近聞遠見:「菅首相でよかった」の声=岩見隆夫
毎日新聞 2012年07月28日 東京朝刊
次の大災害、大事故がいつ襲いかかってくるかわからない。その時、トップリーダーはどう対応すればいいのか。
民間、東電、国会、政府の順で4事故調の報告書がすべて公表された。分量が350ページから640ページにのぼるので、すぐには全部を読みこなせない。
首相官邸による福島第1原発事故現場介入問題に絞って報告書を見ると、菅直人首相(当時)の評価はすこぶる低い。
<現場を混乱させ、重要判断の機会を失い>(政府)<時間を無駄にし、指揮命令の混乱を拡大させた>(国会)<無用な混乱やストレスにより状況を悪化させるリスクを高めた>(民間)<緊急時の対応で無用の混乱を助長させた>(東電)と、4報告書とも混乱の2文字が入ってくる。
菅は混乱の元凶とされ、そこから人災、さらには<菅災>とまで言われることになった。菅は、
「自分は理系学部出身で、他の閣僚に比べて原子力に<土地勘>がある」
と自負しながらの介入だったというが、報告書を見るかぎり完全に裏目に出た。
しかし、これには逆の評価がある。まず、枝野幸男官房長官(当時)が、
「私は本当に3月11日の総理大臣が菅さんであってよかったと思っている。あれぐらいわがままで勝手で強引でという人間でなかったら、たぶん政府の機能が止まっていたのではないか」
と述べたことは当コラム(6月2日付)で紹介したが、ほかにもいる。その一人、大塚耕平副厚生労働相(当時)は、