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【放送芸能】

テレビは変わったか?地デジ移行1年<下> 別次元のゆとり支持広げる

 地上デジタル化の恩恵を一番受けたのは、無料で見られる民放BS局かもしれない。買い替えられた地デジ対応型テレビのほとんどにBSチューナーが内蔵されており、リモコンのBSボタンとチャンネル番号を押すだけで、簡単に見てもらえるようになったからだ。地上波に満足しない視聴者の受け皿としても、存在感を増している。

 大海原をゆっくりと進む白亜の豪華客船。船上では、プールで波乗りに挑戦したり買い物を楽しんだり、乗客が思い思いに時間を過ごしている。なんて優雅な、と思わずため息をつきたくなる−。

 月曜午後九時放送のBS朝日「世界の船旅」の一コマ。地上波でドラマやバラエティーが視聴率競争にしのぎを削るゴールデンタイム(午後7〜10時)とは思えないゆったりした作りで、プロデューサーを務めていた小菅聡之・宣伝担当部長は「余韻に浸れるほど一カット一カットをぜいたくに使い、圧倒される海の大迫力など『五感』に響くような編集も心掛けている」。二〇〇八年四月の放送開始から、六十〜七十代を中心に支持を広げている。

 タレントもテロップもなく、街並みや景色をじっくり映す紀行番組は、BS局で特に人気の売り物だ。開局当初に予算が限られる中で「苦肉の策」として生み出されたシンプルな演出が、地上波の過剰さに嫌気がさしていたシニア層にBSボタンを押させた。視聴率低迷などで地上波から締め出されたスポーツ中継も、延長試合でも最後まで放送するBSでの視聴が根付いてきている。

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 BS視聴可能世帯は、〇二年十月で全世帯の10%を超えていなかった。だが、BS民放局の調査によると一〇年で54%(2・4月の平均)、一一年には72%(10・12月の平均)と着実に増加。視聴可能世帯のうち、主な六局を見ている割合(接触率)は、今年六月の調査でゴールデンタイムで15%以上を占める。電通総研の井上忠靖・メディアイノベーション研究部副主任研究員は「頻繁にBSを見る視聴者も増えている。各局が『BSしかできない番組』を模索し、ここ二、三年で支持されるようになった」と分析する。広告媒体としての魅力も高まり、一一年度決算で地上波系BSの売り上げは五局のうち三局で初めて百億円を突破した。

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 BSの制作費は地上波に及ばないが、番組への評価は高まってきている。

 BS日テレ「ぶらぶら美術・博物館」(火曜午後8時)は、山田五郎らが美術館などを訪れ、学芸員の話を聞きながら鑑賞する番組。第三十八回放送文化基金賞のテレビエンターテインメント番組賞などを受賞した。演出の藤好耕さん(東阪企画)は「BSは時代劇が視聴率を取る(シニア層が見る)土壌というだけ。予算が少ないからこの程度で良い、とは思わない」。技術の進歩によりパソコンで編集作業ができるようになるなど、低予算のハンディは少なくなっているという。

 「視聴者に『番組が地上波にいくと良いですね』と言われると悔しい」とあるBS関係者は話す。「BSは地上波より格下」という認識を覆すには、地上波にない良質な番組を提供することだ。それができて、やっと視聴者が地デジ化のメリットを感じられる。 (石原真樹)

 

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