概要

Wii初のスパロボ。『GC/XO』やスクランブルコマンダーシリーズに続き、戦闘アニメに3Dを採用。 従来のスパロボと全く違ったシステムを採用し、作業ゲー・リセットゲーからの脱却が図られている。

「20代スタッフの意見を参考にした」という事から、人気がありながらも世界観や版権の問題で参戦が絶望視されてきた90年代の作品群が大挙して参戦している。

★マークは新規参戦作品。

   マジンガーZ
   グレートマジンガー
   ★新ゲッターロボ
   ★獣神ライガー
   機動武闘伝Gガンダム
   銀河旋風ブライガー
   戦国魔神ゴーショーグン
   絶対無敵ライジンオー
   ★元気爆発ガンバルガー
   ★熱血最強ゴウザウラー
   ★完全勝利ダイテイオー
   ★NG騎士ラムネ&40
   ★疾風!アイアンリーガー
   ★覇王大系リューナイト
   バンプレストオリジナル 

当時から人気の高かった『NG騎士ラムネ&40』『覇王大系リューナイト』に加え、エルドランシリーズの4作品 *1 が勢揃いし、 さらにほぼ人間サイズの『疾風!アイアンリーガー』までもが参戦という直撃世代には豪華すぎるラインナップにファンは狂喜乱舞した。

「人類間戦争を描かない作品のみが参戦」「リアル系作品が存在しない *2 」というスパロボは史上初である。 特徴 システム面

   マップ上のマス目の区切りがなくなり、ユニットを360度自由に移動させることができるようになった。
   ユニット毎にマップ上のサイズ差が表現されるようになっている。
       大型ユニットは同じ移動・攻撃範囲でも小型ユニットに比べ範囲が広くなる一方、小型ユニットは障害物や敵ユニットなどの隙間を通りやすいというメリットがある。
       変形・合体によりサイズが変化するユニットもいる(場所や空きスペースによっては変形・合体できない)ので、重要な要素である。
   ユニットの運用も大幅に変化している。
       母艦(本作では「母船」)に搭載してターン経過しても気力が減らなくなった。
       出撃枠が「一度に出せるユニット数」という概念になっており、出撃中のユニットを戦艦に搭載することで他の機体に交代させられる。
           『J』の交代システムと『SC2』の撤退・増援とは違い、何度でも出撃可能。
           全体的に燃費が悪く設定されていることもあり、多数のユニットを活用していくことが求められる。
       修理によって回復する量はパイロットレベル依存ではなく固定値となっている。
       補給についても同様だが、使用されたパイロットの気力が低下せず、デフォルトで移動後使用可能となっている。
       能力や武器を一定数改造すると、ユニットの特殊能力のレベルも上昇するようになった。
           修理や補給で回復できる量も増加するため、改造が非常に重要なファクターとなっている。
       消費タイプのアイテムは使っても無くならなくなった。使用してもそのマップが終了するまで使用不可能になるだけ。
       精神コマンドがレベル制(最大Lv3)になり、パイロットのレベルアップとともに効果が上昇するようになった。
           レベルアップによってSP消費が減少するもの(「加速」「ひらめき」など)と、上書きされず使用時にそれまでのレベルから選択できるもの(「不屈」「熱血」など)が存在する。
           また、精神ポイントはシナリオ開始時点では最大値になっておらず、ターン経過やダメージを受ける等で増加する。「リュープリースト・バウルス」の回復魔法などでも回復できるため、事実上無制限に精神コマンドが使えるようになった。
           その上、敵ターンの戦闘開始前にも自由に精神が使えるというこれまでの常識を覆す仕様。
           かといって難易度が低下したわけではなく、それを踏まえた上で作られておりバランスは極めて良好。これまで通りの戦い方をすると苦戦するようにさえなっている。中断メッセージでゴールドアームも言っている通り、説明書をよく読んでシステムを理解することが重要と言える。
       今作で初登場した精神コマンドは、「加速」の効果を味方1体に与える「追風」。「加速」を持たないユニットも足並みをそろえやすくなった。
   多彩な武器属性。
       建物などの立体的な地形を挟んで攻撃する「曲射」(地形を挟んでの攻撃はこの特性がある武器でしかできない)。
       空を飛んでいるユニットに攻撃する際、補正がかかる「対空」。逆に地上のユニットに対する「対地」。
       ユニットを一直線に移動させ、移動範囲内の敵ユニット全てに攻撃する「突破」。簡易版MAPWと考えればあながち間違いではない *3 。
       攻撃した相手を後ろに移動させる「押出」。さらに押し出した先に他のユニットや段差があると追加ダメージが入る。
       他、追加ダメージや反撃封じ、援護無効化などの多彩な武装がある。
   敵を包囲することで命中率やダメージに補正がかかる「包囲システム」。
       四方を包囲すれば常時ダメージ二倍となるためHPの高い敵も倒しやすくなるが、敵も包囲されると上記の「突破」で脱出を図るためこれで勝ったと安心はできない。また敵の攻撃にも適用されるため、味方は包囲されないよう注意する必要がある。ちなみに「無頼」の特殊技能を持っていると無効化される。
   攻撃を回避する度に回避率が低下する「連続ターゲット補正」は健在。包囲システムもあるため単騎無双は余計に厳しい。
   『AP』に導入された乱数保存システムも搭載されている。これによりリセットプレイが殆ど意味をなさない。
   今回は『COMPACT3』以降久々に宇宙戦が存在しない(宇宙に出る展開はある)。

