(2012年7月23日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
ユーロ圏の銀行が金融危機以降の5年間で米国への投資姿勢を急速に消極化させている。フィナンシャル・タイムズ紙が米連邦準備理事会(FRB)のデータを分析したところ、ユーロ圏銀行が保有する米国資産はピーク時の2007年比で3分の2弱に減少したことがわかった。
■1兆5100ドルから9730億ドルへ減少
銀行破綻や資産償却、融資債権や事業の売却により、ユーロ圏銀行の米国資産は過去最高となった2007年9月の1兆5100億ドルから5400億ドル減少した。
自己資本比率を高めるよう規制当局から圧力もかかっており、ドル建てでの資金調達が難しい中、米国事業の縮小を余儀なくされる銀行が増えた。FRBによると、ユーロ圏の銀行が保有する米国資産は今年3月時点で9730億ドルと、05年以降最低となった。
米法律事務所、アレン・アンド・オブリーのパートナーで米金融規制慣行に詳しいダグラス・ランディ氏は「この傾向は5年前に比べ非常に顕著になっている。(欧州の)銀行は財務内容が堅実ではるかにシンプルだった10~20年前に回帰しているようだ」と指摘する。
■米国やカナダ、中国の金融機関などへ
ユーロ圏銀行の債務圧縮(デレバレッジ)は米国の銀行業界に大きな影響を及ぼしている。弁護士や銀行関係者、アナリストによると、ユーロ圏の混乱で売却された資産の多くは米国やカナダの銀行やプライベートエクイティ、ヘッジファンドなどに向かい、中国の金融機関も米国事業を強化しているという。
例えば、ウェルズ・ファーゴとJPモルガン・チェースの大手米銀2行は昨年、国有化されたアイルランドのアングロ・アイリッシュ銀行が売却した商業不動産債権95億ドルの一部を購入。米地銀大手キャピタル・ワン・ファイナンシャルはオランダのING銀行の米国のオンラインバンキング事業を買収した。
BNPパリバやドイツ銀行をはじめとするフランスとドイツの銀行は依然大規模な事業を米国で展開しているが、BNPやクレディ・アグリコル、ソシエテ・ジェネラルなどのフランス勢の一部は資産の縮小計画をすでに発表している。
ドイツの銀行が保有する米国資産は過去最高となった07年の4270億ドルから、3月時点では2670億ドルに減少。FRBの直近データによると、フランスの銀行が保有する米国資産は07年12月の4200億ドルから3730億ドルに減った。ユーロ圏の比較的小規模な国の銀行では投資引き揚げがさらに顕著で、アイルランドの銀行が保有する米国資産は08年9月の1300億ドルから、3月時点では36億ドルに急減している。
By Tracy Alloway and Tom Braithwaite
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