被曝検査は新たなステージに [12/05/21]
坪倉正治
南相馬市立総合病院で行われている内部被曝検査の結果が、5月15日にアップデートされました。 去年の9月から今年の3月末までに検査を終えた約1万人の方々の検査結果がまとめられています。今回の結果には、キャンベラ社製のホールボディーカウンターで行った検査のみが含まれています。
傾向は、以前の公表と大まかには変わりません。徐々にセシウムが検出される人の割合が減ってきています。セシウムは徐々に排泄されて行くこと、および慢性での被曝(検査直前の数カ月での被曝)がかなり低く抑えられていることを示しています。
上記のページの図3(下のグラフです)にあるように、今年3月時点の検査でのセシウム検出率は、子供で1%未満、大人で10%未満となりました。
こんなにも検出率が下がっている現在、ホールボディーカウンターの役割は、去年の3月の段階での被曝を評価することでは最早なく、今の日常生活での慢性的な被曝量の評価することです。
確かに、代謝の遅いご高齢の方々の現在の検査結果から逆算し、事故直後の被曝量を推定することは、まだぎりぎりできるかもしれません。しかしながら、代謝速度の速い、セシウムが2カ月弱で半減してしまう小学生では、事故直後に摂取したセシウムは、ほぼ排泄しきってしまっており、事故直後の被曝量を正確に推定することはもう不可能です。
事故直後の急性期の被曝量の推定ではなく、その後の生活における慢性的な被曝が、どの程度に抑えられているのかを明確にするための検査であるということです。
事故当初の被曝に関しては、いくつかの試算があり、その試算に基づいて「これくらいのリスクだから……」という話をすることができますが、検査がしっかり出来ていない以上、これからの(甲状腺エコーなどの)健康診断で守っていくべきだろうと思っています。
急性期の評価が正確にホールボディーカウンターで出来ないのであれば、もう検査する意味が無いという訳では決してありません。
ベラルーシでは、特に農村部で、事故後かなりの時間経過後に慢性的な被曝が増えてしまったという事実があります。ここは食品の流通体制や生活様式が全く異なる日本ですが、今後の慢性的な被曝を抑えるために定期的な検査が必要です。そして今後主な内部被曝の経路となる、食品の検査を強化することが重要です。
今回、上記のウェブサイトで、値の高かった方々の再検査結果も公表しています。一部で値が下がらなくなってきている方がいらっしゃいます。そのことに関しては次回解説します。
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坪倉正治(つぼくら・まさはる)
東京大医科研医師(血液内科)、南相馬市立総合病院非常勤医。週の半分は福島で医療支援に従事。原発事故による内部被曝を心配する被災者の相談にも応じている。
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