今、何故密教か!(金沢文庫「ほとけの図鑑」)
博物館の展示は随分前から用意するのでしょう。
上野の東京国立博物館では「空海と密教美術展」を開催しています。
2年も前には計画を立てて、東寺を初め様々な先に支援・協力を依頼していたのでしょう。
私は、プランナーの才覚を尊敬します。
「何故、今、空海と密教を訴えたいのか・・・・?」
当時は、自民党政権のたらい回しが批難され、財政が破綻して、就職難で・・・・・、
日本人が歩く先が見えなくなっていました。
そして、プランナーは「東日本大震災」を予測していたのかも知れません。
東京国立博物館「空海と密教美術展」ポスター
桓武天皇は平城京に居て確信していました。
奈良の都に居ては日本の将来は無い。
奈良では甍を並べた大寺が、政治に干渉して来る。
「仏教が何たるか!」混迷の極みである。
そこで、新世代の「最澄」「空海」を遣唐使として送り、新時代を切り開く仏教を伝えるよう期待します。
そして、平安京遷都を推進します。
時に陸奥では「貞観大地震」が発生しました。
東日本大震災と同じ規模でありました。
空海は考えます。
大自然(神)は怒っている。
寺は都大路にあってはならない、神の住まう山上に建てなくてはならない。
高野山に寺を建てました。
大自然に神意を伺い、神意に則って僧侶が修行し、国や大衆の平安を祈願しました。
それから1200年、今改めて「自然と人間」「文明と国家」の関係が問われているようです。
称名寺(金沢文庫)は海から寺までの道に百日紅が植えられています
地方の博物館もその展示には頭を悩ましている事でしょう。
「神奈川県立金沢文庫」では、今中々に優れた展示をしています。
テーマは「ほとけのずかん」です。
東京国立博物館の「空海と密教」に通じるものがあります。
金沢文庫「ほとけのずかん」展示案内
空海から200年後、密教は一層盛んになっていました。
様々な国難、元寇などの災難に遇して、個人も国も仏に祈願する事が増えていました。
多種多様な仏の姿や功徳を整理して解説する必要が生じていました。
そこで、金沢文庫(称名寺)では「仏の図鑑」を整理しました。
長い巻物に、仏様の図像を描き、特徴や何処の寺院に代表的な仏像が祀られているか、記しました。
仏師はこの図鑑を見て彫像した事でしょうし、お寺は加持祈祷する時にも便利だったことでしょう。
そして、祈願する人達にとっても、わかりやすい図鑑だった事でしょう。
「諸尊図像集」から天部(天王寺の四天王)
「諸尊図像集」「図像抄」「別尊雑記」「覚禅抄」(何れも鎌倉時代、重要文化財)が展示されています。
鎌倉時代の巻物が紙魚にも食われず、汚れも無く、色彩が大変に綺麗です。
金沢文庫の保存管理が優れていた事が良くわかります。
そして、図も説明も納得の状況です。
子供が見れば、「仏像図鑑」は「ロボット図鑑」や「怪獣図鑑」と同じよう実見える事でしょう。
怪獣の特徴や性格はその姿や武器に現れています。
仏像の功徳もその姿や表情、印相に現れています。
図鑑は解り易いのが長所です。
密教の法要を図説した学芸員の説明(息災法、増益法)
もう一つ、私が常々感心している事があります。
金沢文庫は学芸員の能力が高いのです。
展示物の案内の文章の一句一句に感心します。
そして、解説の図像に敬服しています。
実に解りやすいのです。
今「仏像ガール」が活躍しています。
彼女に好き嫌いがある訳ではありませんが・・・、
自分の趣向をお仕着せしてはいけません。
「誰にもわかりやすい様に・・・」
金沢文庫の学芸員さんの識見の深さに感心します。
因みに漫画(上下)を見てください。
金沢文庫の仏教文化のストックがこうした識見を育てているのでしょう。
また、そうした学芸委員を育てているのでしょう。
同じく学芸員の説明図(敬愛法、調伏法)、実にストレートで解りやすい。誰しも経験している事でしょう。
金沢文庫の楽しみ「かき氷」(喫茶コーナー・ともしびで、200円)
称名寺境内の石仏には空蝉がたかっていました。
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