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【社説】

山口県知事選 地域の選択 曲解するな

 山口県知事選で原発再稼働、オスプレイ搬入への反対を訴えた候補が敗れた。しかし、勝った新知事も賛成とは言えない状況にこそ注目すべきだ。地域の選択を政府の都合で曲解してはならない。

 ここしばらく無風が続いた「自民党王国」山口県の知事選。今回も二井関成知事が後継指名し、自民、公明両党が推薦する元官僚、山本繁太郎氏が盤石とみられていたが、NPO法人所長、飯田哲也氏の立候補で一転して激しい選挙戦となった。

 事実上の一騎打ちに敗れたとはいえ、飯田氏が選挙戦に一石を投じることになったのは、飯田氏が最近まで橋下徹大阪市長のブレーンを務めていたことに加え、脱原発の立場で「エネルギー維新」を訴えたからにほかならない。

 山口県では中国電力上関原子力発電所(上関町)が建設途上にあり、東京電力福島第一原発事故の影響で工事が中断された。公有水面埋め立て免許は今年十月に失効するため、工事継続の可否は新知事の判断に委ねられている。

 飯田氏が勝利すれば原発建設計画は白紙撤回されていたに違いない。とはいえ、県民が山本氏に原発推進を委ねたわけではない。

 飯田氏を警戒する山本氏は「3・11以降、脱原発依存は当たり前、上関原発建設計画は凍結」と工事再開に含みを持たせながらも、計画推進を打ち出すことはなかった。加速する脱原発の流れには抗(あらが)えないということだろう。

 選挙戦期間中に米海兵隊岩国基地(岩国市)に搬入され、十月に沖縄県宜野湾市の米軍普天間飛行場に配備される垂直離着陸輸送機MV22オスプレイも同様だ。

 開発中から事故が相次ぎ、飯田氏は「安全性が確認されない限り岩国に置いておくべきではない。撤去を政府に求める」、山本氏も「搬入は誠に遺憾。安全が確認されない限り飛行しないよう要請すべきだ」とそれぞれ訴えた。

 原発やオスプレイをめぐる本格的な論戦を避けたのは、山本陣営による「争点隠し」の選挙戦術と言えなくもないが、原発推進やオスプレイ配備容認はそもそも選択肢になり得なかったということではないか。野田佳彦首相は原発再稼働やオスプレイ搬入に対する国民の厳しい世論を素直に受け止めるべきだ。

 消費税増税で手を握った自公両党推薦の山本氏が勝利し、次期衆院選での躍進を警戒する「大阪維新の会」につながる飯田氏敗北に安堵(あんど)している場合ではない。

 

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