演出面

   戦闘アニメは、通常技は画面切替のない簡易アニメを、必殺技などは従来の画面切り替えによるアニメを採用。
       戦闘演出は原作重視のものが多く、特に『元気爆発ガンバルガー』の必殺技系の再現度は群を抜いて高い。2Dで問題になっている「くどさ・冗長さ」とも無縁である。
   BGMも非常に素晴らしい出来栄え。原曲と比べても遜色ないものが多く、中には原作BGMと勘違いされるほど作品に合ったオリジナルBGMもあり *4 、多くのプレイヤーを唸らせた。
       今回制作を担当した有限会社さざなみは『XO』でも戦闘とBGMを担当しており、こちらでも再現率の面で高い評価を受けている。
   作品間のクロスオーバーも大小問わず多い。
       『覇王大系リューナイト』の世界で、今回の主な舞台の一つであるアースティアに『NG騎士ラムネ&40』の世界設定が組み込まれている。
       原作終了組は基本的に「子供達や後輩を見守るよき大人」として描かれており、要所で渋い活躍を見せてくれる。
   『獣神ライガー』のとあるトラウマ回が中盤で再現されている。流石に放映時そのままの再現はできなかったが、それでも多くの原作ファンのトラウマを再発生させた。
   本作のオープニングテーマ「Wild Succession」は、従来のJAM Projectではなく美郷あき氏が担当。90年代をイメージした曲風で作品とマッチしている。

バンプレストオリジナル

   オリジナル主人公「稲葉 駆(いなば かける)」は熱血系高校生と基本に忠実な路線で、言動の矛盾や嫌味が無い。
       その分影は少々薄いという声もある。まあ自軍が「小学生か大人か」という非常に偏った年齢構成のため、高校生くらいの年代である主人公を絡ませにくいのはしょうがないのだが。
       CVは新人声優である川原元幸が担当。技の叫びなど演技面では概ね好評である。
       乗機の「シグザール」はリアル系寄りの近接戦闘型ユニット。物語上でアームドファントマというアイテムを集めることで強化されていく。
   駆の弟である「稲葉 天音(いなば あまね)」はバンプレストオリジナルでも珍しいショタキャラ。小学4年生という立場からガンバルガーのキャラとラムネと同じ学校に通っているという設定。
       本作の母船となる「イオニア」に生体ユニットとして取り込まれてしまう。アームドファントマが無い状態では生体ユニットの命が吸われていくため、早急にアームドファントマを集めることが駆の目的となっている。
   本作のヒロインである「シャーリィ・ルノイエ」は元エルンスト機関所属で、アームドファントマ回収のために一時は駆達と敵対する。
       現在かなりの売れっ子声優である伊藤静が演じている。スパロボ出演を熱望していたと言われ、晴れて念願が叶うこととなった。
   本作のオリジナル敵組織である「エルンスト機関」はアースティアに存在し、主人公達と敵対はすれど断じて悪の軍団ではない。むしろやり方がやや暴走気味(そのせいでアイアンリーガーの面々や、ドモンとの間に因縁がある)なだけで、極めて真っ当な集団である。そのため途中で和解し、協力関係になる。
       なお、彼らによるアイアンリーガー大量誘拐の影響で、今作ではアイアンリーグが中止になっている。
   また、アースティアで登場するオリジナルキャラクター「ザンパ」は、『ラムネ&40』か『リューナイト』のキャラと勘違いされるほど世界観に馴染んでいる。

