「いじめと自殺の因果関係を認める可能性が高い」。大津市立中学2年の男子生徒(当時13)の自殺をめぐる訴訟で、遺族と争う姿勢を示してきた大津市が17日、一転、和解にむけた協議を申し入れた。男子生徒の父親はコメントで、これまでの市側の対応に不信感を表明。「一日も早く事実と原因が解明され、一人でも多くのいじめに悩む生徒を救えることを望む」と訴えた。
「息子が自殺しなければならないほどのいじめとはどういうものだったのか。悲劇が繰り返されない安全な学校を実現するためにはどうしたらよいか」。父親は代理人の石川賢治弁護士を通じて公表したA4判用紙2枚分のコメントで、裁判に込めた思いをつづった。そのうえで全国の教師に向け、「今まで以上に子どもの表情や行動に注視し、いじめを見抜いてあげて。助けを求めている生徒はたくさんいるはず」と呼びかけた。
大津市が和解を申し入れたのは、市教委や学校のずさんな対応が次々と明らかになり、主張の根拠が揺らいだためだ。市は今月中にも外部の有識者らによる第三者委員会を設置し、11月中をめどに結論を得たい考えだ。
ただ、石川弁護士はこの日の会見で、市側の方針について「(第三者委や捜査の)結果次第では認めないというニュアンスも感じる。どこまで額面通りに受け取っていいのか。正直なところ警戒心も抱いている」と話した。
父親はコメントで「(市側の)これまでの調査が不適切だった。信用できない」とし、第三者委のメンバーの人選を遺族側に任せるよう要望。調査のあり方についても、いじめの解明だけでなく自殺の原因究明も行う▽聞き取り調査に市職員が関与しない▽委員会は公開する――ことなどを求めた。
訴訟は今年2月、男子生徒の両親が大津地裁に起こした。同級生3人から受け続けた「苛烈(かれつ)かつ執拗(しつよう)ないじめ」を苦にした自殺と訴え、学校の対応について「いじめが目の届く場所で繰り返されていることを現認しながら、校長や教頭はおろか、教員同士で情報を共有せず、実態把握に努めることすらしなかった」と批判した。父親はこの日のコメントでも「もしかしたら息子は学校に見殺しにされたのではないか、との気がしてならない」と述べた。
石川弁護士らが所属する大津市の法律事務所には全国から激励のメールが多数寄せられているという。個別に対応することが難しくなっているといい、訴訟の経緯などを説明する専用ホームページ「大津中2いじめ自殺裁判支援」(http://www.yoshihara-lo.jp/otsu-ijime/)を立ち上げた。意見はホームページで受け付けている。