5日公表された国会事故調の調査報告書。福島第1原発事故で住民の避難に使われずに問題視された放射性物質(放射能)の拡散予測システム「SPEEDI(スピーディ)」について、国会事故調は「初動の避難指示に活用することは困難」とし、代わりにモニタリングの強化を提言した。しかし、SPEEDIをめぐっては、今回の事故でも活用されていれば無用な被曝(ひばく)が防げたとする意見は根強く、国会事故調の提言には住民からも疑問の声が上がった。
「避難区域の設定の根拠とすることができる正確性はない」。国会事故調の報告書は、政府が100億円以上をかけて構築したSPEEDIの有用性を真っ向から否定するものだった。
国会事故調がそう判断した背景には、SPEEDIは事故で放出された放射能の種類や放出時間などのデータがなければ、正確な運用ができないというシステム上の限界がある。
大規模事故では、放出源情報を正確に得ることは極めて困難となる。今回の事故でも放出源情報が得られなかったため、SPEEDIの活用は見送られた。
曖昧な情報しか得られないSPEEDIに頼るよりも、多様な方法で放射線量を計測できるよう、モニタリングを強化すれば、避難にも生かせるというのが国会事故調の見解だ。
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