政府庁舎近くに集まる市民を追い払う警官=29日、中国江蘇省南通市(共同)【拡大】
日系工場の廃水を流す排水管建設計画に反対する大規模デモが起きた中国江蘇省南通市啓東で29日、当局が多数の警官を動員して警備を強化。インターネットを通じて呼び掛けがあった2日目の朝のデモを封じ込めた。
前日に参加者5000人以上のデモが起きた地元政府庁舎周辺は2000人以上の警官が配置され、庁舎の数百メートル手前から道路を封鎖。盾や棍棒(こんぼう)を持った警官に加え、迷彩服の武装警官もにらみを利かせた。
デモは午前6時半に呼び掛けられ、見物人が数百人集まった。警官は立ち入り禁止などの指示に少しでも従わない者は、突き飛ばすなどして威嚇。携帯電話での撮影を制止された人もいた。デモを容認した前日に比べ格段に厳しい対応で、多くの見物人は遠巻きに警官隊を眺めていた。
インターネットの短文投稿サイトでは「啓東」という単語の検索が規制され、啓東中心部は前日同様、携帯電話回線を通じたインターネットが使えない状態が続いた。
排水管は南通市中心部にある王子製紙の工場廃水を約100キロ離れた啓東の海岸に流すために南通市が計画。計画を容認した啓東当局への反発が強まり、前日のデモでは暴徒化した市民が地元政府に乱入した。当局は建設中止を発表して事態の沈静化を図った。
廃水の排出元としてデモ隊から批判された王子製紙の工場は、不測の事態に備えて29日も操業を停止。周辺は警察車両が巡回する光景も見られたが、デモなどは行われず平穏だった。
工場は南通市中心部の工業団地にあり、近くには日系企業の工場も多い。排水管は南通市が企業誘致のための優遇策の一つとして計画したものだったという。(啓東 共同)