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社説:日本再生デザイン 日本海国土軸の実現を
全国知事会が「日本再生デザイン」の中間報告をまとめた。東日本大震災を踏まえた防災力強化や地域再生などを目的に、次世代の成長モデルとなる新たな国家像を地方の視点から打ち出したものだ。
本県との関連で注目されるのが「日本海国土軸」の形成を提唱した点。災害時の相互補完機能を強化するため、日本海沿岸道路などの高速道整備や港湾の拠点化などを盛り込んでいる。防災だけでなく国土の均衡ある発展のためにも、そうした方向性は妥当だろう。
ただし、新たな国土軸の実現には大規模な公共事業が伴う。知事会は今秋にも最終報告をまとめるが、確実に成果を挙げられる具体策を詰めるなどして国民の理解を得られるように努めなければならない。
防災の観点から日本海国土軸の必要性が叫ばれたのは、昨年7月に秋田市で開かれた全国知事会議が最初だった。大震災で太平洋側の交通網が寸断される中、秋田自動車道や秋田港はバックアップ機能を発揮。このため、災害に強い国づくりに向けては日本海側のインフラ整備も不可欠だとして東北6県の知事が共同提出した緊急アピールが採択されている。
こうした動きに加え、首都直下地震や南海トラフ巨大地震の発生も懸念されることから知事会は昨年10月、日本のグランドデザインを見直す検討会を発足させて協議を続けてきた。今回の中間報告は「どうすれば被害を最小限に食い止めることができるか」という点を最重点にまとめられただけに、その内容には強い危機感がにじむ。
新たな国土軸は、従来の「太平洋ベルト」を挟む形で、日本海沿岸の日本海国土軸や東海—四国—九州の「太平洋新国土軸」で複線化させるという内容。日本海国土軸では、沿岸の高速道路だけでなく太平洋側への横断軸の整備も提唱したほか、極東アジアに近接する日本海側港湾の拠点化も重要だとしている。本県などの主張が反映されたことは率直に評価したい。
大震災では物流ルートの確保だけでなく広域支援体制の在り方も課題として指摘されており、その克服のためにはインフラ整備が避けて通れない。問題は国も地方も厳しい財政状況の中で、実現への道筋をどう付けるかという点だろう。
今回の中間報告では、インフラ整備の財源確保や工程表までは示されていない。大型公共事業の実施に関しては国民の目も厳しいだけに、提言の早期具体化のためには知事会が国に働き掛けるだけでなく、知事自らが率先して住民に理解を求めていく姿勢も求められよう。
少子高齢化や日本経済の減速を背景に、地方の疲弊は深刻化している。防災力向上はもちろん観光振興などによる地域再生に結び付けるためにも、新たな国土軸の着実な構築に向けて機運盛り上げを図りたい。
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