安保激変

強まるオスプレイ配備への反発 現実離れした日本の要求

辰巳由紀 (たつみ・ゆき)  スティムソン・センター主任研究員

キヤノングローバル戦略研究所主任研究員。東京生まれ。国際基督教大学卒業後、ジョンズ・ホプキンス高等国際問題研究大学院で修士号取得。在米日本大使館専門調査員、戦略国際問題研究所(CSIS)研究員などを経て2008年より現職。2012年よりキヤノングローバル戦略研究所主任研究員を兼任。専門は日本の防衛政策、日本の国内政治、日米安全保障関係、米国の対アジア安全保障政策。

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 オスプレイは1980年のイラン大使館人質事件の教訓として「敏捷に垂直に離着陸できる新しいタイプの航空機が必要」という米国防総省のニーズに応える形で開発された新型機だ。分かり易く言えば「ヘリコプターのようにも、通常の飛行機のようにも飛行できる航空機」である。

 開発が始まったのは1981年だが、国防総省が正式に本格的量産を決定したのは2005年(初期量産は1994年に認められた)、実際に部隊配備され実戦運用が始まったのは2007年、と開発開始から25年近くが経過している。現時点で、国防総省は合計485機のオスプレイを調達する予定で、うち360機を海兵隊が、50機を空軍が、48機を海軍が購入予定だ。ただし、海軍への導入の具体的予定はなく、現在は海兵隊と空軍のみが使用している。

型により事故率も異なる

 オスプレイは確かに、開発中に事故が多かった印象がある。開発開始から本格的量産が決定されるまでに要した年数は25年あまり。その間、1991年、1993年、2000年にそれぞれ、大きな墜落事故が発生し、30名あまりが命を落としている。これらの事故はいずれも機体の構造上の欠陥が墜落の一因である可能性が疑われたため、原因が究明され、対応策が講じられるまでの間、それぞれの事故後3カ月、1年、1年半の期間、全機飛行禁止措置が取られた。「未亡人製造機」と揶揄されたのも、この頃のことだ。

 一方、2007年に実戦配備された後に発生した墜落事故については、いずれも、機体の構造上の欠陥が原因ではないとある程度早い段階で判明したため、飛行禁止措置は取られていない。ちなみに、今年の4月と6月の墜落事故の後も、7月11日の緊急着陸後も、飛行禁止措置は取られていない。

 オスプレイの事故に関する報道を見る際に注意しなければならない重要なポイントがある。一口に「オスプレイ」といっても、実際には空軍型(CV, 特殊作戦用)、海軍型(HV, 捜索・救難用)、海兵隊型(MV, 輸送用)の3種類(うち現在実戦配備されているのは空軍型のCVと海兵隊型のMVのみ)あるのだが、日本の報道ではこの3種があたかも同一のものとして扱われているということだ。機体の90%は共通なのだが、残り10%の仕様はどのような作戦目的に使用するかで異なっている。

 しかも、型により事故率が著しく異なるのだ。たとえば、空軍型(CV)と海兵隊型(MV)を比べると、CVの事故率は飛行時間10万時間に対して13.47件なのに対して、MVの事故率は同じ期間で事故率1.93件になっており、その差は歴然としている。ちなみに、今回導入が予定されているのは、海兵隊型(MV)、つまり、事故率が低い方だ。

米国内での受け止められ方

 今年に入ってからのオスプレイの事故は、本国の米国ではどう受け止められているのだろう。

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辰巳由紀(たつみ・ゆき)

スティムソン・センター主任研究員

キヤノングローバル戦略研究所主任研究員。東京生まれ。国際基督教大学卒業後、ジョンズ・ホプキンス高等国際問題研究大学院で修士号取得。在米日本大使館専門調査員、戦略国際問題研究所(CSIS)研究員などを経て2008年より現職。2012年よりキヤノングローバル戦略研究所主任研究員を兼任。専門は日本の防衛政策、日本の国内政治、日米安全保障関係、米国の対アジア安全保障政策。

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