水俣病の被害の実態を調べている民間の医師団が25日、熊本県水俣市と県境で接する鹿児島県伊佐市などの住民30人に水俣病に特徴的な感覚障害があったと発表した。伊佐は山あいの盆地で、水俣病被害者救済策の対象地域から外れている。1980年代まで国鉄で水俣と結ばれており、行商で運ばれた魚介類で被害が広がったとみている。
調べたのは患者の診療を40年以上続ける「水俣病訴訟支援・公害をなくする県民会議医師団」。2005〜12年に訪問検診や集団検診などを受けた人のカルテのうち、伊佐市とその周辺の住民で救済策の対象地域に住んだことのない50〜90代の33人を抽出したところ、30人に手足の先ほど痛さなどの感覚が鈍くなるといった症状があった。30人は伊佐市29人と隣接する湧水町1人。このうち十数人は、水俣市から県境を越えてすぐの伊佐市布計(ふけ)集落の住民だった。
水俣駅(現在は肥薩おれんじ鉄道)から伊佐方面には戦前から88年の廃線まで旧国鉄山野線が延び、行商人が水俣で水揚げされた魚介類を運んでいた。医師団の聞き取りによると、受診者は行商人から魚を買っていた。水俣の業者が伊佐へ魚を運ぶ例と、伊佐の業者が水俣で仕入れて持ち帰る例があり、道路が整備されるまでは水俣から流通する魚が多かったという。