INTERVIEW

●「AKIRAちゃんが薫を演じてくれてすごく嬉しかった」──新條まゆ

twoshot-01

新條まゆ先生(以下新條)  今日はよろしくお願いします。(改めてAKIRAを見て)きゃ、めちゃくちゃ格好良いですね……!!

AKIRAさん(以下AKIRA) ありがとうございます(笑)。実は"初めまして"なんですよね。

新條 えっ、初めて!? そっかぁ! 私、勝手に会ってる気がしてました(笑)。DISACODEのメンバーにも会ってるし、AKIRAちゃんとはずっとtwitterでやり取りしてたから、つい会った気になってたというか。

──どんな経緯でお二人は知り合ったんですか?

新條先生マネージャー まず私が仕事の関係で先にAKIRAちゃんと知り合ったんです。そのときは演劇の現場だったんですけどAKIRAちゃんは異彩を放っていてすごく印象的だったんですよね。で『愛を歌うより俺に溺れろ!』(以下『愛俺』)が映画になることが決まったときに私とプロデューサーの間で「薫の役はAKIRAちゃんに……」「ですよね!」みたいな会話があって。コラボレーションでブラウエローゼンのシングルも出したかったし、きちんと歌える人が良かったので、オーディションもなにもなくストレートに薫役をオファーしたんです。で、そのときに新條先生にAKIRAちゃんのビジュアルを見せたら──。

新條 「カッコいい!」って一目で気に入っちゃったんです(笑)。薫は女の子からの人気がすごくあって、インパクトのあるキャラだったんですけど、AKIRAちゃんを見たときに「イメージにピッタリ!」って。

AKIRA ありがとうございます。オレは高校時代から『愛俺』を読んでいたので映画の話をもらったときは「マジで!?」ってビックリしちゃって。当時男装のギャルバンをやってたんで、『愛俺』はメンバー内で読み回ししてたんですよ。新條先生のマンガは他の作品も読んでいたのでめっちゃテンション上がりました。

新條 えええ~!? そうだったの!? 

AKIRA はい(笑)。だからすごく嬉しくて。でも「薫役」って聞いたとき「薫っていきなりいなくなるんじゃないの!?」って思ったりして(笑)。※原作の第一話で薫は親の転勤でニューヨークへ渡米する

新條 (笑)薫は映画のほうではブラウエローゼンのボーカルとして残したんですよ。映画では設定はいろいろと変えたんです。
薫はニューヨークから帰ってきたあともすごく人気があったんですよね。他のキャラは女の子っぽいところがあるんですけど、あのコだけ完全なる男の子だったというか……。たとえば沖田愛ちゃんの場合、中身はただの腐女子っていう感じだったんですけど(笑)、薫の場合は外見も性格も男の子っていうか──"キレイな男の子"っていうイメージで。だからAKIRAちゃんが薫を演じてくれてすごく嬉しかったな。


●「自分が出てるシーンは直視できませんでした。恥ずかしくて(笑)」──AKIRA

──完成した映画はもう観られましたか?

AKIRA ハイ。すごく面白かった。キャラはそのままだけどマンガとは違ったストーリーで展開していくところが良いなと。でも自分が出てるシーンは直視できませんでした。恥ずかしくて(笑)。

新條 そうだったんだ(笑)。試写会で水樹役の大野いとちゃんが一緒だったんですけど、上映後にいとちゃんが頭を抱えてて(笑)。

AKIRA いとちゃんっぽいな(笑)。でも俺もそんな感じだった。

新條 そうだったんだ(笑)。私は締め切りがあって撮影現場にはぜんぜん足を運べなかったんですよ。……ちょうど年末進行の季節だったんですよね(苦笑)。
ホントはライヴのシーンにエキストラで参加する予定だったんですけど、全然動けなくて。だから一切情報がない状態で映画をいきなり観たんです。

──いかがでしたか?

新條 マネージャーが先に観たんですよ。で「どうでした?」って聞いたら一言だけ「観たほうが良いです」って。だから「え? どういうこと?」って不安になってたんですけど……観にいったら、もーくだらないくらい面白くて! ホントにすっごくくだらないんですよ!(笑)

AKIRA そうですね(笑)。

──へ? くだらない?

新條 ハイ。「くだらない」っていうのが最高のほめ言葉なんですよ(笑)。「バカだ、コイツら~!」って。
最初監督には「80年代アイドル映画みたいなノリにしてください」って話をしてたんですよ。高校生くらいの若い年代の人が観ると「キャー! かっこいい!」って素直に思えるのに、大人が観ると「こんなことあるわけないのに~」って言いながらププッて笑っちゃうような……そういうノリを大事にしたかったんです。要は「格好つけないでください」ってお願いしてたんですね。
でも想像以上に素晴らしかった。もー上映が終わった瞬間に拍手しちゃって。蘭役の古川雄大くんも、パパラッチ役のオタク少年をフラミンゴさんたちも、ホンットに気持ち悪くて(一同笑)。あ、これも最高のほめ言葉なんですよ。「こんなに格好良くて気持ち悪い変態がいるんだ!」ってビックリしました。
でもやっぱり(役者が全員)格好良いので、何も言うことはなかったですね。ヒロインのいとちゃんの初々しさもすごく可愛かったし、このコだったら(白石秋羅役の)カラムくんのファンにも受け入れられるんじゃないかなって。

