周辺国は、シリア情勢にどのように介入しているのか。
実態を探るため、ヨルダンとシリアの国境地帯に向かいました。
ヨルダン側の国境の町ラムサ。街中には、シリアからの難民を支援するとする複数の慈善団体が、拠点を設けていました。
澤畑記者
「ここではシリア難民に対する金銭的な支援が行われています。」
2週間に1度、1500世帯の難民に渡される金券は、日本円で1万5千円ほど。
この地域では生活を支えるのに困らない金額です。
こうした慈善団体の活動資金は、イスラム教スンニ派のサウジアラビアなど湾岸アラブ諸国から寄せられています。
その理由はイスラム教スンニ派を中心とする反政府勢力が、対立するシーア派の一派に属するアサド大統領によって激しく弾圧されているからです。
慈善団体代表
「政府軍と反政府勢力の双方で、かけがえのない命が失われていますが、自由と正義の実現のためには、反政府派にこそ支援の手を差し伸べるべきです。」
難民の中には、反政府勢力に加わった人も少なくありません。
この団体では難民支援という名目で事実上、反政府勢力を支えているのです。
反政府勢力の戦闘員
「サウジアラビアや湾岸諸国の支援には感謝していますよ。」
こうした公然とした活動に加えて、湾岸諸国は、シリアの反政府勢力に対する武器支援を強化しているとされています。
慈善団体の代表も、アサド政権に対する武装闘争を推し進めるべきだと言ってはばかりません。
慈善団体代表
「政治的・外交的な解決の望みがないのなら、反政府勢力に武器支援するまでです。」
資金や武器とならんで、反体制派の大きな武器となっているのがメディアです。
その急先鋒が、カタールの王族がスポンサーとなっている衛星テレビ局アルジャジーラです。
「数千人が反政府デモに参加しました!」
アサド政権は、アルジャジーラが実際には小規模なデモも、誇張して伝えていると、非難しています。
アルジャジーラ内部からも報道が偏りすぎていると、抗議の辞職をする記者が現れました。
元ベイルート支局長のビンジッドさん。
去年4月、アルジャジーラを去りました。
ビンジッドさんもアサド政権は独裁的だと批判していますが、中立性を失った報道は、市民の犠牲を増やすだけだと指摘しています。
元アルジャジーラ記者
「アラブメディアは、出資者である湾岸諸国の方針に追随し、(シリアの)宗派間対立をあおり、戦闘激化の片棒を担いでしまっている。」
一方、湾岸アラブ諸国に対抗して、アサド政権の後ろ盾となっているのが、シーア派の大国イランです。
テヘランで開かれたシリア物産展です。
経済制裁で苦しむアサド政権を支援しようと開かれました。
出展したシリア人
「(シリアもイランも)経済制裁下にあるので、ともに協力できるはずです。」
さらにイランはアサド政権に、ロケット砲などの武器支援を強化していると見られています。
反政府勢力は今年1月、『アサド政権に加担していたイラン人の狙撃手』とする映像を公開。
イラン側は、インフラ工事のために派遣した技術者だと否定していますが、アサド政権を支援する姿勢を崩していません。
周辺国の代理戦争の様相を呈し始めてきたシリア情勢。
外部からの介入で、戦闘は激しさを増しています。