社説
ウナギ資源 日本こそ保護の先頭に(7月28日)
米政府が、絶滅の恐れがある野生動植物の国際取引を規制するワシントン条約の対象にウナギを加えることを検討している。
来年3月の条約締約国会議に提出するかどうか、今秋をめどに決めるという。提案、可決されれば、消費量の7〜8割を輸入に依存する日本への影響は避けられない。
稚魚の段階では判別が困難という理由で、北米のアメリカウナギだけでなく、全種を規制対象とする米国案は性急との指摘もある。
しかし、世界的にウナギが減少しているのは事実だ。世界の消費量の約7割を占める日本が、この傾向に拍車をかけてきたことも認めざるを得ない。
まず、日本が最大の消費国として、ウナギの資源保護で責任を果たさなければならない。
日本で広く食べられているニホンウナギは、養殖に欠かせない稚魚が3年連続の不漁で価格高騰を招いている。
2011年の漁獲は9・5トンで最盛期の20分の1に満たない。日本へ輸出する中国、台湾などでも同じことが起きており、日本の業者はアフリカにまでウナギの調達先を広げようとしている。
だが、安易に海外に頼るやり方が他国や環境保護団体の目にどう映るか、考えてみる必要がある。
07年にヨーロッパウナギがワシントン条約で規制された原因は、稚魚の激減だった。中国向けに乱獲され、多くは中国の養殖場で育てられた後、かば焼きに加工されて日本に輸出されていた。
日本の消費者に手ごろな値段で提供するため、自国のみならず、世界各地の資源を危機的状況に追い込んでいいわけがない。
ウナギの生態には未解明の部分が多く、日本の研究チームが世界で初めてマリアナ諸島沖で卵を採集したのは、わずか3年前のことだ。
資源減少の要因は乱獲に加え、河川開発、地球温暖化による海洋環境の変化など複合的なものだろう。
水産庁は中国、台湾と協力して、ウナギの資源管理の枠組みを創設すると発表した。回遊範囲の広さを考えれば、国際協力は不可欠であり、日本こそ先頭に立つべきだ。
卵から育てる完全養殖の実用化のめどが立たない現状では、産卵に向かう親ウナギや稚魚の漁獲規制強化も検討しなければならない。
かつては夏のスタミナ源の高級食材だったウナギが、季節を問わずスーパーやコンビニに並ぶようになった。こうした消費のあり方も見直すときではないか。
資源が枯渇すれば、ビジネスも食文化も成り立たない。