原発事故戦犯を原子力規制委員会委員長に
野田政権がおそるべき人事を通そうとしている。26日、衆参両院に対して、原子力行政を一括統制する原子力規制委員会の初代委員長に、田中俊一元原子力委員会委員長代理を提示した。田中氏は原発推進派で福島第1原発事故の戦犯ともいうべき人物。
暴走族リーダーが取締り本部長に
これまで原子力行政は原子力安全委員会(内閣府)、原子力安全・保安院(経済産業省)、放射線モニタリング(文部科学省)に権限が分散されてきた。
政府は今年9月に原子力規制委員会を発足。原子力行政を一括で担う原子力規制庁の上部組織とすることを決めている。
同組織は独立委員会のため、政権が変わっても今後5年間、委員の顔ぶれなどは変わらず、その権限は維持される。原発再稼働についても、最大の権限を持つ組織となる。
そんな組織のトップに野田政権が推すのが、田中俊一元原子力委員会委員長代理だ。田中氏は原子炉工学が専門。東電の御用学者としても知られており、「20ミリシーベルト以下の地域は除染しなくていい」と発言したこともある。
同人事について、青山学院大学の小島敏郎教授は「暴走族のリーダーが暴走族取締り本部の本部長になるのと同じ」と批判した。
原子力村御用新聞、読売の誤算
ただ、この人事は一時、読売新聞などによって見送られる可能性も発生した。衆参両院に政府が提示する前に読売新聞・日経新聞がスクープ。20日の朝刊に掲載されたことに、自民党などが反発、政府から提示を受ける合同代表者会議の開催を見送ったためだ。
2007年に当時の民主党が提案して定められた衆参の議運委員長合意によると、事前にリークされた人事については、「原則、当該者の提示は受け付けない」とされている。
同ルールに従えば、原子力利権をむさぼる原子力村にとって絶好の人事であるはずの「田中委員長」が白紙撤回されてしまう。
読売新聞はもともと原発賛成を社是とする原子力村の「御用新聞」だ。自らの失敗に肝を冷やした読売新聞は「社説」に奇怪ないいわけを掲載した。
報道の自由をたてに、「リークにより人事を撤回するルール自体がおかしい」と噛みついたのだ。
読売新聞にとって幸いだったのは、当該人事については情報漏れがあっても例外とするよう事前合意ができていたことだろう。26日、野田政権はあらためて田中俊一氏を委員長とする人事案を合同代表者会議に提示した。

◆原子力委員会
http://www.aec.go.jp/jicst/NC/about/iin/tanaka.htm◆原子力規制委 与野党で同意人事を弄ぶな
(7月21日付・読売社説)
http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/