AKIRA いとちゃんは現場だと基本いじられ役でした(笑)。監督に「水樹と薫は幼馴染ですごく仲の良い設定なんだから仲良くなりなさい」って言われてたので、いとちゃんをめっちゃ口説きにいってたんですよ。「いとちゃん、今日も可愛いよ」とか(笑)。でもいとちゃんは人見知りなんで「やめてくださいっ! キライ!」って。

新條 うわっ、そのエピソード萌える!! いとちゃんツンデレすぎ!

AKIRA 何回も「もう知らないっ!」って言われましたよ(笑)。

新條 なにそれ~すごくキュンッてくる!(笑) 

──他の役者さんとはどんなやり取りがありましたか?

AKIRA 沖田愛役のシューちゃん(吉原シュート)とは普通に友達って感じでしたね。湯浅恵役のシシドもそのまんまっていうか、マンガどおりの性格で。木寺桃子役のはる(河村春花)はお母さんみたいなしっかりした性格で、最終的にはおばあちゃんって呼ばれてました(笑)。
カラムは現場にいるどの女子よりも可愛かったです(笑)。女の子じゃないって頭では理解してるんですけど、すっごい可愛い表情や仕草をしたりするから「お前可愛いの分かってんだろ!」ってツッコミたくなる感じ(笑)。でも本人は可愛いって言われるのはイヤだったみたいだけど。

──AKIRAさんのなかで特に印象に残ったシーンはありますか。

AKIRA やっぱり最後のライヴシーンじゃないですか? なんとも説明しづらいですけど……すごく感動的ですよ。
ライヴシーンはリラックスして演じられたというか──演じるというか、そのまんまという感じでした(笑)。エキストラでファンのコも参加してくれてたし。
ただ劇中の怒るシーンは大変でしたね。基本ブラウエローゼンのメンバーはふざけてるシーンが多いのに薫は怒ってばっかりで。俺自身あんまり人に怒鳴るようなタイプじゃないのでギャグのシーンは「いいな~。みんな楽しそうで」って思って観てました(笑)。

 

●「作詞のクレジット表記は『愛俺』の秋羅から取ってるんです」──AKIRA

──劇中で使われている衣装についても教えてください。

新條先生マネージャー ステージ衣装をh.NAOTO・Sixh.がプロデュースしてくれていて、制服はALICE and the PIRATESが作ってくれたんです。女子の制服はBABY,THE STARS SHINE BRIGHTが作ってくれて……。

AKIRA 俺が着てた衣装は自分でデザインしたBABYとのコラボの衣装で、そのまま使いまわしました(笑)。そもそも髪型も(薫と)一緒だったから撮影のときは染めただけだし、素の自分に近かったかも。

新條先生マネージャー 映画のスタイリストがAKIRAちゃんがモデルを務めている『KERA!』のスタイリストもやっているコなので全部分かってくれてるコなんですよ。だから衣装の面もすごくやりやすかったですね。

新條 AKIRAちゃんの衣装もすっごい可愛かったよね。
実はマンガの中でもh.NAOTOを着ている設定だったんですよ。資料用にh.NAOTOの服を大きいタンス3つ分くらい買って……うちのお母さんに「あんた歳を考えなさいよ!」って言われながらサイン会のときに着たりして(笑)。
もともとh.NAOTOの服を着ている男の子や男装する女の子が好きだったんですよね。AKIRAちゃんみたいにボーイッシュで、パンクとゴシックが混じったようなスタイルに憧れてたんです。
逆にAKIRAちゃんは可愛らしい女の子になりたい!って時期はなかった?

AKIRA なりたかった時期もありますよ(笑)。俺、女の子の好きなタイプはフワッとした森ガールで。あれに憧れてああいう服を買った時期もあったんですけど、鏡を見たらあまりにもグロくて(苦笑)。耐え切れないんでヤメました。ヒールを履くと170センチくらいあるから、ちょっと女の子っぽい服を着るとニューハーフになっちゃうんですよ。

新條 森ガールって意外ですね。じゃあスカートを穿きたいみたいな気持ちも特になかった?

AKIRA ないですね。スカートは愛でるモノだと思ってます(笑)。

新條 アハハハ(笑)。それ名言(笑)。それにしても格好良い人には格好良い人なりの悩みがあるんですね。女の子にモテるってすごく憧れるので、取って代わりたいなって思っちゃう。ブラウエローゼンの立ち位置っていうのはわたしの憧れなんですよ。つまり私自身が水樹に憧れてるんです。

AKIRA だからかもしれないんですけど、水樹の気持ちってこっち系の人だとすごく共感しやすいんですよ。
『愛俺』は笑えて共感できるところがすごく好きです。

──では薫とAKIRAさんの共通点ってどんなところだと思いますか?

