国道231号 日方泊トンネル旧道 歩古丹トンネルと天狗トンネル 1

概要

国道231号 日方泊トンネル旧道 歩古丹トンネルと天狗トンネルの地図
すいません、ぽこたんって言いたかっただけなんです。
歩古丹は「あゆみこたん」と読みます。


国道231号は北海道札幌市を起点とし、日本海岸を北上して留萌市に至る、延長130.4kmの一般国道である。
その沿道には古くからニシン漁で栄えた集落が点在していたが、国道が全通するのは昭和50年代になってからであった。
この付近の海岸線には高さ100メートルを越す断崖が連なり、陸上交通といえば獣道にも劣るような細い山道を数十kmも行くより他はなかったのである。
このため、これらの集落の連絡には北方にある増毛(マシケ)からの定期船以外に存在せず、一体はまさに陸の孤島、秘境と呼ぶにふさわしい地であった。
定期船とは言うものの海が時化ればすぐに欠航したし、そもそも定期船の終着地であった雄冬(オフユ)という地の語源はアイヌ語のウフイット、意味は「燃える岬」であり、海上交通も容易とはいえなかった。
そこに十分な陸路が開削されることは、住民の悲願であったのである。

国道の歴史としては、明治36年に付近の山道、海路を含めて国県道「西海岸線」に指定されたところに端を発する。
大正9年には準地方費道(本州における一般県道)に指定され、当時の地図には等間隔に設置された水準点も確認できる。
しかしこの道も昭和初期にはほとんど廃道と化し、余程特別な事情がない限り往来することはなかったという。
昭和28年には二級国道231号線として認定されたが、このとき認定されたのは併走する別の山道であった。
昭和33年、増毛町大別苅(オオベツカリ)から車道開削のための工事が始まり、高々12.1kmの山越え道路に15年の歳月と事業費16億円を投入し、昭和48年にようやく今回の舞台となる歩古丹トンネルの手前まで開通した。
トンネル自体は海上輸送によって反対側からも工事が進められ、同年に竣工を迎えている。
歩古丹トンネルよりも雄冬側では、岬の断崖を貫く延長1200メートルの長大トンネル、天狗トンネルが計画され、こちらは昭和46年から着工されている。
天狗トンネルは昭和54年に竣工し、その翌年にはついに最奥部である雄冬の地まで車道が通じた。
ただし、雄冬から南はこのときまだ車道はなく、国道全体が開通するのは昭和56年11月である。

全通とは言っても中には暫定的に開通させただけの区間もあり、これ以降も各所で改良工事、路線の付け替えが今尚行われている。
天狗トンネルも改良の対象となったが、危険区域であった増毛側坑口を改良するためには工事量が膨大となる上、歩古丹トンネルの雄冬側は急勾配と屈曲、 さらにトンネル自体に変状をきたしているという理由で、路線そのものの変更が検討された。
その結果、歩古丹トンネルを迂回して延長2890メートルの新トンネル(日方泊トンネル)を掘削し、天狗トンネルの内部で接続するという形にまとまり、平成13年から掘削開始、16年に供用された。
これにより、歩古丹トンネルや天狗トンネルの一部などが放棄されることになった。


「よーし今日も旧道いくかー^^」

1-1 雄冬

国道231号 日方泊トンネル旧道 歩古丹トンネルと天狗トンネル 1 11月も半ばに差し掛かり、北海道の峠道はすっかり雪に包まれている。
しかし、平野部ではまだ積雪はなく、自転車での走行に支障はない。
支障をきたす前に"冬篭り"の準備をしておかねば・・・ということでネタ探しの旅に出たのである。
レポートは札幌側より始まる。


写真は雄冬集落の南にある、雄冬岬トンネル札幌側坑口。
昭和56年11月にこのトンネルを含めた道路が開通したことにより、札幌と雄冬の間が自動車で行き来できるようになった。
しかし、開通からわずか40日後の12月19日、雄冬側坑口で発生した土砂崩れにより、雄冬は再び陸の孤島に戻ってしまった。
前年に開通した雄冬〜大別苅間の道路は冬期通行止めであったが、12月26日から1月5日まで日中のわずかな時間に限り、交通を確保したという。
翌年の冬には雄冬岬トンネルに横坑を開けて迂回路を造り、昭和58年12月になってようやく再開通した。
国道231号 日方泊トンネル旧道 歩古丹トンネルと天狗トンネル 2 雄冬岬トンネルを抜けた地が、かつては秘境とも形容された雄冬の地である。
30年ほど前までは、札幌を出てこの場所に立つためには一度内陸に迂回して留萌、増毛を経由し、一日一往復の定期船に乗るしかなかった。
ただし、「陸路がなかった」というのは必ずしも正確ではなく、雄冬の南の集落とを結ぶ山道は開削年代不明なほど昔から存在し、一時期国道にも指定されていたようである。
緊急の用がある場合など、稀に利用されることもあったらしい。
南から山を越えてきたその道は、ここ「白銀(シロガネ)の滝」の辺りに降りてきた。
国道231号 日方泊トンネル旧道 歩古丹トンネルと天狗トンネル 3 一方で、雄冬の北、岩老(イワオイ)の地から歩古丹までは、直接結ぶ陸路が出来上がったのは国道が開通する昭和54年が最初である。
この年に天狗トンネルが開通したことで両地が結ばれることになるが、そのうち歩古丹側数百メートルは路線付け替えによって30年足らずで放棄されたのである。
新たに掘削された日方泊(ヒカタトマリ)トンネルが内部で接続するものの、意外にも岩老側坑口に新トンネルを示すようなものは見当たらない。
銘版も竣工当時の天狗トンネルの物が残っており、延長1200メートルとあった。実際には3km近くあるわけだが。


