IS 『白を纏いし十三人目の天剣』 (クロワッサン)
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初めまして(そうでない方はお久しぶりです)。
クロワッサンと申しますm(_ _)m 。にじファンから移転してきました。あらすじで書いてあるようにこの作品は元々IS 「白を纏いしHeaven Sword」です。では、これからよろしくお願いします。
第一話 世界で唯一ISを使える男
IS 正式名称は『インフィニット・ストラトス』。
それは宇宙空間での活動を目的として作られたマルチフォーム・スーツ。しかしその願いはかなわず、世界を揺るがした[白騎士事件]以来それは世界最高の兵器となり
結果的にスポーツという形になった。しかしここで重要になってくるのは「女性にしか使えない」ということである。ここにいる一人の男子を除いて・・・・・・
「この状況は流石にまずいと思うんですが・・・・・・」
織斑一夏(おりむら いちか)は動揺していた。ここはIS学園。IS操縦者の育成機関。当然周りにいるクラスメートは全員女子。一番前で真ん中の席の彼には視線が集まる。どこかのパンダもビックリである。
「織斑一夏君、大丈夫ですか?自己紹介をしてくれると先生は助かるんですけど、ダメかな?」
よほど顔に出ていたのだろうか、気遣ってくれた。ああ、優しさが身に染みる。山田真耶(やまだ まや)。このクラスの副担任である。背は小さく、胸は大きく、服はダボダボ。なんてアンバランスなんだろう。
「自己紹介はちゃんとしますから落ち着いてください、山田先生」
笑顔でそういうと山田先生は頬をわずかに朱色に染めていた。なぜ?とりあえずクラスのみんなに自己紹介をしようとおもって振り返るとクラスメート全員の視線が一夏に集まる。うう、これはつらい。偶然見つけた幼馴染の篠ノ之箒(しののの ほうき)に視線を向けるが無視された。まずい、涙が。とりあえず挨拶だが、やるしかない!
「織斑一夏です。趣味は家事全般、あと機械いじりもやってます。体を動かしているのが好きです。世界で唯一ISを動かせる男子とされていますがあまり気にしないでください。みんなと一緒にこれから学んでいけたらいいなと思ってます。よろしくお願いします」
一礼してバイト先で培った営業スマイルをした。あれ反応がない・・・・。ん?あそこにいる女子達は鼻血を出してるけど、大丈夫なのか?
「なんで教室が血で汚れているんだ?」
「っ!姉さん?」
スパァン!出席簿が襲ってきたが左腕でガードした。すごく痛い。なんて威力だ。まずい。腕が痺れてる・・・
「よく防いだな。だが、ここでは織斑先生と呼べ。わかったな?」
「わかりました。織斑先生・・・・しかし出席簿で殴るのはどうかと思うんですが?」
「安心しろ。折れるような叩き方はしていない」
あれだけ強く叩いたのに姉さんはいったいどうやったんだか。この人が姉の織斑千冬(おりむら ちふゆ)である。
「あ、織斑先生。もう会議のほうはいいんですか?」
「会議のほうは終わった。クラスへの挨拶を押し付けてすまなかったな、山田君」
「いえいえ、これぐらいはしないと」
いつになく優しい姉。普段からこうしていればいいのに・・・・
「諸君、私が織斑千冬だ。君達を一年間で使い物にするのが私に仕事だ。私の言うことは絶対に守れ。でなければ命はないと思え、いいな」
なんとういう恐怖政治。いや、恐怖授業か。しかしクラスの女子の反応はというと・・・・
「キャアアアアアアアア!本物の千冬様よ!」
「私ずっとファンでした!」
「私は千冬様に会うために北九州から来ました!」
「お姉様のためなら死ねます!」
黄色い声が教室を埋め尽くす。姉さんはこういうの嫌いだろうな。
「毎年よくこれだけの馬鹿者が集まるものだ。もしかして私のクラスだけか?」
実際、姉さんは本当にうっとうしそうに溜息をついていた。
「キャアアアアアアアアアアア!お姉様、もっと叱って!罵って!」
「でも時には優しくして!」
「そしてつけあがらないように躾けをして~!」
どこの宗教だよ。この学園は大丈夫なんだろうか。いろんな意味で。どうでもいいことを考えていると、姉さんがあきれた顔で聞いてくる。
「で、おまえはなにをしたんだ、織斑?」
「いえ、普通に笑顔で挨拶しただけですけど?」
「・・・・・・・・・」
姉さんはなぜかそこでこめかみ押さえてを考え込んでしまった。挨拶は基本だから何の問題もないはずだが。
