つなぐ 希望の木
災難を乗り越えてきた木々を、都内に訪ねた。
【放送芸能】テレビは変わったか?地デジ移行1年<中> 進まぬマルチ編成スポーツ中継の延長時や、臨時ニュースを入れる際、一つのチャンネルで二番組を並行して放送できる「マルチ編成」もデジタル放送ならでは。接戦のプロ野球中継を最後まで楽しめるなど魅力的な機能としてアピールされていたが…。本紙番組モニターに聞いたところ、「知らない」あるいは「使ったことがない」と答えた人が八割以上。現状ではまだ視聴者に浸透しているとはいえない。 放送局の姿勢はどうか。NHKはBS1の大リーグ中継などで多用しているものの、民放キー局は積極的ではない。その理由をキー局担当者らは「スポンサーの理解が得られない」と声をそろえる。スポンサーがチャンネルを占有できない上、画質が「ハイビジョン」から「標準」に落ちるなどのデメリットがあるという。さらに、「プロ野球の中継数も減り、必要性が低い」と説明する。 NHK総合や一部キー局で、ドラマをマルチ編成仕様に制作したことがある。ストーリーの一部について二パターンの映像を用意し、視聴者にリモコンで選んでもらった。現状では実験的な要素が強く、今のところ広がる気配はない。 ◇ 一方、「TOKYO MX」は、日常的にマルチ編成を展開している。例えば、マルチ編成時、リモコンの「9」を押すと、「091」=S1(標準画質1の意味)=が映り「5時に夢中!」などの本来の番組を放送。リモコンの「< 」ボタンを押してサブチャンネル「092」=S2=にすると、大井競馬の開催日(年間約100日)の午後三時二十分からは競馬中継を放送している。平日午前八時三十分から株価情報番組「東京マーケットワイド」も、S2で放送している。 茅根由希子編成部長は「制作に手間もかかるが、ニーズにこたえていきたい」と語る。データ放送と連動させ、視聴者個々の求める情報に対応できる態勢も取り、固定視聴者も増えたという。 「092チャンネルって?」「視聴方法が分からない」など視聴者からの問い合わせもあったが、だいぶ定着してきたという。四月からS2では、ノーカット、CMをはさまない映画番組もスタート。茅根さんは「後発局ゆえ、他局とは違った魅力をアピールしたい」と柔軟に構える。 テレ玉では、昨年十二月のサッカーJ1最終節、同時刻に始まった浦和、大宮のホームゲームをマルチ編成で生中継し話題を集めた。「CMもすみ分けができていて、スムーズに対応できた」と同局。甲子園をめざす高校野球県大会でもマルチを活用している。 テレビのデジタル事情に詳しい「月刊ニューメディア」の吉井勇編集長は「複数チャンネルの時、視聴率の測定方法はどうなるのかなど、CM料の判断ができていない」と現状を語り、「両チャンネルに同じスポンサーが付くのかなどの問題が整理できない限り、NHKはともかく、民放では、独立地方局のようにスポンサーの縛りが弱い局のチャレンジになってしまう」と指摘する。 (藤浪繁雄) <マルチ編成> 同じ時間帯に二つの番組を放送すること。例えば、NHKでたびたび放送するように、「ニュース」と「野球中継」をリモコンのチャンネルボタン(< >)を上下することで選択できる。マルチ編成時は、画質がハイビジョンから標準に落ちる。番組表では、標準(スタンダード)の頭文字をとって「S1」「S2」と表記される。 PR情報
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