この天狗トンネルから先が、今回のメインディッシュだ。
巨大で静かなトンネルに突入。

1-2 天狗の鼻の穴

国道231号 日方泊トンネル旧道 歩古丹トンネルと天狗トンネル 4 ウホッ!いい横穴・・・

坑口から600メートル地点、すなわち旧天狗トンネルの中間地点で、工事用と見られる横穴に遭遇。
柵でがっちり封鎖された隙間からは青い海が見えている。

発見したときは天狗トンネルの旧道でもあるのかと思ったが、上記の通りこのトンネルに旧道は存在せず、当然横穴を出た先に道路はない。
国道の開削工事に当たっては資材を海上輸送して行ったというので、横穴の向こうで資材を陸揚げし、この場所からも掘り進めたのだろうか。


鍵はついていなかったが、かんぬきがボルトでガッチリ固定されていて開けられなかった。無念。
国道231号 日方泊トンネル旧道 歩古丹トンネルと天狗トンネル 5 入口から800メートルくらいのところでトンネルの雰囲気が変わり、緩やかな右カーブ。
おそらくここが天狗トンネルと日方泊トンネルの分岐点であり、ここまでが天狗トンネルで、この先が新たに掘られた日方泊トンネルとなるようだ。
天狗トンネルは曲がらずにさらに400メートルほど直進して外に出ていたはずだが、それらしい痕跡は皆無。

ここを過ぎると道は若干登り基調になる。
天狗トンネルは海抜数メートルのところにあるが、日方泊トンネルの歩古丹側坑口は海抜100メートル近くまで登るのだ。
国道231号 日方泊トンネル旧道 歩古丹トンネルと天狗トンネル 6 ウホホッ!なんすかこのトンネル!

分岐から少し行ったところで、今度はシャッターつきの横坑。
外に出てるのか?それとも単なる車両転回所なのか?
答えを求めて扉に手をかけるが、やっぱりビクともしない。ちくしょう、北海道の道路はガードが固すぎる。

1-3 おいすー^^

国道231号 日方泊トンネル旧道 歩古丹トンネルと天狗トンネル 7 1000メートルを越えるトンネルというのは自転車の私にとっては苦痛でしかない。
が、このトンネルは要所要所の見所が飽きさせない。交通量が少ないのも○。

そして3000メートル近い距離を進み、100メートル近い標高を登って日方泊トンネルの歩古丹側坑口に到着。
ほんの数年前まで使われていた旧道はというと・・・
国道231号 日方泊トンネル旧道 歩古丹トンネルと天狗トンネル 8
いい位置にあるなあ
国道231号 日方泊トンネル旧道 歩古丹トンネルと天狗トンネル 9 日方泊トンネル出口の右下には、放棄された覆道とそこに掲げられた「歩古丹トンネル」の扁額が輝いていた。
覆道内部に敷き詰められた高さ1メートルほどの土砂の向こうには、ここからでも歩古丹トンネルの坑口がかすかに見える。


これは・・・インしたいお・・・
国道231号 日方泊トンネル旧道 歩古丹トンネルと天狗トンネル 10 現道とは微妙な高低差があり、直接往来することはできない。
さらに攻略難度を上げる手段として、手前にあったらしい橋(昭和49年竣工の磯香橋。延長39メートル)が落とされている。

当初は坑口直近の斜面を降りようとしたが、斜度がきつくて断念(ロープが張られていたが、薮が邪魔をして難しい)。
橋が跨いでいた沢まで降り、渡渉して向こう側の斜面を登ることにした。
国道231号 日方泊トンネル旧道 歩古丹トンネルと天狗トンネル 11 こちらも斜度は結構急だが、階段状の施工のために昇り降りにおいて苦労することはあまりなかった。
ただ、実際には現道の橋の下を潜ってくるほうが圧倒的に楽であったことに気がついたのは帰りのときであった。

1-4 歩古丹トンネル

国道231号 日方泊トンネル旧道 歩古丹トンネルと天狗トンネル 12 最後に柵を一枚すり抜けてどうにか入口に到達。
トンネルに付設された覆道は歩古丹覆道といい、延長55メートル。歩古丹トンネルができてから5年後の昭和53年の竣工である。
頭上の扁額はその5年の間はトンネル坑口にあったのだろうか?
国道231号 日方泊トンネル旧道 歩古丹トンネルと天狗トンネル 13 トンネル工事で出たであろう土砂によじ登ると、すぐそこに真っ黒い口を開けるぽこたん・・・いや、歩古丹トンネルがあった。
密封封鎖されることが多い北海道の旧トンネルには珍しく開口している。

橋を落としたことで安心しちゃったかなあ?甘い甘い。

なんて思ったのもつかの間。
国道231号 日方泊トンネル旧道 歩古丹トンネルと天狗トンネル 14 インできないお・・・


ヤラレタ。
廃土がみっちみちにfillしちゃってる。
天井には腕一本入る程度の隙間しかない。
国道231号 日方泊トンネル旧道 歩古丹トンネルと天狗トンネル 15 その隙間を覗いてみても、出口まで205メートル先にあったはずの反対側の光は全く見えない。
代わりにシートのようなもので包まれた何かが見えるだけ・・・

もうやってらんないっすよ!!
反対側の出口ったって、新道旧道の合流地点は日方泊トンネルの中なんだぜ。
どうするかっつったらそりゃあもう、INじゃなきゃOUTから攻めるしかないっしょ。
[ 08' 11/10 訪問 ] [ 08' 11/20 作成 ]
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