問題点 システム面

   敵ユニットの詳細な能力が見れなくなった。武装なども不明なため、戦って覚えるRPG的なゲームになったとも言える。
   ソフトリセットができない。
       乱数保存システムによってリセットの意義が薄れた上、敵ターンでも精神を使えるという仕様のおかげで、あまり気にならないところではある。
       一応WiiリモコンのHOMEボタン→リセットで同様のことができるが、その度にスキップ不可のクレジットを見る羽目になり復帰に時間がかかる。
   敵のAIの思考が悪い。予想外の行動(まっすぐに行けばすぐに交戦できるのに、反転して岩など進入不可の地形の反対側に行こうとする等)をされ、クリアまで思わぬ時間を食うことも。
   ユニットの乗り換えができない。しかし、今回の参戦作品の中で乗り換えが可能だった作品がマジンガーシリーズくらいなので仕方がないと言える。
   精神コマンドごとのレベル制の影響か、精神コマンドの総数が20個と最近のスパロボとしては少なめで、各キャラクターが覚える精神コマンドの数も少ない(一人乗りだと4個、複数搭乗のユニットにおいては一人2~3個)。
   一部の武器属性が強力すぎる。
       具体的には「対空」。空中の相手に対して最大2倍のダメージを与える上、反撃を完全に封じるという鬼仕様。敵も平気で使ってくるため、基本的に飛行可能機体でも地上に置いておく方が安全である。むしろそうしないと普通に撃墜される。
           空中移動の場合、地上いた場合の進入不可の地形に配置でき、地形無視の移動で「包囲」の位置取りが大幅に楽になるため、飛行にメリットが全く無いというわけではない。
       また、追加ダメージを与える「ファイア」もなかなかに壊れている。運次第だが最大で2000もの追加ダメージを受けるため、後半ステージではHPに常に気を配っておく必要がある。
   「Wiiならではの直感操作」をうたいながら実際には単なるアナログスティック操作であり、クラシックコントローラ推奨、GCコントローラ非対応というチグハグすぎる仕様となっている。
   スパロボではよくあることだが、敵の増援が多めで1話の攻略が長引きやすい。
       特に第25話は2話分の内容を1話に詰め込んだような構成となっており、とにかく長い。
   隠しユニット・パイロットがたった3つとかなり少ない。
   MAPの使い回しが非常に多い。
   シナリオのスキップができない。
   ユニットの移動で速さが調整できないためか細かい操作が出来ない。ぎりぎりのスペースで配置させようにも思うように行かず少し苛立ちを覚えるところがある。推奨のクラシックコントローラーを使うことによりある程度緩和されるが本体付属の機器でも何とかして欲しかったところ。

演出面

   カットインがあまり綺麗ではない。どうやらムービーファイルを流しているためらしい。
   戦闘シーンは、「やはり3Dより2Dが…」という意見も多い。
       2Dは初代から数えて20作目(派生作品も含めたら更に多く)の『α』で一つの終着点に着き、現在はもはや完成系にあるといえるほど優れたものになっているのに対し、3DはDC版『α』から数えてまだ4作目に過ぎずまだまだの部分があるだろう。ファミ通レビューでも軒並みマイナス材料としているが、この点はこれから次第。
   エルドランシリーズのロボットやゲッターロボの合体ムービー、リューナイトのクラスチェンジのムービー等が用意されていない。
       ライジンオーの合体ムービーは『XO』にはあったのだが……。
   戦闘BGMのボリュームが小さい。オプションでBGM音量を最大にしても台詞や効果音にかき消されてしまう程。

参戦作品について

   容量の問題か、全般的に作品ごとのユニットの種類が少ない。平均的に敵組織一つにつき雑魚が2~3種類程度しかいないので、新鮮味がない。
       『Gガンダム』の味方側では主人公のドモンしか登場しない。今回は合体攻撃が無くても単体で十分強いレベルではあるが。
   発売前から賛否両論だった *5 『アイアンリーガー』について。
       本作では何故かアースティア側に組み込まれているため、地球のスポーツがアースティアにも存在するという謎の世界観に。この事に対する説明も無い。
       アイアンリーガー達は基本的に敵にボールをぶつけて戦う。特にマグナムエースとゴールドアームの場合は仕方ないとはいえデッドボールで敵を倒すため、違和感が酷いことになっている。
           アイアンリーガー未見の人の為に言っておくと、この作品はラフプレーばかりの相手チームを正々堂々打ち負かすというストーリーである。
       シルバーキャッスルのメンバーで登場するのはマグナムエースとマッハウインディのみで、他は一切登場しない。代わりとばかりにゴールド兄弟と、はぐれリーガー編に出て来たアイアンボウラー姉妹が登場する。
           シルバーキャッスルのメンバーの中には、マグナムエースやウィンディとは違い、明らかに戦闘向きなキャラが3名ほどいる *6 ため、落胆の声は強かった。

総評

シリーズのマンネリ化からの脱却、そして3Dスパロボの進化が着実に味わえる作品となっている。 特にシステムの変更は賛否両論あるものの、3Dを生かした新しい形を提示できたことは非常に大きい。 余談

   『熱血最強ゴウザウラー』の敵キャラクター・ギルターボを演じた安西正弘氏は、糖尿病やそれに付随する健康問題のため1997年から休業状態であったが本作で声優業に復帰、原作ファンにとっては嬉しいサプライズとなった。
   本作は1人で複数のキャラを演じている声優が多い。特に林原めぐみ氏、島田敏氏、梁田清之氏の3人は1人で5役以上を演じるという快挙を成し遂げている。
   予約特典は参戦作品の設定画や原作漫画のシーンを使った作品紹介、スタッフや声優のインタビュー、放映当時の裏話や現在の心境、描き下ろしイラストなどが収録された内容の濃い小冊子であり、ファンからも好評を持って迎えられた。
       この小冊子において、『戦国魔神ゴーショーグン』の構成・脚本家である首藤剛志氏が「ゴーショーグンの小説はまだ終わっていません」「何とかエンドマークを出したい」と続編の発表に意欲的なコメントをしていたのだが、2010年に首藤氏が急逝した事により残念ながら未完に終わってしまった。
       伊東岳彦の寄稿で「スパロボ嫌いは嘘」「ゼーガペインやアウトロースターの出演オファーも待っている」との意向が明らかになった。「○○(原作者)はスパロボ嫌いだから出演できない」という噂に一石を投じたエピソードでもある。