チャットをする。
だけど 私の方が
先に職場に入るために
駿がその後 独り事として
つぶやいてくれている。
この彼の独り事が大好きな私。
いつも お昼休みに読む。
うーん 幸せ♪
すると今日は 突然
「プチデートする?」
と なっていた。
もちろん するするー!
ということで 仕事帰りに待ち合わせ♪
幸せ~!
帰宅ラッシュの激混みの中
なんとか会えた。
そして 駿は
「海に行こうと思ってた」
と言った。
海?
わぁ~♪
なんだか ロマンチック~!
駿に手を引かれて
電車に乗る。
「どこに行くの?」
「聞いたら 楽しくないじゃん」
なるほど・・・♪
「まるでミステリーツアーみたい」
と言ったら 笑われた。
そして 本社を構える大都会の駅で降りた。
???
乗り換えかな?
しかし そのまま改札を出てしまった。
すると 駅前の大きなビルを指差して
駿は言った。
「俺が 昔 働いてたとこ」
へぇ~!
あのビルにいたんだぁ~。
私は こんな大都会の高層ビルを
オフィスに持つ職場に
務めたことはない。
駿って 凄いなぁ~!
そして ビルの合間を抜けて出たところに
突然 海が現れた!
こんな都会に海があるなんて・・・
知らなかった。
しかも 時はもう 夕暮れ間近。
空が うっすらとオレンジ色になりつつある。
前に付き合っていた女の子と
来たのかな・・・?
そんな事が 頭をかすめた。
だけど 聞けなかった。
きっと 彼のウソを
見破ってしまうだろうから・・・。
歩いていくと
たくさんの人たちが そこにはいた。
みんな こんなキレイなところを
すでに 知っているのね。
私が今日発見した
駿との秘密の場所なのに・・・。
何段ものウッドデッキを降りて
そこには カップルたちが
いいロケーションを陣取っていた。
そこを素通りして
駿が連れて行ってくれたのは
本当に 私たちしかいない
空間だった。
海の向こう側には
橋のライトや ビルの灯りが
たくさん散りばめてあって
私たち専用のパノラマがあった。
なんて 美しい場所なんだろう・・・。
海から吹く風が心地よくて
すべてがクリーンになっていく感じ。
夜景にうっとり見とれてしまう。
今日は風があるから
雲がどんどん流れていく。
そんな空を見上げながら
夜景の色が
グラデーションに変わっていく様子を
駿とずーっと眺めた。
ふたりっきりでベンチに座り
たくさんおしゃべりして
たくさん笑って
コンビニで買ったカフェオレを飲んで
唐揚げをつまんで・・・。
こんな風にデートするのは楽しい!
まるで 高校生?
そして 話題はどんどん変わっていき
足つぼの話やら マッサージの話になった。
「俺 みんなに
指圧の先生になれば、って
言われるんだよ」
そう言うから ついお願いしてしまった。
しかし 指圧の先生になれば、と
勧められるくらいだから
ツボを心得ていることも
その言葉から分かったはず!
なのに 私は 安易に
「気持ちいいんだろうなぁ~♪」
なんて思っていたら大間違い!
超ツボ 押しまくり!
イタタタタ・・・!
ぎゃーっ!
この様子に 駿
大笑い!
いやいや・・・
笑うとこじゃないから
そして リンパというリンパを押され
いつもとは違う電気が
私のカラダを走った・・・
ほぼグッタリした後
違う場所へ移動し
違う角度からの夜景を楽しみ
そして ウッドデッキに座って
静かにお話をした。
本当に たくさんの お話を
静かにした。
駿の過去の話をちょっと・・・。
だけど 核心までは聞けなかった。
妬いちゃうから・・・。
こんなにキレイな夜景を見た日に
駿が昔愛した人の話を
聞けるはずがない。
聞いてしまったら
キレイな夜景を見る度に
駿の過去の恋人を思い出してしまう。
膝を抱えて 静かに
核心に触れない程度の話を聞くのが
精一杯だった。
駿が 言葉を丁寧に選んで
私に 話してくれる。
そんな 誠実な駿を
独り占めした人たちが
いるんだよね・・・。
過去は 変えられない・・・。
その過去が 私のものだったら
良かったのに・・・。
そんな話の流れから
私たちが10年くらい前に出会っていたら・・・
という話になった。
そう・・・
私たちのターニングポイントの前に
出逢っていたら・・・。
絶対に 運命は大きく変わっていただろう。
少なくとも 私は・・・。
そして その頃も
今と同じように
駿を愛したと思う。
そして 今以上に
もっと情熱的だったかもしれない。
そして
私の秘密兵器を 初めて持ったのも
その頃だ。
本当にいろんな出来事が
私の周りで起こり始めた。
それまで疎遠だった父が ICU に入り
私のレベルでは得られないほどの
高額な月給ももらったり
突然 祖母の遺産が入ったり・・・。
そして 私は
絶対に バレるはずがない浮気が
本気になり
5年も同棲していた彼と別れた。
運命が大きく変動していくのを
日々感じながら
私は過ごしていた頃だった。
そういう意味でも
駿に逢えるチャンスは
あったように思えるんだけど・・・。
東京湾クルーズをしている船も戻り
若者たちが 大騒ぎしている。
夜の時間は 進んでいるのか
進んでいないのか
分からないくらい
楽しい時間ばかりが早く
過ぎていく・・・。
夜中になろうとしても
気温が下がることもなく
肌寒くもなく
ただ 駿とは話は尽きない。
ときどき 駿が
膝を抱えたままの私に
耳打ちをして
優しさをくれる。
これからは
私が今から 過去も未来もすべて
駿と共有するんだ。
そう 私は決めた!
愛する人の手は
離さない・・・。