AKIRA 薫は俺から格好悪いところを全部そぎ取った感じっていうか……外ヅラは俺みたいな感じなんじゃないかな?っていうか。

新條 AKIRAちゃんの格好悪いところ?

AKIRA 俺は普段からおちゃらけたりフザけたりしてるんですけど、薫はそういうところないじゃないですか。音楽一本ですって感じというか。
俺はそういうマジメなところがあんまりないんで……。

──いやいや、AKIRAさん率いるDISACODEのニュー・アルバムには音楽に対する熱い気持ちが入ってるじゃないですか。新條先生も「こんなに本格的でハードな音を出せるなんて驚きでした」って絶賛のコメントを寄せていて。

AKIRA コメント、ありがとうございました。

新條 いえいえ、ホントにかっこよくてビックリしました。音に厚みがあってハードで「こんなに本格的な音が出てくるんだ!」って。
でもメロディーはハードってわけじゃなくてすごく聴きやすくてメロディアスでポップなんですよね。

AKIRA 嬉しいな、ありがとうございます。
もとの原曲自体そんなにハードじゃないんですよ。自分のキーが高いから(作曲者に)「低音がしっかりした重みのある音にしてくれ」って注文してるんです。だからもっとポップに作ろうと思えばポップな楽曲になるんです。
こっちで作った曲に関してはピアノでパーッと作って、アレンジは人に任せて……っていう感じで。

新條 歌詞はAKIRAさんが書かれてるんですか?

AKIRA そうですね、全部俺が書いてます。
普段の作詞のクレジット表記はAKIRAじゃなくて"須王秋羅"なんですけど、実はこの漢字は『愛俺』の秋羅から取ってるんです。

新條 ええ!? そうだったの!? すっごく嬉しい。

──映画とDISACODEの世界観はリンクするモノがありますよね。アルバムの話もガッツリ聞きたいですね。

AKIRA いや、もう話すコトないっす(笑)。
今話したことが全てっていうか。「とりあえず聴いてください」っていう感じですね。

●「AKIRAちゃんのライヴにもぜひ行きたい」──新條まゆ

──AKIRAさんのなかでアーティスト、モデル、役者の切り替えってあるんですか?

AKIRA 特にないですね。バンドとモデルのキュラクターは一緒なので悩むこともないし、どちらかというと息抜きにモデルをやる感じ。12歳からモデルをやってるので、写真を撮られるのが一番ラクな状態なんですよ。
ただ舞台は大変だけどね。だって『花咲ける青少年』ではいきなり14歳の女子の役っていう(笑)。演技も舞台も初めてだったのに主演だったからビックリしました。

新條 初めてなのに主演に抜擢されるってコトはそれだけ才能があったってコトですよ! 『戦国 BASARA2』の舞台も本当に楽しかった~。上杉謙信役、素晴らしかったです。ゲームで謙信役を演じている朴(璐美)さんの声にも似てて「すご~い!」って。

AKIRA もともと朴さんの声が好きなんで、めっちゃ聞き込んでたんですよ。でもゲームでは『BASARA 3』しかやったことなくて……3だと謙信があんまり出てこないんですよね。だから謙信ルートになるまでずっとやりこんで(笑)。

新條 そうだったんだ。私は逆に2までしかやってなかったので三成が新キャラだったというか。やりたかったんですけど、時間がなかったので……でも最強データは持ってるんですよ。だからなんなくクリアはしてるんですけど(笑)、そういうデータがなくプレイしたら30分で伊達政宗を殺しちゃって(苦笑)。それくらいゲームオンチなんですけど、『BASARA』が大好きなんです(笑)。
今度AKIRAちゃんのライヴにもぜひ行きたいんですよ。8月25日のワンマンライヴ(「百鬼夜行2012~原宿 モノノケ†NIGHT~」@原宿アストロホール)は……もしかしたら行っちゃうかもしれない。

AKIRA ぜひ遊びに来てください。ちょっと恥ずかしいけど(笑)。

新條 やっぱりライヴをやっているときが一番楽しいですか?

AKIRA そうですね。ライヴがいちばん楽しいし、素ですね。でもバンドは辛い(笑)。

新條 え、そうなの? 

AKIRA はい、すべて辛いですよ(笑)。ライヴのために細かいことを全部自分で決めなきゃいけないし。でもライヴのために頑張るっていうか。

新條 ああ、分かるかも。それってきっと私が「原稿が全部辛い!」っていうのと一緒だよね(笑)。
でも「面白かったです」って言われると、もうすべてが救われるっていうか。

AKIRA そうそう。まさにそういう感じです。

新條 そうかぁ……。また改めていろいろ話を聞きたいな。今度は映画の打ち上げでカラオケも行きたい(笑)。

AKIRA ハイ、ぜひ行きましょう! 

●インタビュー 逆井マリ