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仙台・折立の被災丘陵部 コミュニティー、見えぬ再建

被災した住宅の解体が進み、更地が目立つ仙台市青葉区折立5丁目

 東日本大震災で大規模な地滑り被害が発生した仙台市青葉区折立5丁目の住民が、コミュニティーの維持に苦心している。公共事業による丘陵部の宅地復旧は2013年度中に完了する見込みだが、高齢世帯が多く、資金面から自宅再建をためらう被災者が少なくないからだ。

 「戻る人は半分程度でこのままでは虫食い状態。公費で宅地を直してもらってもゴーストタウンになったら無意味だ」
 約60世帯でつくる「折立団地東部町内会被災復興の会」の新村庸治さん(67)は表情を曇らす。
 市が2月に行った意向調査では、回答した55世帯のうち、元の場所での生活を望んだのは28世帯にとどまった。
 14世帯はすでに転居済みか団地を離れる意向を示した。
 団地は1970年代前半に売り出され、被災地区の世帯主はほとんどが70歳前後。丘陵部では、住宅再建への公的支援は、主に被災者生活再建支援金(最大300万円)だけで、多くの住民が新築資金の捻出に悩む。
 新村さんは約40年暮らした自宅を解体し、みなし仮設住宅に住む。一時は現地再建を考えたが、周囲のほとんどが転居を決めてしまった上、費用確保のめども立たず諦めかけている。
 「年齢を重ねれば、大きな病気になりやすく、多額の治療代も必要になる。なけなしの財産を家につぎ込んだら、安心して暮らせない」
 復興の会は、住民が提供した土地に市が一戸建て復興住宅を建設したり、被害が少なかった場所にまとまって住むアイデアを検討したりしているが、具体化していない。
 市は原状回復の方針を崩していない。担当者は「財産の大半を失った津波被災地との支援のバランスもあり、追加支援は難しい」と話す。
 自宅を直す高橋俊一さん(69)は「多くの人が折立に戻り、新たな住民も迎えられる団地にしたい。行政も知恵を貸してほしい」と訴える。

 メモ 仙台市で二次被害の恐れがある丘陵部の被災宅地は5080区画。約7割が公共事業の対象で、宅地の原状回復と耐震性確保のための復旧工事が行われる。各戸の擁壁部分の復旧は1割が自己負担。折立5丁目では現時点で58区画が対象で、10月に着工予定。公共事業が適用されない地区では、所有者が行う工事に市が独自に助成金を出して支援する。


2012年07月20日金曜日


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