法学館憲法研究所は、憲法を系統的に研究し、個人の尊厳の実現をめざす非政府組織としての自由な研究機関です

法学館憲法研究所

Mail info@jicl.jp
 
今週の一言
憲法情報Now
 憲法をめぐる動向
 イベント情報
 憲法関連裁判情報
 シネマ・DE・憲法
 憲法関連書籍・論文
 ■今日は何の日?
憲法Voice
研究所・客員研究員紹介
中高生のための憲法教室

憲法文献データベース
日本国憲法全文
リンク集
 
事務局よりお知らせ
賛助会員案内
メールマガジン
ご意見フォーム
サイトマップ

今週の一言

 

「個人」より「国家」を重視する教育にしないために

2006年5月8日

須黒奈緒さん(「教育基本法の改悪を止めよう!全国連絡会」事務局)

―――4月28日、教育基本法「改正」案が国会に提出されました。須黒さんはいま、「教育基本法の改悪をとめよう!全国連絡会」の事務局メンバーとしてとりくみを進めておられますが、まず、須黒さんがこのとりくみに関わるようになった経緯や思いについてお聞かせください。
(須黒さん)
私はもともと子どもの問題に関心があって、実は家庭裁判所の調査官になりたいと思っていました。私が大学生だった時、少年法の「改正」問題が起こり、勉強のためいろいろなところに顔を出すようになり、市民団体の人たちと接するようになっていったんです。その頃、教育基本法の「改正」問題も浮上してきました。私は市民団体の方々から教育基本法「改正」問題も重要だと教えていただきました。そのお話がすごくよく理解できました。そんな経過の中で、「教育基本法の改悪をとめよう!全国連絡会」の事務局のメンバーとして活動することになりました。

―――須黒さんは平和や憲法の問題にもとりくんでおられますよね?
(須黒さん)
2003年にアメリカがイラク戦争を起こす直前、戦争反対のとりくみが国際的に高揚しました。日本でも「普通の人たち」が戦争反対の声をあげ、デモ行進に参加しました。なぜこんなに多くの人たちの声が無視され、戦争が行われるのか、すごく疑問に感じました。
教育基本法「改正」や憲法「改正」の動きが進む中で、いろいろな人たちの話を聞き、私はこれらは全部関連していて、戦争をする社会がつくられていくということを体系的に理解できるようになりました。そして、いま立ち上がらないといけないと思うようになったんです。

―――須黒さんは教育基本法や憲法の「改正」問題について工夫を凝らしたパフォーマンスをしておられますよね。
(須黒さん)
市民団体や労働組合で頑張っている人たちと「普通の人たち」の間、デモ行進する人と普通に道を歩いている人との間の感覚には大きな開きがあると思うんです。そこを埋めるには工夫が必要だと思うんです。そこで私は、流行っている歌を使ったり、コント仕立てで表現したり、そんなことをやってきました。

―――須黒さんは教育基本法「改正」案のどこが一番問題だと思っていますか?
(須黒さん)
小・中学校はもちろんのこと、地域、家庭、大学、生涯学習にまで、あらゆるところに国家の介入、管理が進むものになっていることです。そして、徹底して「個人」より「国家」を重視する教育が行われるように目指されていることです。
特に「愛国心」などの表現で「心」や「態度」を法制化することは、子どもたちや国民に保障されている、憲法の「思想および信条の自由」を侵すことになり、絶対反対です。
また、教育の機会均等の問題もあります。「改正」案の17条には教育振興基本計画というものを盛り込んでいます。これは、予算措置を伴った政府による教育内容への介入が行われ、子どものうちから格差を拡大させてしまい、同時に教育が中央集権的になると思います。「国民はすべて、ひとしく」という文言は残りましたが、教育行政次第でなんとでもできるようになってしまうといえます。
「改正」案は、言葉ひとつひとつはさらっと読めば気にせず読めてしまうものが多いのですが、実は注意して読むと、政府側が意図して加えた文言がたくさんあることが分かります。たとえば、現行1条の「個人の価値」「自主的精神の尊重」という文言がすっかりなくなっていて「必要な資質」=国家にとって必要な資質が入っていたり、6条の学校教育については学習者に規律や意欲を強制し「規律」を乱す学習者を排除する可能性があるとも言われています。そういうことがひとつひとつ気になります。

―――須黒さんは憲法「改正」の問題についてはどう考えておられますか?
(須黒さん)
私は、憲法というものは国民が守らなければならないものではなく、権力者が守らなければならないものだということを学んだときに、「そうなんだ!」と驚き、すごく感激しました。そして、やはり日本の憲法は9条の平和主義が大事だと思っています。軍隊を持たないことを憲法に明記しているのはコスタリカと日本くらいですよね。それは人類全体の理想と方向性を指し示していると思っています。

―――最後に読者の皆さんにお伝えしたいことがありましたら補足してください。
(須黒さん)
最近おかしな法律がどんどん国会で成立していきます。反対運動が実を結ばず落胆しがちなんですが、やはり仲間を増やしながら頑張っていきたいと思っています。若い人たちにもちゃんと話していけば、わかってもらうことができます。
教育基本法の改悪は憲法の改悪に直結していく問題だと思っていますので、当面はこの問題に全力であたりたいと思っています。「教育基本法の改悪をとめよう!全国連絡会」は6月2日に大規模な全国集会を開催することにしています。

―――ありがとうございます。若い力で頑張ってほしいと思います。私たちも憲法とその理念を広げるために頑張ります。これからもよろしくお願いします。

◆須黒奈緒(すぐろ・なお)さんのプロフィール

「教育基本法の改悪を止めよう!全国連絡会」事務局員。WORLD PEACE NOWのメンバーとして平和のとりくみもすすめてこられた。


 
[今週の一言][憲法情報Now][中高生のための憲法教室][憲法文献データベース][事務局からのお知らせ]
[トップページ]