終身雇用が崩壊した時代を生き抜くために、常に考えておくべき3つの問い

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2012/07/29


引き続き「ワーク・シフト」から印象的な箇所をピックアップ。


高度な専門技能と知識が求められる時代

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photo credit: Vincepal via photo pin cc

「ワーク・シフト」では、終身雇用の崩壊にあたって、ゼネラリストからスペシャリストへの転身の重要性が語られています。

ゼネラリストと会社の間には、社員がその会社でしか通用しない技能や知識に磨きをかけるのと引き換えに、会社が終身雇用を保障するという「契約」があった。(中略)問題は、そうした旧来の終身雇用の「契約」が崩れ始めたことだ。

ゼネラリストがキャリアの途中で労働市場に放り出されるケースが増えている。そうなると、一社限定の知識や人脈と広く浅い技能をもっていても、大して役に立たない。

なかなか厳しい指摘です。「一社限定の知識や人脈と広く浅い技能をもっていても、大して役に立たない」というセンテンスは、大企業に勤めている方の感情を乱しそうです。

これからは、いつでも労働市場で換金できる「高い専門性」が求められる、と「ワーク・シフト」は説きます。関連して、本書の中に掲載されている3つの問いは、不確定な時代の道しるべになりそうなのでご共有です。


問い1:その専門技能は、価値を生み出せるか?

専門技能を持っていたとしても、それが必ずしも市場に求められているとは限りません。

たとえば18世紀には、富裕層の間でガラス製品の愛用者が増えていたので、ガラス作りの専門技能が価値ある技能だった。

21世紀現在、「ガラス作りの技能」は、18世紀の時点よりも価値を生み出しにくくなっているでしょう。同様に、今自分が養っている専門技能(僕の場合はライティング、webマーケティング)は、本当に市場に求められているのかを、厳しく確認する必要があるのです。

IT系の業種でいえば、例えば「ブラックなSEOビジネス(バックリンクを購入するような)」は、Googleの諸々の対策によって価値を生み出せなくなっています。「ソーシャルメディアの導入コンサルティング(Facebookページ開設します!みたいな)」も、市場が成熟することによって近年ニーズが減少していますね。


問い2:その専門技能には、希少性があるか?

市場に同じ価値を提供する人が少なければ、それだけ高いリターンを得ることができます。自分が磨いている技能の「希少性」にも注目すべきだ、と本書は説いています。

スタートアップの世界でいえば「友達と写真を手軽に共有できる」という価値は、希少性が低いといえます。Instagram、Facebookをはじめ、強大なプレーヤーが既に存在し、それだけ競争も激しくなります。一方で、例えば「iPadで簡単にPOSシステムを利用できる(ユビレジ)」といったサービスには「希少性」があるので、それだけ市場に受け入れられやすくなります。「ニッチであること」は生存戦略として重要だと思います。


問い3:その専門技能は、まねされにくいか?

もっとも重要だと感じるのはこの問い。グローバリゼーションとテクノロジーの進化によって、専門技能は急速に陳腐化する可能性があります。

自分が選んだ分野が、もし十分に価値があり、ニッチでも、それが時間とともに機械や新興国の人材に代替されてしまうようなものなら、赤信号です。

今後発展するロボット産業は、リアルに人々の雇用を奪い去るでしょう。また、3DプリンタやCNCカッターのような「デジタルファブリケーション」テクノロジーは、建設に関わる人を不要にします。

3Dプリンタで家を印刷するプロジェクト「Contour Crafting」

カッターを使って「家を印刷する」デンマークのプロジェクト—重機不要、2名でも家が建つ建築技法

グローバリゼーションは、平均的な日本人の雇用にダメージを与えるでしょう。実際僕の周囲でも、日英中の読み書きができる、優秀な中国人学生を雇うことに力を入れている企業があります。

1985〜2010年に、企業の事務処理部門の76万8000人以上の雇用が賃金水準の低いインドに移転した。中国では、2009年の1年間に、先進国企業から業務を受注する企業が70万人近くを新規に雇用している。

代替不可能であること」は今まで以上に求められていくはずです。真似が容易な専門技能(例えば日英中のトリリンガル)を、先進国に住む僕たちが「唯一の強み」にしようとするのは、賢明とはいえないでしょう。


僕自身はライターという専門技能をもって、この3つの問いに答えていきたいと思います。物書きは楽な道ではありませんが、しっかりと自己研鑽に励めば、代替不可能性は総じて高めといえると思います。

その専門技能は、価値を生み出せるか?
その専門技能には、希少性があるか?
その専門技能は、まねされにくいか?

皆さんの専門技能は、これらの問いに耐えられるものですか?ぜひ考えてみてください。