可能性を見出し、アース大学への導入を決意しました。
その後、比嘉教授と、アース大学の担う役割と中南米でのEM技術の普及について協議をし、比嘉教授はEM研究機構から職員一名を客員教授として派遣することを約束。1996年に初代の客員教授となった新谷正樹氏(現EM研究機構取締役研究部長)がアース大学に着任し、以来、14年間、EM研究機構から常時一名が客員教授として派遣され、EM技術の指導を行なっています。
「教育」「研究」「生産」の分野で開かれた教育を目指す
教育の分野では、20カ国以上から選抜された教授陣が農業技術の教鞭をとっています。EM技術も授業に導入されていて、現在は1年生の必修科目にもなっています。また、EM技術講習への要望は多く、学生のみでなく、外部からの聴講生を対象にEM講習会なども活発に行われています。
研究分野では農薬を使用しない病害虫の防除方法や、生産性向上のための有効な有機肥料開発など、新しい技術も積極的に導入。バナナのブラックシガトカ病や、カカオのモニリア病対策には、EM技術の応用研究が行われ、試験の結果、前者には高い抑制効果を示し、EM使用による抗菌剤の使用量減少が実証されています。
また、畜産分野では、家畜に寄生する”ダニ”の抑制試験や、バイオガス発生対策などにもEMが活用されています。
さらに生産分野では、商業ベースでの大規模生産の研究が進行中で、大学内にある約800ヘクタールの商業農場の大部分ではバナナ栽培が行われています。このバナナも、EM使用により薬剤の使用を通常の半分以下にすることに成功し、減農薬バナナとしてアメリカなどを中心に輸出されています。
EMを学び、世界各地で普及へ
アース大学では、1年生全員がEMの基礎的な技術を学び、2年次には模擬会社経営の実習があり、EM石鹸などのEM技術を活用した商品の製造販売も行われています。3年次は、3学期(9~12月)全てを使って、コスタリカ以外の国で農業研修を行うという海外研修が実施され、毎年多くの学生が、海外のEM拠点で研修を受けています。
さらに4年次には「卒業論文」として毎年、20件前後のEM関連の研究論文が提出されており、前述のバナナ・カカオの病害虫抑制はもとより、EM活性液を使用した発芽促進試験、パイナップル害虫へのEMの効果、浄化槽汚泥の有機堆肥化試験など幅広い研究が発表されています。
EMは現在、中南米のほぼ全域において普及が進められています。その中でも、アース大学の卒業生は現場指導のできる即戦力として、ネットワークを構築し、タイムリーな情報交換と情報共有を進めています。また、多くの地域で、アース大学の卒業生がEM生産販売会社を設立し、EM普及を進めています。
中南米におけるEMの普及は、毎年卒業していく学生たちがEMをよく理解し、出身国で「EMなら問題が解決できる」と活用を実践してきたからこそ。ホセ・ザグール学長は、「EMの歴史はアースと共に」と最大級の賛辞を贈ってくれています。
今後も、アース大学はEM関連団体・企業等と連携を強め、人材育成を軸に中南米における持続型の有機農業と環境保全を推進していきます。