野田首相の前後援会長が社会保障費21億円を不正請求
野田佳彦首相の後援会長だった寒竹(かんたけ)郁夫氏が実質的なオーナーである医療グループ「DSヘルスケアグループ」(以下、DSグループ)が社会保障費を不正に請求していることが、週刊文春の取材でわかった。
寒竹氏は訪問歯科診療をサポートする「デンタルサポート株式会社」(DS社)の社長であり、DS社は医療法人郁栄会など12の医療法人とともにDSグループを構成している。
元DS社幹部など複数の証言によると、3年前、DSグループ内で不正請求額の試算を行ったところ、年間21億円にのぼったという。証言によれば、訪問歯科診療の保険点数は診療時間が20分を超えるか否かで大きな差が出るが、同グループ内では実際には20分を超えていなくても、超えたことにして高い点数を不正請求するケースが横行しているという。
2008年には大阪府警が、診療時間を偽り、約20万円を不正に請求した詐欺容疑でクリニックの実質経営者と勤務医を逮捕している。今回のDS社の場合も今後刑事事件に発展する可能性がある。
DS社の社長である寒竹氏は、野田首相と船橋高校の同級生で、1999年から2009年まで「野田よしひこ後援会」の会長を務めており、政治資金収支報告書によれば、これまで905万円を野田氏に献金している。また、野田氏は首相就任後、寒竹氏を天皇、皇后両陛下主催の秋の園遊会に首相枠で推薦し、寒竹氏は出席している。
また、野田氏が衆院選に落選した1996年以降、野田事務所の複数の秘書が当時、寒竹氏が理事長を務めていた郁栄会に籍を置いていたことも明らかになった。その中には、現在、首相秘書官を務める河井淳一氏、現政策秘書の竹口由利人氏も含まれている。
寒竹氏は週刊文春の取材に次のように回答した。
「ドクターが患者に麻酔を打って効くまでの10分間をずっとその人の前で待っていることはない。その間に他の患者さんを診れば、1時間に5、6人は診られる。素人はこのカラクリがわからないから、20分だと大騒ぎする。法律が間違っている。不正はない」
また野田氏が浪人中、秘書たちを、郁栄会で雇っていた件については、
「接点はありました。その話をすると、総理に迷惑がかかるので、ノーコメントですが、あったとしても月々5万、10万の世界です。河井や、あと何人かいました。竹口とか」
訪問歯科診療を所管する厚労省は次のように回答した。
「同時に患者さんを診る、という状況は想定していません。別々です。訪問診療の場合、患者のリスクは、外来の患者に比べて高く、手間隙もかかるため、診療点数を高くしている。あくまでもつきっきりできちんと診療をやっていただく。その結果として20分あったのか、なかったのか、ということです」(保険局医療課)
野田事務所は河井秘書官が対応したが、「昔の話が多く、締切までに回答するのは難しい」とのことだった。
前後援会長に社会保障に関する疑惑が浮上したことで、税と社会保障の一体改革に政治生命を懸ける野田首相が、参議院での関連法案の審議で厳しい追及を受けるのは必至だ。