「まあいい。SHRが終われば休み時間の後にすぐ授業にはいる。お前達くれぐれも遅れないように」
こうして学校の初日は始まるのであった。
◇
SHRが終わって休み時間なんだが今度は廊下から視線が・・・・・もはや珍獣扱いである。どっかの鮫人間が青い珍獣とか言ってたけどそれ以上だ。た、助けて・・・・
「ちょっといいか?」
誰かと思い振り向けばそこには幼馴染も篠ノ之箒がいた。六年ぶりの再会である。
「いいですが屋上に行きましょう。廊下だと人が多すぎるので」
とういうことで今は屋上。お互いに言葉が出てこない。久しぶりにあったが少し気まずいという雰囲気だった。多分あっちもあっちで気まずいのだろう。よし、こっちから話しかけよう。
「お久しぶりです、篠ノ之さん。六年ぶりですね」
話しかけたのはいいが篠ノ之さんはどこか不機嫌だった。
「一夏、おまえ変わったな」
「六年もあれば人は変わると思いますけど。まあ篠ノ之さんだとすぐにわかりましたけどね」
「そ、そうか。どうしてだ?」
「髪型が昔と変わってませんから。知り合いがいるとわかったっときは少し安心しました」
「そうか。私を見て安心したんだな?」
「はい」
そういうと篠ノ之さんの表情は和らいでいた。よかった、正直悪い意味で張り詰めた空気は苦手だ。でもこれならもう大丈夫かな。
「しかし一夏、どうしてそんな口調になった?」
「いろいろとあったんですよ」
「そうか・・・・・」
また沈黙。そしてどこか表情が暗い。うーん、何か話題はないのか・・・・・・これだ!
「去年の剣道の全国大会での優勝おめでとうございます」
「ど、どうしてそのことを知っているんだ?」
「新聞で見たんですよ。写真に写ってた篠ノ之さん、とっても綺麗でしたよ」
「そうかそうか。わたしは綺麗だったか。フフ」
まあ、綺麗と言われて気を悪くする女性はいないだろう。
キーンコーンカーンコーン
こうして話しているうちに予鈴がなった。
「篠ノ之さん、急ぎましょう。遅れたら織斑先生からなにを言われるかわかりませんから」
「そうだな。で、では行くとしようか」
久しぶりの会話はとても楽しかった。篠ノ之さんの機嫌もよくなっているのでとりあえずよしとしよう。
◇
一時間目。IS学園の授業はかなりハイレベルだった。一応学校に来る前に予習はしておいたがやっぱり難しい。これ以上はついていけるか不安だ。一時間目が終わりそうな頃に山田先生がどこか分からないところがあったら教えてくれるそうなので放課後に予習を兼ねた補習をしてくれるようになった。ありがたい。放課後だからって変なイベントはないよ?二時間目が終わりもう視線は無視することにした。気にしたら負けだ、うん。
「ちょっと、よろしくて?」
「はい、何でしょう?」
そこには金髪でロールがかかった女性がいた。しかし、腰に手を当てた格好は自分から貴族ですといってるようなものだった。ああ、こういう女性もよくお店に来るなあ。いつも対応にこまる。
「聞いてますの?」
「はい。ちゃんと聞いてます。えっと、たしかセシリア・オルコットさんでしたよね」
「そうです。わたくしが入試主席でイギリスの代表候補生のセシリア・オルコットですわ!」
「代表候補生って確か国を代表するエリート中のエリートだったはず・・・・・」
「そう!エリートなのですわ!本来ならわたくしのような選ばれた人間と同じクラスになるだけでも奇跡。そこのところをあなたはちゃんと理解していらっしゃるのかしら」
本当に対応に困る典型的な女性だ。正直これ以上もうしゃべりたくない。
「それにしても世界で唯一ISを使える男と聞いていましたが、たいした人ではありませんね。期待して損しましたわ。それでもわたくしは優秀ですから、ISのことなら何でも教えて差し上げますわよ。何せわたくしは入試で唯一教官を倒したエリートなのですから!」
その『唯一』のところに違和感を覚えた。
「僕も教官を倒しましたよ?」
あとで思い出したことだけどその時の試験官は山田先生だったとか。先生。生徒の見本になるような操縦をして下さい・・・・
「わたくしだけだと聞きましたが?」
「女子だけでという可能性は?」
「あなたも教官を倒したって言うの!?」
そういうと机を叩いて聞いてきた。怖いですって。
「お、落ち着いてくださいオルコットさん!」
「これが落ち着いていられるはずがありません!!」
キーンコーンカーンコーン
「話はまた後でしますわ」
さて、これは面倒なことになった。
第一話 終
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