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氾濫原因めぐり今も深い溝 新潟・福島豪雨から1年

只見川の堤防の復旧工事を見守る斎藤さん(右)。奥は本名ダムで川中には流失したJRの鉄橋の残骸が残る=福島県金山町

 福島県会津地方を襲った昨年7月末の新潟・福島豪雨から1年がたった。同県只見、金山両町などを流れる只見川が氾濫し、1人が行方不明となり、住宅233棟が全半壊した。「氾濫はダムの放水が原因」と訴える被災者と、因果関係を否定するダム設置者。両者の対立は今も深まっている。JR只見線も全線再開のめどが立たず、生活再建の歩みは遅い。(会津若松支局・阿部信男)

 「ダムが出来る前は洪水はなかった」。13日、金山町の公共施設。町の被災者154人でつくる「只見川ダム災害金山町被災者の会」が、ダム設置者の東北電力の社員に詰め寄った。
 只見川のダムは10基。水力発電用などで東北電力が5基を持つほか、電源開発が同数のダムを設けている。豪雨で水位が上がり、全基が放水した。会は「放水で川の水量が増し、氾濫した」と主張し、両社と国、福島県に質問状を出した。
 東北電力などの回答は「放水は国の規定通りで不適切な点はない」「ダムの設計洪水量を超えた豪雨が原因」とダムの影響を否定し、双方の溝は埋まっていない。
 会の斎藤勇一会長(72)は前金山町長。戦後に次々とダムが設置される経過を見てきた。自宅は10基の一つの本名ダム(金山町)の近くにあり、床上浸水の被害に遭った。
 「町は首都圏、仙台圏への電力供給に協力してきた。災害時のリスクが地域に押し付けられる構図は福島第1原発事故と同じだ」と憤る。
 町は町民の意向を受け、独自にダムの専門家に調査を依頼するなど、ダムと水害の因果関係の検証に乗り出した。
 豪雨が交通網に残した爪痕もいまだに深い。只見線は只見川の鉄橋3本が流失し、復旧工事が続いている。只見(只見町)−大白川(新潟県魚沼市)は秋に運行再開するめどが立ったが、会津川口(金山町)−只見は工事も未着手で全線再開の見通しは立っていない。
 只見町には、只見線がこのまま廃線になるのではないかという危機感が漂う。昨年度の町内の観光客は原発事故の風評被害とのダブルパンチで前年度の3分の2の約15万人にとどまった。
 町は「観光への影響もさることながら、町は高齢化率が4割を超え、地域医療圏の中心の福島県会津若松市への公共の足が必要だ」と国や県、JR東日本に早期復旧の要望活動を続けている。

[新潟・福島豪雨] 2011年7月26〜30日に大雨が降り、只見町で総雨量が711ミリに達した。只見川が氾濫し、福島県内では流域の喜多方市、只見町、昭和村など1市8町2村で1人が行方不明になり、住宅33棟が全壊、200棟が半壊、77棟が床上浸水した。


2012年07月30日月曜日


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