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日の丸有機ELの憂鬱、韓国勢に太刀打ちできるのか(3) - 12/07/25 | 12:13




 実際、海外に商機を見いだす動きが出始めている。有機EL材料で多数の特許を持つ出光興産は、年内に韓国で新工場を稼働する。戦略提携しているLGディスプレーとの取引が中心になるようだ。

 今年2月には、パネルメーカーの台湾AUOとも戦略提携で合意している。材料提供のみならず技術開発にまで踏み込み、「自社保有の特許を生かすことができる」(出光興産の電子材料部の長瀬隆光・技術企画担当部長)と期待する。

 有機EL開発の第一人者である山形大学の城戸淳二教授は、「最先端の技術は日本で育てる必要がある」と警鐘を鳴らす。そもそも有機ELを最初に事業化したのは日本。しかし04年にNECがサムスンとの有機EL合弁会社を解消し、特許ごとサムスンに売却したことで流れが変わった。その後も韓国に渡った多くの日本人技術者の活躍もあって、08年にサムスンは中小型で量産に成功し、今に至っている。

またも国策会社構想が浮上

 こうした状況への危機感からか、国策パネル会社設立の動きも出ている。官民ファンドの産業革新機構が出資し、ソニーやパナソニックの事業を吸収、大型パネル専業会社を設立する青写真だ。AUOを巻き込んで生産する構想も浮上している。

 ソニーはAUOと有機ELで提携し、中小型パネル生産を進めている。国費を投入し、韓国勢に日台連合で対抗する狙いだが、はたしてそれは賢明なのか。電機業界での国策会社の難しさは、破綻したエルピーダメモリが証明している。

 テレビ事業でもう一勝負する覚悟はあるのか。生半可では土俵に上がることさえかなわない。

ソニーの業績予想、会社概要はこちら

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(前田佳子 =週刊東洋経済2012年7月21日号)
記事は週刊東洋経済執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。
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