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【放送芸能】

テレビは変わったか?地デジ移行1年<上> 仕掛けるデータ放送

 地上波テレビがデジタル放送に完全移行してから二十四日で一年(岩手、宮城、福島の東北3県は今年3月末に完全移行)。「地デジ」で多機能、高画質など「一ランク上」のテレビライフの充実がアピールされたが、テレビは変わったのだろうか? 番組制作者や視聴者に聞いた。 

 「地デジ」のデータ放送が視聴者を引きつけるためのツールになっているケースがある。

 二十一日から二日間にわたって放送された、フジテレビの「FNS27時間テレビ」は、データ放送担当者にとって年間最大級の大仕事だった。同局は普段はデータ放送画面で天気予報、ニュース、交通情報などを表示しているが、「27時間テレビ」の放送中は特別な画面になり、チャンネルを替えさせないためのさまざまな仕掛けを用意した。

 その一つが視聴時間に比例して増えるポイント。貯(た)まれば貯まるほど応募できるプレゼントが豪華になる。番組ごとの独自プレゼント、深夜早朝の視聴者が減る時間帯は一気にポイントが増えるチャンスタイムも。

 ポイント加算は番組本番の五日前から始まっていた。「狙いは番組への誘導と継続視聴。無事に二十七時間終えることができ、ツイッターやスマホも含めたデジタルメディアと番組の連動に可能性を感じた。五輪の女子マラソンでもデータ放送を行いたい」と柴田雅弘データ放送担当部長は話す。

 データ放送を「新たなビジネス」と位置付けているのはテレビ東京。同局得意の旅番組には、データ放送を担当する部署が番組も作るケースがある。それが「厳選いい宿」(土曜午後6時30分)。データ放送では、番組に登場した宿以外にも、放送テーマに合った宿が一挙紹介される。

 番組は昨年十月にレギュラー化。当初はホームページで宿を紹介していたが、今年三月末からデータ放送を加えた。

 「視聴者はシニア層が多く、当初は期待したほどホームページのアクセス数が上がらなかった。パソコンはハードルが高くても、テレビのリモコンなら手軽に使ってもらえるのではと考えた」とデジタルビジネス部の吉沢有さん。文字通りデジタルを使った商売をする部署だが、吉沢さんが番組プロデューサーでもある。

 実は番組ホームページは同局が運営する宿泊予約サイトで、宿から掲載料を得ている。一方、データ放送は情報を見るだけで予約はできない。テレビをインターネットに接続すれば、情報を読むだけでなく送ることもできるが、接続している人はまだ少数だ。 

 吉沢さんは「今のデータ放送は過渡期。全ての家庭のテレビがネットにつながれば、リモコンで予約や買い物ができるようになる。テレビを見た人が何らかのアクションを起こす時、番組がその受け皿になれるようにしていきたい」と将来の可能性を語る。

     ◇

 本紙番組モニターにデータ放送の活用例をアンケートで聞いてみたところ、六割以上の人が日常的に利用していた。そのほとんどが天気予報。デジタルテレビは購入時に郵便番号を入力するので、居住地の天気が優先的に表示される。他に占いやプロ野球結果という回答が目立つ。

 ただ、それによってデジタル化の恩恵を感じるかというとそうでもなく、パソコンより手軽だが、必要性を感じていない人も少なくなかった。パソコンやスマホを使っていない高齢者らにこそデータ放送が生活に役立つはずだが、まだ十分浸透していないのが現実のようだ。

 昨年の東日本大震災後の計画停電で、tvk、テレ玉など地元密着の独立地方局が細かい情報をデータ放送で提供し、評価を上げたことがあった。現時点では、データ放送は経費がかさむ一方で、番組との連動も一部にとどまっているが、本当に必要な情報が必要な人に届くよう試みを続ける必要がある。でなければ「何のためのデジタル化か」と言われかねない。 (宮崎美紀子)

 <データ放送> テレビのリモコンの「d」ボタンを押すことで、天気やニュース、番組の出演者やあらすじなどの関連情報を見ることができる機能で、デジタル放送の特徴の一つ。サービス内容は番組によって異なる。

 

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