あの時の喧嘩(?)ほど
悲しい出来事を
私は これまで味わったことがなかった。
いかに 今までの私は
自由で好き勝手にいた、かが分かった。
恋人がどんな風に傷付くかなんて・・・
考えたことがなかった。
これは後日 駿に指摘された。
言われて初めて知った。
あの日 駿に愛を確認するために
私は 何度も 何度も
私のことを愛しているのか
好きでいるのかを聞いた。
そして 自分が求めている答えを
言ってもらえるまで しつこく聞いた。
だけど 答えはいつも同じ・・・。
「ねぇ、私の事 愛してる?」
「ううん」
「ねぇ、私の事、好き?」
「ううん」
本当に その答えが
文字通りの意味を持つのかもしれない・・・。
そんな風に諦めた時
駿は言った。
「片思いでいろよ」
片思いでいれば ずーっと
その人しか見ないから・・・。
そう駿に言われた。
「・・・うん」
と返事をした。
だけどね・・・。
私、ずーっと思ってたの。
私が駿を思う愛と
駿が私を思う愛を比べたら
私の方が ずーっと大きいと思うの。
だって すんごく
好きなんだもん。
だぁ~い好きなんだもん。
すっごく 愛してるんだもん。
過去の誰よりも 愛してるんだもん。
でね、引き算すると
私の方が余っちゃうじゃん?
その分は 片思いだなぁ~、って。
だから
私は ずーっと片思いをすることに
なってると思うの。
だけど・・・
片思いもいいよね。
私 片思い 好きだよ。
静かに 駿を見つめる。
駿の細かい動きを観察するの。
どんな時に どんな表情をするのか・・・。
片思いの人に ちょっと触れる瞬間って
すごく ドキドキするよね・・・。
片思いの人とお話する時
話の内容に夢中になるよね。
話している声を聞いて
寝る時には その声を思い出しているよね。
そして 夜はなかなか眠れなくて・・・
好きな人のことばかり考えて・・・。
何度も 何度も
同じシーンを思い出して・・・。
好きな人を思い出して
ドキドキしながら眠る。
明日もたくさん話せるかなぁ、って思いながら。
明日は どんな発見があるだろうなぁ、って。
片思いって 現実の幸せな部分しか見えない。
だけど 両思いになると
どうしても未来を見てしまう・・・。
未来も 現在の周りもすべて
たくさんのものを見ようとしてしまう・・・。
私の好きな小説のひとつで
こんな風な表現があった。
「あと一息で落ちようとしている葡萄の房を
わざわざ手を滑らせて逃がすことはない」
主人公が 好きになってしまった
人妻に対しての台詞。
まさに 私は
この罪を犯してしまったのかもしれない。
駿を欲しいあまり
葡萄を掴んでしまった・・・。
遠慮せずに 手を伸ばして
掴んでしまった・・・。
たぶん 必要以上に強い力で・・・。
葡萄は痛かったはずなのに
私は気付かずに
欲望の赴くまま 強く掴んでしまったんだ・・・
きっと。
ごめんなさい・・・。